このページの要点
卒業留学は長い留学ではなく別の制度です。籍の置き方が、帰国後の資格を決めます。
- 大学入学資格の根拠が変わる:学校教育法施行規則第150条第1号は「外国において学校教育における十二年の課程を修了した者」を、大学入学に関し高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者としています。日本の高校を卒業しなくても、日本の大学の入学資格が認められる道があります(該当するかは次の条件次第です)。
- 「12年の課程」には条件がある:独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が運営するNIC-Japanは、その教育課程が学校の所在する国の法令にもとづいている必要があると説明しています。A国にある学校がB国のカリキュラムを使っていても、A国の法令で正規と認められなければ該当しません。
- 在学のしかたが入試の資格を左右する:東京大学は外国学校卒業学生特別選考について「日本の学校に籍を置いたまま一時的に海外の高校に留学(交換留学を含む)し、日本の高校を卒業した場合は、外国での学校の在学期間として認められません」と公表しています(同大学の選考についての説明です)。
「卒業留学」という言葉は、1年留学や交換留学と並べて紹介されることが多いのですが、制度としてはまったく別のものです。 交換留学が「日本の高校に籍を置いたまま海外で学ぶ」形であるのに対し、卒業留学は「現地の高校を正規生として卒業する」形です。この違いは、日本の高校の籍をどうするかにも、帰国後にどの資格で大学を受験するかにも及びます。学校教育法施行規則第150条第1号は「外国において学校教育における十二年の課程を修了した者」を大学入学資格として挙げていますが、その課程には所在国の法令にもとづく正規の学校教育であることという条件が付きます。本記事は条文と公的機関の説明から、この形の輪郭を整理します。何年生で出るかの設計は高校留学は何年生がベストかをご覧ください。
本記事の条文は学校教育法施行規則(e-Gov法令検索の法令原文)、大学入学資格の考え方はNIC-Japan 高等教育資格承認情報センター(運営=独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構)の説明、在学期間の数え方は東京大学が公表しているQ&Aを、当サイトが2026年8月21日に取得して整理したものです。在学期間の数え方や出願資格は大学ごとに定められます。東京大学の記述を他大学に当てはめることはできません。 また、各国の高校の卒業要件は国・州によって異なります。志望校の募集要項と、進学先の国の学制を必ずご確認ください。
結論:交換留学・1年留学・卒業留学は、別々の制度
POINT
期間の長短で並べると誤解します。決定的に違うのは「どこに籍を置くか」で、そこから単位・卒業資格・帰国後のルートがすべて枝分かれします。
留学の形を「3か月・1年・卒業まで」と期間で並べた表をよく見かけますが、卒業留学だけは軸が違います。 交換留学やターム留学は日本の高校に籍を置いたまま出るのに対し、卒業留学は現地校の正規生になる形です。籍の置き場所が変わると、次のすべてが変わります。
在籍する留学と、卒業する留学の違い(当サイトによる整理)
| 交換留学・ターム留学など | 卒業留学 | |
|---|---|---|
| 日本の高校の籍 | 残る(校長が教育上有益と認めるときに許可される留学。施行規則第93条第1項) | 選び方で変わる。休学=籍が残る/退学=籍が切れる/通信制課程へ転学=籍が残る(休学・退学は第94条により校長の許可が必要、転学は第92条) |
| 日本の高校の単位 | 36単位を超えない範囲で認定されうる(第93条第2項) | 原則として認定の枠組みに乗らない。ただし通信制課程に籍を置いて校長の留学の許可を受ける形なら、第93条第2項を使う余地がある |
| 得られる卒業資格 | 日本の高校の卒業資格 | 現地校の卒業資格(通信制課程に籍を残す場合は、日本の高校の卒業資格も並行して目指せる余地がある) |
| 日本の大学入学資格の根拠 | 高等学校の卒業 | 施行規則第150条第1号「外国において学校教育における十二年の課程を修了した者」など(通信制課程で日本の高校を卒業できれば、高等学校の卒業も根拠になる) |
| 在学期間の数え方 | 東京大学は「日本の学校に籍を置いたまま一時的に海外の高校に留学(交換留学を含む)し、日本の高校を卒業した場合は、外国での学校の在学期間として認められません」としている | 東京大学は「正規生として…最終学年を含め継続して2年以上在学し卒業や修了をすれば」在学期間に含まれるとしている(同大学の当該選考についての説明。要件は大学ごとに異なります) |
| 費用の構造 | プログラム費用が中心。団体・制度の枠組みがある | 授業料・滞在費を年単位で自己負担するのが基本 |
この表のいちばん下の行は見落とされがちです。交換留学には制度としての枠組みがあり、費用の構造も定型的ですが、卒業留学は現地校への私費入学に近い形になります。費用の全体像は高校留学の費用、国ごとの相場は高校留学が安い国で整理しています。
日本の高校の籍をどうするか——3つの選択肢
POINT
卒業留学は「日本の高校の卒業を必須としない」形なので、籍の扱いを先に決める必要があります。決めずに出ると、帰国後の受け皿がなくなります。
現地の高校を卒業するつもりで出る場合、日本の高校の籍について取りうる選択肢は3つです。どれを選ぶかで、うまくいかなかったときの戻り先が変わります。
卒業留学のときの籍の扱い(根拠条文は各行に記載/戻り先は当サイトによる整理)
| 選択肢 | 根拠 | うまくいかなかったときの戻り先 |
|---|---|---|
| 休学する | 第94条(休学は校長の許可が必要) | 在籍が続いているため、復学(扱いは学校の規程による)または転学という道が残る(転学は転学先の校長が教育上支障がないと認めた場合に許可されます。第92条第1項) |
| 退学する | 第94条(退学も校長の許可が必要) | 編入学になる(第91条=相当年齢に達し、当該学年に在学する者と同等以上の学力があると認められた者) |
| 通信制課程へ転学してから出る | 第92条第2項(全日制・定時制・通信制相互の転学・転籍は修得した単位に応じて相当学年に転入できる) | 日本の高校の卒業資格も並行して目指せる可能性がある。ただし面接指導等の免除は最大10分の8で、試験は免除の対象外。74単位・在籍3年以上・特別活動30単位時間以上も残る |
3つ目は見落とされやすい選択肢ですが、条件を正確に見てください。 通信制課程に籍を移してから卒業留学に出れば、日本の高校の卒業資格を並行して確保できる可能性があります。ただし「登校しなくてよい」という意味ではありません。 メディア学習によって免除できるのは面接指導の時間数または特別活動の時間数で、上限があります(特に必要がある場合でも合わせて10分の8まで。学習指導要領第1章総則第2款5(5))。試験は免除の対象ではありません。 さらに卒業には74単位(施行規則第96条第1項)・在籍3年以上(学校教育法第56条)・特別活動30単位時間以上が残ります。複数年、現地校の正規生として海外にいる設計とは両立しないことがあります。 海外滞在中にこの3つ(面接指導・試験・特別活動)をどう消化するかを、転学先の通信教育実施計画で先に確認してください。 器としての通信制の選び方は通信制高校からの留学、退学を選ぶ場合の手続きと書類は高校中退と留学で扱っています。
避けたい
「現地校を卒業するのだから、日本の高校は退学でいい」とすぐ決める
こうすればOK
まず休学が使えるか確認する。 退学すると戻るときの入口が転学から編入学に変わり(第91条)、受け入れ側の判断になる
避けたい
現地校の入学許可が出てから、日本の高校に相談する
こうすればOK
先に籍の相談をする。 休学の可否・期間の上限は学校の規程によるため、留学の期間設計そのものが変わりうる
避けたい
「卒業すれば日本の大学も受けられる」とだけ理解して出発する
こうすればOK
その学校の課程が「所在国の法令にもとづく正規の学校教育で12年以上」かを先に確認する。 ここが外れると資格の根拠が別のものになる
帰国後の大学入学資格——「十二年の課程を修了した者」
POINT
日本の高校を卒業していなくても、日本の大学を受験できます。根拠は学校教育法施行規則第150条です。ただし第1号に当てはまるかどうかは、学校の性格によって変わります。
学校教育法施行規則第150条は、学校教育法第90条第1項により大学入学に関し高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者を列挙しています。卒業留学に関係するのは第1号です。原文は「外国において学校教育における十二年の課程を修了した者又はこれに準ずる者で文部科学大臣の指定したもの」。
つまり、日本の高校を卒業していなくても、外国で12年の課程を修了していれば、日本の大学の入学資格があります。 これが卒業留学の制度的な出口です。同条にはほかにも受け皿があり、第2号は「文部科学大臣が高等学校の課程と同等の課程を有するものとして認定した在外教育施設の当該課程を修了した者」、第5号は高等学校卒業程度認定試験の合格者、第7号は「大学において、個別の入学資格審査により、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者で、十八歳に達したもの」を挙げています。
学校教育法施行規則第150条のうち、卒業留学に関係する号
| 号 | 原文の要点 | 卒業留学との関係 |
|---|---|---|
| 第1号 | 外国において学校教育における十二年の課程を修了した者又はこれに準ずる者で文部科学大臣の指定したもの | 本筋。 現地の高校を卒業した場合に当たりうる |
| 第2号 | 文部科学大臣が高等学校の課程と同等の課程を有するものとして認定した在外教育施設の当該課程を修了した者 | 日本人学校の高等部などが該当しうる |
| 第5号 | 高等学校卒業程度認定試験に合格した者 | 現地校の卒業が資格として通らない場合の代替ルート |
| 第4号 | 文部科学大臣の指定した者(昭和23年文部省告示第47号) | 国際バカロレア・アビトゥア・バカロレア・GCE Aレベル等の資格(第20〜24号)や、国際的な認証団体の認定校での12年の課程の修了(第25号)はここが根拠。資格ルート(第20〜24号)には12年という要件は付いていません |
| 第7号 | 大学において、個別の入学資格審査により…と認めた者で、十八歳に達したもの | 上記のいずれにも当たらない場合の個別の受け皿 |
落とし穴:「12年の課程」は所在国の法令にもとづく必要がある
POINT
ここが本記事の核心です。学校の名前やカリキュラムではなく、その学校が所在する国の法令で正規の学校教育と認められているかどうかで判断されます。
NIC-Japanは、この要件を「外国における正規の学校教育における12年目の課程を修了」という意味だと説明しています。一見すると年数を数えるだけに見えます。しかし条件があります。 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が運営するNIC-Japan 高等教育資格承認情報センターは、外国のインターナショナルスクールの卒業について、その教育課程は「当該学校等が所在する国の法令に基づいている必要があります」と説明しています。
この説明が意味するところは重要です。A国にある学校が、B国のカリキュラムに準拠して教育を行っていても、A国の法令で正規の学校教育として認められていなければ、要件に該当しません。 学校の知名度でも、使っている教科書でも、授業の言語でもなく、所在国の法令上の位置づけが判断の基準になります。
インターナショナルスクールの場合
NIC-Japanは、国際的な認証団体から認定を受けたインターナショナルスクールで12年の課程を修了した場合にも入学資格が認められると説明しており、認証団体としてWASC、ACSI、CIS、NEASC、Cognia、COBISを挙げています。日本の法令の側では、これは第150条第4号(文部科学大臣の指定した者。昭和23年文部省告示第47号 第25号)が根拠です。NIC-Japanの説明では、本流は「所在国の正規の学校教育での12年(12年目)の課程の修了」で、これに該当しなかった場合の受け皿が5つ挙げられています。認証団体の認定校のルートは、その受け皿の1つです。 インターナショナルスクールで実際に論点になりやすいのはこの2つだと当サイトは整理しています(この整理は当サイトによるものです)。
実務上は、出願を検討する段階で学校側に「どの認証を受けているか」を確認するのが確実です。認証は更新制であることが一般的なので、現在有効かどうかまで確認してください。 国内のインターナショナルスクールと日本の高校卒業資格の関係については日本のボーディングスクールで、一条校かどうかによる違いを整理しています。
「12年の課程を修了」に当たらなかった場合の受け皿
「12年の課程を修了した」に当たらなかった場合でも、道は閉じていません。NIC-Japanは5つの受け皿を挙げています。 ①文部科学大臣が認定した在外教育施設の修了②外国における12年の課程修了相当の学力認定試験の合格(18歳以上)③国際バカロレア資格、アビトゥア資格、バカロレア資格、GCE Aレベル資格、国際Aレベル資格、欧州バカロレア資格の取得④国際的な認証団体の認定を受けたインターナショナルスクールでの12年の課程の修了⑤個別入学資格審査(18歳以上)。この5つは「12年未満のとき」だけでなく、本記事が警告している「所在国の法令上の正規校に当たらなかったとき」にも効きます。
確認ポイント:当サイトは「◯◯国の高校を卒業すれば12年の課程に当たる」という形の断定をしません。学制は国だけでなく州・地域によっても異なり、全件を検証できないためです。 志望する学校が決まったら、①その学校が所在国の法令上どう位置づけられているか②課程が何年か③どの認証団体の認定を受けているかの3点を学校に確認してください。そのうえで、NIC-Japanは「当該ISの教育が所在国における正規の学校教育として認められるものかを在日本の所在国の大使館等にご確認ください」と案内しています。 確認の順序は①学校 →②在日本の所在国の大使館等 →③志望する日本の大学の入試担当窓口です。大学入学資格の最終的な判断は、受験する大学が行います。
在学のしかたが、出願資格の判断に影響する
POINT
同じ「海外の高校にいた」でも、正規生だったのか、日本の高校に籍を置いたままだったのかで、在学期間として数えられるかが変わることがあります。
帰国後に「外国の学校を卒業した学生」向けの選考へ出願する場合、海外にいた期間がそのまま在学期間として数えられるとは限りません。 東京大学は外国学校卒業学生特別選考について、次のように公表しています。「日本の学校に籍を置いたまま一時的に海外の高校に留学(交換留学を含む)し、日本の高校を卒業した場合は、外国での学校の在学期間として認められません。」そして「海外の高校に正規生として留学しながら、その高校に最終学年を含め継続して2年以上在学し卒業や修了をすれば、この期間は海外の高校の在学期間に含まれます。」
この記述は東京大学の当該選考についての説明であり、他の大学に当てはめることはできません。 在学期間の数え方や出願資格は大学ごとに定められます。ただし、東京大学が「正規生であること」「最終学年を含むこと」「継続していること」の3点を判断の観点にしていることは、留学の期間設計を考えるうえで参考になります(他大学が同じ観点を使うとは限りません)。とくに「最終学年を含むか」は、いつ出発するかを決める段階で効いてきます。
帰国生入試・帰国子女枠の要件そのものは、大学ごとの差が大きい領域です。 当サイトでは帰国子女枠と高校留学で要件の考え方を、1年留学は帰国子女枠の対象になるかで在外期間の数え方の確認手順をまとめています。本記事はあくまで「卒業する形」そのものを扱うものなので、出願要件はそちらをご覧ください。
期間と学年の設計——いつ出るかで、取れる形が変わる
POINT
卒業留学は「現地校の最終学年を含む」設計が基本になります。日本の学年と現地の学年の対応、そして半球による学期のずれを先に確認してください。
卒業留学では、現地校の卒業要件を満たすだけの在学期間が必要です。課程が複数年でひとまとまりになっている国があります。 たとえばイギリスはGCSE(Year 10〜11)とA-level(Year 12〜13)がそれぞれ2年の課程で、最終学年だけの編入では課程を修了できません(イギリスの高校留学)。ニュージーランドのNCEAは学年ごとにレベルを積み上げる形で、Year 11でレベル1、Year 12でレベル2、Year 13でレベル3を取ります(ニュージーランドの高校留学)。構造は国によって違うため、当サイトは一般化しません。志望校の卒業要件を直接確認してください。
設計の際に確認する項目は4つです。①現地校の卒業要件(必要な単位・科目・試験)②日本の学年との対応(何年生として編入されるか)③学期の始まり(南半球は年明け開始)④編入を受け入れている学年。このうち②と③は国ごとに整理してあります。カナダはカナダの高校留学、ニュージーランドはニュージーランドの高校留学、オーストラリアはオーストラリアの高校留学、アメリカはアメリカの高校留学、イギリスはイギリスの高校留学をご覧ください。
出発時期を決めるときに確認する4項目(当サイトによる整理)
| 項目 | なぜ効くか | 確認先 |
|---|---|---|
| 現地校の卒業要件 | 最終学年だけの在学では卒業できないことが多い | 現地校(出願前の照会) |
| 日本の学年との対応・学期の始まり | 何年生として受け入れられるかで必要な在学年数が変わる。南半球は年明け開始で日本の学年度と半年ずれる | 当サイトの国別ガイドと何年生がベストか |
| 編入を受け入れている学年 | 受け入れの学年が限られていると、出発時期そのものが決まる | 現地校(出願前の照会) |
| (あわせて)日本の高校の籍 | 休学の可否と上限期間は学校の規程による | 在籍校(教務主任) |
なお、学年設計そのものは交換留学と共通する論点も多くあります。 何年生で出るのが有利かという観点は高校留学は何年生がベストかで扱っているので、あわせてご覧ください。
向いているご家庭と、慎重に考えたいご家庭
POINT
卒業留学は選択肢として優れた面がありますが、戻り道が細くなる形でもあります。中立の立場から両方を書きます。
当サイトは留学の送客報酬を受け取っていません。だから「向かない」も書けます。 判断材料として、両方を並べます。
卒業留学が向いている場合・慎重に考えたい場合(当サイトによる整理)
| 向いている | 慎重に考えたい |
|---|---|
| その先の進路として海外大学を考えている(現地の成績・推薦状がそのまま出願材料になる) | 日本の大学の一般選抜を主軸に考えている(教科書と試験の前提が変わる) |
| 複数年の在学と費用を計画できる | 費用の見通しが1年分しか立っていない(途中で止めると資格が残らない) |
| 現地校の卒業要件を満たせる語学力の見通しがある | 英語力の準備がこれからで、最終学年が近い |
| 日本の高校の籍について学校と合意できている | 在籍校との関係が未整理のまま出発しようとしている |
最後の行が実務上いちばん効きます。 卒業留学は「日本の高校の卒業を必須としない」形なので、うまくいかなかったときの戻り先を自分で用意しておく必要があります。 休学で籍を残す、通信制課程に転学しておく、編入学の受け入れ先を調べておく——このいずれかを済ませてから出発してください。その先に海外大学進学を見据えているご家庭は、[海外大学進学](/university/kaigai-daigaku-shingaku)で出願の全体像を先に確認しておくと、高校の選び方まで一貫します。
まとめ:卒業できるかではなく、その卒業が資格として通るか
卒業留学は「長い留学」ではありません。現地校の正規生になる形であり、日本の高校の籍の扱いも、帰国後の大学入学資格の根拠も、交換留学とは別のものになります。籍については、休学・退学のいずれも校長の許可が必要です(学校教育法施行規則第94条)。退学すると、戻るときの入口が転学(第92条)から編入学(第91条=「相当年齢に達し、当該学年に在学する者と同等以上の学力があると認められた者」)に変わります。
帰国後の大学入学資格の根拠は、施行規則第150条第1号「外国において学校教育における十二年の課程を修了した者」です。ただし、その課程は所在国の法令にもとづく正規の学校教育である必要があります(NIC-Japan〈運営=独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構〉の説明)。インターナショナルスクールの場合は、WASC・ACSI・CIS・NEASC・Cognia・COBISといった国際的な認証団体の認定を受けているかどうかが経路になります(日本の法令では第150条第4号=昭和23年文部省告示第47号 第25号)。この要件に当たらなかった場合でも、NIC-Japanは在外教育施設の修了・学力認定試験の合格・国際バカロレア等の資格の取得・認証団体認定校での12年課程の修了・個別入学資格審査という5つの受け皿を挙げています(第150条第7号の個別審査は「十八歳に達したもの」が対象です)。なお12年未満の学制の場合は、これに加えて文部科学大臣が指定した準備教育課程等の修了が必要になります(第150条第1号の「これに準ずる者で文部科学大臣の指定したもの」)。
そして在学のしかたです。東京大学は外国学校卒業学生特別選考について「日本の学校に籍を置いたまま一時的に海外の高校に留学(交換留学を含む)し、日本の高校を卒業した場合は、外国での学校の在学期間として認められません」「海外の高校に正規生として留学しながら、その高校に最終学年を含め継続して2年以上在学し卒業や修了をすれば、この期間は海外の高校の在学期間に含まれます」と公表しています。これは同大学の説明であり、要件は大学ごとに異なります。
確認の順序をまとめます。①日本の高校の籍をどうするか学校と決める →②志望する現地校の課程が所在国の法令上どう位置づけられ、何年の課程かを確認する →③認証団体の認定の有無と有効性を確認する →④卒業要件から必要な在学年数を逆算して出発時期を決める →⑤帰国後に使う入試の要件を志望校3つで横並びに確認する →⑥うまくいかなかったときの戻り先を用意する。⑥まで済んで初めて、卒業留学は選択肢になります。 入試要件の確認手順は帰国子女枠と高校留学、留学全体の流れは高校留学ガイドをご覧ください。
Q.卒業留学と交換留学は、何がいちばん違うのですか。
籍をどこに置くかです。 交換留学やターム留学は日本の高校に籍を置いたまま出る形で、校長の許可を受ければ(学校教育法施行規則第93条第1項)、外国の高校での履修を日本の高校での履修とみなし「三十六単位を超えない範囲で単位の修得を認定することができる」とされています(同条第2項)。目指すのは日本の高校の卒業資格です。 一方、卒業留学は現地校の正規生になり、その学校を卒業する形です。日本の高校の籍は休学・退学・通信制課程への転学の3つから選ぶことになり(休学・退学は第94条により校長の許可が必要、転学は第92条)、得られるのは現地校の卒業資格です(通信制課程に籍を残す場合は日本の高校の卒業も並行して目指せる余地があります)。帰国後に日本の大学を受験する場合の根拠も変わり、施行規則第150条第1号の「外国において学校教育における十二年の課程を修了した者」に当たるかどうかで判断されます。期間の長短ではなく、制度として別物だと考えてください。
Q.海外の高校を卒業すれば、日本の大学を受験できますか。
受験できる道があります。ただし条件を確認してください。 学校教育法施行規則第150条第1号は「外国において学校教育における十二年の課程を修了した者又はこれに準ずる者で文部科学大臣の指定したもの」を、大学入学に関し高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者としています。問題は「12年の課程」に当たるかどうかです。NIC-Japan(運営=独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構)は、その教育課程は「当該学校等が所在する国の法令に基づいている必要があります」と説明しています。A国にある学校がB国のカリキュラムに準拠していても、A国の法令で正規と認められなければ該当しません。 また、この要件に当たらなかった場合でも、NIC-Japanは在外教育施設の修了・学力認定試験の合格・国際バカロレア等の資格の取得・認証団体認定校での12年課程の修了・個別入学資格審査という5つの受け皿を挙げています(個別入学資格審査は同条第7号。「十八歳に達したもの」が対象です)。学制が12年未満の場合は、これに加えて文部科学大臣が指定した準備教育課程等の修了が必要になります。最終的な判断は受験する大学が行いますので、志望校の入試担当窓口にご確認ください。
Q.日本の高校を退学せずに卒業留学できますか。
現実的な選択肢が2つあります。 ひとつは休学です。学校教育法施行規則第94条は休学も校長の許可を要すると定めており、許可されれば籍は残ります。戻り先として在籍校への復学が残り、他校へ移る場合も「転学」(第92条)の経路を使えるのが利点です。もうひとつは通信制課程への転学です。同規則第92条第2項は、全日制・定時制・通信制相互の転学・転籍について「修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる」と定めています。通信制に籍を移してから出れば、日本の高校の卒業資格を並行して目指せる可能性があります(学習の負担は増えます)。いずれも休学の可否や上限期間は学校の規程によるため、在籍校の教務主任に確認してください。器としての通信制の選び方は通信制高校からの留学で扱っています。
Q.1年間の留学でも、卒業留学として扱ってもらえますか。
「卒業留学」という言葉自体は制度上の用語ではないため、扱いは文脈によります。 実務上重要なのは、現地校の卒業要件を満たしたかどうかと、受験する大学が在学期間をどう数えるかです。参考として、東京大学は外国学校卒業学生特別選考について「海外の高校に正規生として留学しながら、その高校に最終学年を含め継続して2年以上在学し卒業や修了をすれば、この期間は海外の高校の在学期間に含まれます」と公表しています。あわせて「日本の学校に籍を置いたまま一時的に海外の高校に留学(交換留学を含む)し、日本の高校を卒業した場合は、外国での学校の在学期間として認められません」とも記しています。ただしこれは同大学の当該選考についての説明であり、要件は大学ごとに定められます。 1年留学の扱いは1年留学は帰国子女枠の対象になるかで確認手順をまとめています。
Q.インターナショナルスクールを卒業した場合はどうなりますか。
学校の性格によって経路が分かれます。 NIC-Japanは、外国のインターナショナルスクールについて所在国の正規の学校教育を行う施設と認められた場合には、その教育課程が12年以上であれば入学資格が認められると説明しています。あわせて、国際的な認証団体(WASC、ACSI、CIS、NEASC、Cognia、COBIS)から認定を受けたインターナショナルスクールで12年の課程を修了した場合にも認められるとしています。NIC-Japanの説明では、本流は「所在国の正規の学校教育での12年(12年目)の課程の修了」で、これに該当しなかった場合の受け皿として5つが挙げられています。認証団体の認定校のルートはその受け皿の1つです(日本の法令では第150条第4号=昭和23年文部省告示第47号 第25号が根拠)。インターナショナルスクールで実際に論点になりやすいのはこの2つだと当サイトは整理しています。出願を検討する段階で、学校に「どの認証を受けているか」「認証は現在有効か」を確認してください。認証は更新制であることが一般的です。なお、日本国内のインターナショナルスクールについては別の論点(一条校かどうか)があり、日本のボーディングスクールで整理しています。
Q.現地校を卒業できなかった場合、どうなりますか。
戻り先を用意していたかどうかで結果が大きく変わります。 日本の高校を休学していたなら、復学または転学(施行規則第92条)という道が残ります。退学していた場合は編入学(第91条)になり、「相当年齢に達し、当該学年に在学する者と同等以上の学力があると認められた者」という条件のもとで、受け入れる学校の判断になります。通信制課程に籍を置いていた場合は、そのまま卒業を目指せる可能性があります。 また、日本の大学を受験する道としては、施行規則第150条第5号の高等学校卒業程度認定試験という代替ルートもあります(合格しても最終学歴が「高等学校卒業」にならない点は文部科学省が明記しています)。出発前に「うまくいかなかったときにどこへ戻るか」を1つ決めておいてください。 退学を選ぶ場合の書類と手続きは高校中退と留学にまとめています。
留学の形から、必要な準備を整理する
卒業留学・交換留学・ターム留学では、籍の扱いも準備の順序も変わります。いくつかの質問に答えると、検討の出発点が絞れます。






