このページの要点
通信制高校でも留学はできますが、面接指導と試験は残り、留学で認定できる単位は36単位までです。
- 通信制の課程には「学年」の始期・終期の規定が適用されず(学校教育法施行規則第101条第2項)、学年による教育課程の区分を設けない「単位制」を採ることができます(第103条)。この形なら、1年間留学しても全日制で起きる原級留置(留年)が構造的に起きにくくなります。
- 「スクーリング年4日」は、メディア学習による面接指導の免除を使って初めて成立する数字です。免除の上限は10分の6、特に必要がある場合でも合わせて10分の8まで(高等学校学習指導要領 第1章総則第2款5)。ゼロにはできません。
- 私立通信制の就学支援金は1単位13,668円・通算74単位まで、支給期間は48か月(全日制は36か月/文部科学省・令和8年度)。卒業が4年目にずれ込んでも支援が続く点は、留学を挟む家庭には実務的に大きな差です。
通信制高校の留学に関する情報は、そのほとんどが学校自身のコース紹介か比較ポータルで、根拠となる法令や学習指導要領を示したものがほとんどありません。その結果「登校日数が少ないから留学しやすい」という印象だけが先に立ち、実際に何日は日本にいる必要があるのか、留学中の学びがどこまで単位になるのか、試験はどうなるのかが曖昧なまま学校を決めてしまいがちです。この記事では、学校教育法施行規則・高等学校通信教育規程・高等学校学習指導要領の原文と、文部科学省の令和8年度就学支援金資料をもとに、通信制高校から留学する場合の「本当の関門」を数字で整理します。
結論:通信制の「留学しやすさ」は4つの数字で決まる
POINT
通信制高校が留学と相性がよいのは事実ですが、その中身は「登校が少ない」という漠然としたものではなく、法令と学習指導要領が定めた4つの数字に還元できます。学校選びの前に、この4つを押さえてください。
通信制の課程で行う教育は、添削指導(レポート)・面接指導(スクーリング)・試験の3つの方法によって行うと定められています(高等学校通信教育規程第2条第1項)。これに加えて、放送やインターネットなどの多様なメディアを利用した指導を「加えて」行うことができます(同第2項)。つまりオンライン学習は3つの基幹的な方法の代わりではなく、上乗せしたうえで面接指導の一部を免除するための仕組みです。この構造を理解すると、留学中に何が残るのかが見えてきます。
通信制高校から留学するときに効いてくる4つの数字(根拠は各法令・告示の原文)
| 数字 | 何を決めるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 36単位 | 留学先の高校での履修を、日本の高校の単位として認定できる上限。卒業に必要な74単位のうち、留学だけで埋められるのは最大で半分弱まで | 学校教育法施行規則第93条第2項 |
| 10分の8 | メディア学習によって面接指導等の時間数を免除できる上限。通常は10分の6以内で、特に必要がある場合に複数のメディアを利用して合わせて10分の8まで | 高等学校学習指導要領 第1章総則第2款5(5) |
| 74単位・3年以上・30単位時間 | 卒業の3要件。修得単位数、在籍年数、特別活動の時間数。留学しても、この3つは免除されない | 学校教育法施行規則第96条/学校教育法第56条/学習指導要領 第1章総則第2款5(6) |
| 48か月 | 高等学校等就学支援金の支給期間(高等学校通信制)。全日制は36か月なので、卒業が4年目にずれ込んでも支援が続く | 文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」(令和8年度) |
この4つのうち、学校ごとに大きく変わるのは2つめの「免除をどこまで認めるか」だけです。1つめと3つめは全国共通のルール、4つめは国の制度です。学校の資料を比べるときは、パンフレットの登校日数ではなく「免除の基準を学校が公表しているか」を見ると、比較の軸がぶれません。
なぜ通信制だと「留学して留年」が起きにくいのか
POINT
「通信制は出席日数に縛られないから留年しない」という説明をよく見ますが、正確な理由は別のところにあります。通信制の課程には、そもそも学年に関する規定の一部が適用されないからです。
学校教育法施行規則第101条第2項は、通信制の課程に適用しない規定を列挙しています。そこに挙がっているのは、第80条(施設・設備・編制)と、第104条において準用する第59条(学年の始期・終期)および第61条から第63条まで(休業日)です。つまり通信制の課程には「4月1日に始まり3月31日に終わる学年」という枠組みがそのままでは当てはまりません。さらに第103条第1項は、高等学校が学年による教育課程の区分を設けないことができると定めています。通信制の課程ではこれに基づく「単位制」が広く採られていますが、学年制を採る課程もあり得ます。志望校がどちらなのかは、募集要項か通信教育実施計画で必ず確認してください。
全日制で1年間の留学が「留年」につながるのは、学年ごとに課程の修了を認定する仕組みだからです。年度の途中で抜けると、その学年の課程を修了できず原級留置になる。通信制ではその認定の単位が「学年」ではなく「科目」なので、留学して一部の科目が取れなかったとしても、取れた科目の単位は積み上がり、足りない分を後から取り直せばよいことになります。詳しい仕組みの違いは高校留学で留年しないためにで全日制側から整理しています。
ただし「留年しない」=「3年で卒業できる」ではありません。修業年限は通信制でも3年以上と定められており(学校教育法第56条)、74単位を満たせなければ在籍は4年目に入ります。ここで効いてくるのが、就学支援金の支給期間が通信制だけ48か月である点です。全日制で留年すると36か月を超えた分は支援の対象外になりますが、通信制は4年目も制度上カバーされます。
避けたい
「通信制は留年がないから、いつ留学しても大丈夫」と考えて時期を決めない
こうすればOK
留年はしなくても、卒業時期は単位の積み上がり方で動く。大学受験の年から逆算し、留学中に何単位を積むのか(あるいは積まないのか)を出発前に学校と数字で確認する
避けたい
「単位制だから学年は関係ない」と考え、在籍年数を数えない
こうすればOK
修業年限は3年以上(学校教育法第56条)。単位が足りていても在籍が3年に満たなければ卒業できないので、転入した時期に応じて在籍年数の起算がどうなるかを確認する
「スクーリング年4日」の正体 — 面接指導の標準時間と免除の上限
POINT
この記事でいちばん知っておいていただきたいのがこの章です。通信制高校の広告に並ぶ「年4日」「年5日」という数字は、法令の標準時間をメディア学習で最大8割免除して初めて成り立つ数字であって、通信制がもともと登校の少ない仕組みだからではありません。
高等学校学習指導要領(平成30年告示)第1章総則第2款5は、通信制の課程における1単位あたりの添削指導の回数と面接指導の単位時間数の標準を定めています。1単位時間は50分として計算します。教科によって差が大きいのが特徴です。
1単位あたりの添削指導の回数・面接指導の単位時間数の標準(高等学校学習指導要領 第1章総則第2款5(1))
| 各教科・科目 | 添削指導(回) | 面接指導(単位時間) |
|---|---|---|
| 国語、地理歴史、公民及び数学に属する科目 | 3 | 1 |
| 理科に属する科目 | 3 | 4 |
| 保健体育に属する科目のうち「体育」 | 1 | 5 |
| 保健体育に属する科目のうち「保健」 | 3 | 1 |
| 芸術及び外国語に属する科目 | 3 | 4 |
| 家庭及び情報に属する科目並びに専門教科・科目 | 必要に応じて2〜3 | 必要に応じて2〜8 |
注目していただきたいのは体育の5単位時間です。国語や数学は1単位につき面接指導1単位時間で済むのに、体育は5倍かかります。理科・芸術・外国語も4倍です。実技や実験を伴う教科ほど、対面で確保しなければならない時間が長くなる設計になっています。理数に属する科目と総合的な探究の時間については、1単位につき1回以上・1単位時間以上を確保したうえで各学校が定めます(同5(3))。
この標準に、必履修科目を最少の単位数で取った場合の科目構成をあてはめると、面接指導に必要な時間の全体像が見えます。以下は当サイトが標準表から算出したモデルケースです(各校の実際の設定は通信教育実施計画によります)。
必履修科目だけを最少単位数で取った場合の面接指導時間の試算(当サイト算出・標準どおりに設定した場合)
| 教科 | 単位数 | 面接指導(単位時間) |
|---|---|---|
| 国語(現代の国語・言語文化) | 4 | 4 |
| 地理歴史(地理総合・歴史総合) | 4 | 4 |
| 公民(公共) | 2 | 2 |
| 数学(数学Ⅰ) | 3 | 3 |
| 理科(科学と人間生活+基礎科目) | 4 | 16 |
| 保健体育のうち体育 | 7 | 35 |
| 保健体育のうち保健 | 2 | 2 |
| 芸術 | 2 | 8 |
| 外国語(英語コミュニケーションⅠ) | 3 | 12 |
| 家庭(家庭基礎) | 2 | 4〜6 |
| 情報(情報Ⅰ) | 2 | 4〜6 |
| 総合的な探究の時間 | 3 | 3以上 |
| 合計 | 38単位 | 約97〜101単位時間(約81〜84時間) |
卒業に必要な74単位まではあと36単位あります。これを面接指導1単位時間の科目(国語・地理歴史・公民・数学)中心で埋めたとしても、3年間の合計はおよそ133単位時間前後=約111時間になります。1日6単位時間(=5時間)の集中スクーリングで消化すると仮定すると、3年間で約22日。年に換算して7日以上です。ここまでが免除を一切使わない場合の姿です。
ここでメディア学習による免除が効いてきます。学習指導要領第1章総則第2款5(5)は、学校が指導計画にラジオ・テレビ放送その他の多様なメディアを利用して行う学習を計画的・継続的に取り入れ、生徒がその成果を報告課題の作成等で示した場合に、面接指導の時間数または特別活動の時間数(面接指導等時間数)のうち10分の6以内を免除できると定めています。さらに「生徒の実態等を考慮して特に必要がある場合」は複数のメディアを利用することで、合わせて10分の8まで免除できます。
免除の有無で3年間の登校日数がどう変わるか(上の試算値133単位時間を1日6単位時間で消化した場合・当サイト算出)
| 条件 | 残る面接指導等時間数 | 3年間の登校日数の目安 |
|---|---|---|
| 免除なし(標準どおり) | 約133単位時間 | 約22日(年7〜8日) |
| 10分の6を免除 | 約53単位時間 | 約9日(年3日) |
| 10分の8を免除(特に必要がある場合) | 約27単位時間 | 約4〜5日(年1〜2日) |
広告で見かける「年4日」「年5日」がどこから来ているかが、これで分かります。10分の8の免除を前提にした数字です。つまり通信制高校を留学のために選ぶなら、確認すべきは登校日数そのものではなく「うちの子はその免除の対象になるのか」という一点になります。
この試算は学習指導要領の標準値から当サイトが計算したモデルケースです。免除は各教科・科目ごとに判断されるため、実際にすべての科目で上限まで免除されるとは限りません。また体育の単位数(7〜8単位)や理科の科目の取り方によって合計は変動します。実際の必要時間は、各校が作成し生徒にあらかじめ明示することとされている「通信教育実施計画」(高等学校通信教育規程第4条の3)で確認してください。
留学は「特に必要がある場合」に当たる — 解説が名指ししている事実
POINT
10分の8の免除は例外的な扱いですが、実は学習指導要領の解説が、その例として海外滞在を明示しています。学校と交渉するとき、この一文を知っているかどうかで話の進み方が変わります。
高等学校学習指導要領解説(総則編)は、10分の8までの免除が認められる「生徒の実態等を考慮して特に必要がある場合」として、次のように例示しています。「例えば、病気や事故のため、入院又は自宅療養を必要とする場合、いじめ、人間関係など心因的な事情により登校が困難である場合、仕事に従事していたり、海外での生活時間が長かったりして、時間の調整が付かない場合、実施校自らが生徒の実態等を踏まえ、複数のメディア教材を作成する等により教育効果が確保される場合等が想定され」る、と。
留学中の生徒は、この「海外での生活時間が長かったりして、時間の調整が付かない場合」にそのまま当てはまります。留学は制度の想定外ではなく、想定内なのです。ここは通信制高校の営業資料には出てきませんが、保護者にとっては大きな安心材料になります。
同じ解説には、学校側への要請も書かれています。「各学校において、『特に必要がある場合』の基準をあらかじめ定め、生徒や保護者に明示しておくことが望ましい」。つまり、免除の基準を説明できることが学校に期待されているということです。学校見学や個別相談で「留学中の面接指導の免除について、基準は定めていますか。書面で見せていただけますか」と聞くのは、無理な要求ではなく制度の趣旨に沿った質問です。
避けたい
「留学するのでスクーリングは免除してもらえますか」と漠然と聞く
こうすればOK
「学習指導要領第1章総則第2款5(5)の10分の8の免除について、海外滞在を理由とする場合の基準を定めていますか」と、根拠を挙げて聞く。基準が明示されているかどうかで学校の運用体制が見える
避けたい
免除の説明を口頭で受けて安心し、書面を確認しない
こうすればOK
通信教育実施計画(高等学校通信教育規程第4条の3)は生徒にあらかじめ明示することとされている書面。科目ごとの方法・年間計画・単位認定の基準が書かれているので、入学前に見せてもらう
留学中の学びを単位にする2つの経路と、その上限
POINT
留学先での学びを日本の高校の単位に変える方法は1つではありません。第93条第2項の「留学の認定」と、第97条・第98条の「他の学修の単位化」は別枠で、上限もそれぞれ36単位です。
まず基本になるのが学校教育法施行規則第93条です。第1項で「校長は、教育上有益と認めるときは、生徒が外国の高等学校に留学することを許可することができる」と定め、第2項で「前項の規定により留学することを許可された生徒について、外国の高等学校における履修を高等学校における履修とみなし、三十六単位を超えない範囲で単位の修得を認定することができる」としています。ここで重要なのは、認定の前提が「校長の許可」であるという点です。許可を得ずに渡航した場合、この枠組みには乗りません。
この第93条が通信制でも使えるのかは、条文の構造から確認できます。通信制の課程に適用しない規定を列挙した第101条第2項に、第93条は含まれていません。高等学校通信教育規程第1条も「通信制の課程については、学校教育法施行規則に規定するもののほか、この省令の定めるところによる」としており、施行規則が土台であることを明示しています。つまり通信制でも、校長の許可と36単位の認定という枠組みはそのまま使えます。
もう1つの経路が第97条・第98条です。第97条は他の高等学校で修得した科目の単位を加えられる規定、第98条は大学や専修学校等での学修、知識及び技能に関する審査に係る学修、ボランティア活動等に係る学修を単位として与えられる規定です。そして第99条が「第97条の規定に基づき加えることのできる単位数及び前条の規定に基づき与えることのできる単位数の合計数は三十六を超えないものとする」と定めています。第93条第2項の36単位とは別枠です。
留学中の学びを単位に変える経路と上限(学校教育法施行規則)
| 経路 | 対象 | 上限 | 前提 |
|---|---|---|---|
| 第93条第2項 | 外国の高等学校における履修 | 36単位 | 校長の留学の許可を受けていること |
| 第97条 | 他の高等学校での科目履修 | 第98条と合わせて36単位(第99条) | 校長の定めるところによる |
| 第98条第2号 | 知識及び技能に関する審査に係る学修(文部科学大臣が別に定めるもの) | 第97条と合わせて36単位(第99条) | 校長の定めるところによる |
| 第100条第1号 | 高等学校卒業程度認定試験の合格科目 | 条文上の上限規定なし(学校の定めによる) | 校長の定めるところによる |
第98条第2号の「知識及び技能に関する審査」は、実務上、英語の資格試験などを単位化している学校があります。ただし対象とする審査と単位数は学校の定めによるため、留学前に「留学中に取得した資格を単位にできるか」を確認しておく価値があります。もっとも、これらはあくまで補助的な経路です。留学の単位認定を確実に受けるための書類と段取りは高校留学の単位認定を確実に受けるにはに、36単位ルールそのものの考え方は高校留学の単位はどうなるかにまとめています。
留学しても免除されないもの — 試験・特別活動・在籍年数
POINT
メディア学習で免除できるのは「面接指導等時間数」だけです。試験は免除の対象に入っていません。ここが留学中いちばん現実的な問題になります。
高等学校通信教育規程第2条第1項は、通信教育を「添削指導、面接指導及び試験の方法により行う」と定めています。一方、学習指導要領の免除規定が対象としているのは「各教科・科目の面接指導の時間数又は特別活動の時間数」です。試験はどこにも免除規定がありません。 つまり留学していても、単位認定のための試験は受ける必要があります。
さらに解説は「添削指導や面接指導が完了する前に、当該学期の全ての学習内容を対象とした学期末の試験を実施したりすることがないよう、年間指導計画に基づき、計画的に実施することが必要」としています。試験は面接指導のあとに来るという順序が想定されているわけです。留学の日程と学校の年間計画がかみ合っていないと、帰国してから慌てて詰め込むことになります。
特別活動も残ります。学習指導要領第1章総則第2款5(6)は「特別活動については、ホームルーム活動を含めて、各々の生徒の卒業までに30単位時間以上指導するものとする」と定めています。特別活動の時間数も免除の対象には入りますが、上限まで免除しても10分の2は残ります。30単位時間の10分の2は6単位時間ですから、留学していても最低数時間は特別活動に参加する必要があるという計算になります。
留学中に「残るもの」と「軽くできるもの」
| 項目 | 留学中の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 添削指導(レポート) | 残る。オンラインで提出できる学校が多いが、提出期限は年間計画に沿う | 高等学校通信教育規程第2条第1項 |
| 面接指導(スクーリング) | メディア学習で10分の6、特に必要がある場合は合わせて10分の8まで免除可 | 学習指導要領 第1章総則第2款5(5) |
| 試験 | 免除規定なし。実施方法・場所は学校の定めによるため要確認 | 高等学校通信教育規程第2条第1項 |
| 特別活動 | 卒業までに30単位時間以上。免除は面接指導と同じ枠組みで、上限まで使っても6単位時間は残る | 学習指導要領 第1章総則第2款5(6) |
| 在籍年数 | 3年以上。単位が足りていても短縮されない | 学校教育法第56条 |
この表を持って学校に相談すると、話が具体的になります。とくに試験の実施方法は学校差が大きい部分です。スクーリング会場でしか受けられない学校もあれば、オンラインでの受験を認めている学校もあります。留学の日程を決める前に、この1点だけでも確認しておくと、一時帰国の要否がはっきりします。
3つのルートのどれを選ぶか — 器の決め方
POINT
「通信制高校で留学する」といっても、今の高校に在籍したまま留学するのか、通信制に転入してから留学するのか、退学して現地校の卒業を目指すのかで、必要な手続きも卒業の形も変わります。
この選択は、留学先を決めるよりも先にしておくべきものです。なぜなら第93条第2項の単位認定は「在籍校の校長の許可」を前提としているため、どの学校に籍を置いた状態で渡航するかによって、そもそも認定の枠組みに乗れるかどうかが決まるからです。
3つのルートの比較(通信制を使う場合/使わない場合)
| ルート | 日本の高校卒業資格 | 留年のリスク | 向いている家庭 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ① 今の全日制高校に在籍したまま留学 | 在籍校で取得 | あり(学年制のため、留学扱いでないと原級留置) | 在籍校に留学制度があり、校長の許可が得られる見込みがある | 許可と認定は校長の裁量。事前に書面で条件を確認する |
| ② 通信制高校に転入してから留学 | 転入先で取得 | 低い(単位制のため科目単位で積み上がる) | 在籍校で許可が得られない/学年の縛りを外したい | 転入時に修得済み単位を持ち越せる(第92条第2項)。転入先の留学の扱いは事前確認 |
| ③ 退学して現地校の卒業を目指す | 取得しない(現地校の卒業資格) | — | 海外大学進学を本命に置いている | 日本の大学を受ける場合の受験資格の確保を別途検討する |
②を選ぶ場合、転入のタイミングが単位に影響します。学校教育法施行規則第92条第2項は、全日制・定時制・通信制の課程相互の転学・転籍について「修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる」と定めています。すでに修得した単位は引き継げますが、年度の途中で移ると、履修中で修得に至っていない科目は単位になりません。籍の扱いをどう決めるかは不登校の高校生の留学と単位認定・休学でも4つのルートとして整理していますので、あわせてご覧ください。
避けたい
留学先とプログラムを決めてから、日本側の籍をどうするか考え始める
こうすればOK
先に籍を決める。第93条第2項の認定は在籍校の校長の許可が前提なので、どこに籍を置くかが決まらないと、留学中の学びが単位になるかどうかも決まらない
避けたい
「通信制に移れば留学中の履修は自動的に単位になる」と考える
こうすればOK
転入先での留学の扱いは転入先の規程による。転入の相談時点で「留学の予定がある」ことを伝え、認定の可否と上限を確認してから手続きする
避けたい
現地校の卒業資格が取れるから日本の高校は要らない、と早く決める
こうすればOK
日本の大学を受ける可能性を残すかで判断が変わる。海外大学一本に絞れないうちは、日本側の籍を残す選択肢の費用と手間を比べてから決める
「留学コース」を見るときの5つの確認点
POINT
通信制高校の留学コースは、学校本体が提供する部分と、提携先の民間施設が提供する部分が混ざっています。この区別が見えていないと、比べているつもりで比べられていません。
高等学校学習指導要領解説は、通信制の周辺にある施設を明確に定義しています。サポート施設とは「学校教育法その他の関係法令に基づくものではない、生徒を学習面や生活面等で支援する民間施設」です。つまりサポート校は高校ではありません。また解説は「いわゆる通学コースにおいて、実施校や連携施設で実施されている教育活動と面接指導とは明確に区別されるものであることに留意する必要がある」とも書いています。毎日通えるコースがあっても、そのすべてが面接指導というわけではないのです。
- 1この学校は「実施校」か、それとも連携協力施設・サポート施設か。 高等学校通信教育規程第3条は、面接指導等実施施設は「実施校の分校又は協力校であることを基本とする」と定めています。契約先が誰なのかを最初に確認します。
- 2面接指導の会場はどこか、何日必要か。 会場が海外にあるのか、国内の特定地域なのか。一時帰国が必要なら、その日数と時期を年間計画から逆算します。
- 3免除の基準は文書化されているか。 「特に必要がある場合」の基準をあらかじめ定めて明示することが望ましいとされています。示せる学校とそうでない学校では運用体制が違います。
- 4試験はどこで、どのように受けるか。 免除規定がない以上、ここが留学日程の制約になります。オンライン受験の可否、追試の扱いを確認します。
- 5留学中に認定される単位数の上限を、書面で示せるか。 36単位は法令上の上限であり、学校がそこまで認めるとは限りません。「最大何単位まで認定した実績があるか」を聞くと具体的な答えが返ってきます。
なお高等学校通信教育規程第14条は、実施校に対して情報の公表を義務づけています。公表事項には「入学、退学、転学、休学及び卒業に関すること(入学者の数、在籍する生徒の数、退学若しくは転学又は卒業した者の数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況を含む。)」「通信教育実施計画に関すること」「授業料、入学料その他の費用徴収に関すること」が含まれます。これらが学校のサイトで見つからない場合は、その理由を尋ねてよいということです。
本記事は制度の一般的な枠組みを整理したものです。面接指導の日数、免除の運用、試験の実施方法、単位認定の上限は学校ごとに異なります。学校の公表資料と通信教育実施計画で必ず確認し、判断は在籍校・転入先との個別のやり取りに基づいて行ってください。
どの形の留学が現実的かを整理する
在籍校のまま行くのか、通信制に移るのか、期間はどれくらいかで、必要な手続きも費用も変わります。いくつかの質問に答えるだけで、ご家庭の状況に近い留学のタイプを整理できます。
お金の全体像 — 学費は単位数で動き、留学費用には支援金が出ない
POINT
通信制の学費は「1単位いくら」で動くのが基本です。就学支援金も単位数で計算されるため、留学で単位認定を受けた分は学費も支援金も発生しないという構造になります。
文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」(令和8年度)によると、高等学校通信制の支給限度額は次のとおりです。私立は単位制授業料の場合1単位あたり13,668円、定額授業料の場合は月額28,100円(年額337,200円)。公立は1単位336円、月額520円です。参考までに私立全日制は1単位18,528円、月額38,100円です。単位制の場合の支給は通算74単位・年間30単位までと定められています。
高等学校等就学支援金の支給期間と支給限度額(令和8年度・文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」より抜粋)
| 区分 | 支給期間 | 定額授業料の場合 | 単位制授業料の場合 |
|---|---|---|---|
| 私立 高等学校通信制 | 48月 | 28,100円/月 | 13,668円/単位 |
| 公立 高等学校通信制 | 48月 | 520円/月 | 336円/単位 |
| 私立 高等学校全日制 | 36月 | 38,100円/月 | 18,528円/単位 |
| 公立 高等学校全日制 | 36月 | 9,900円/月 | 4,812円/単位 |
この表でいちばん実務的に効くのは支給期間の差です。全日制は36か月ですが、通信制は48か月。留学を挟んで卒業が4年目に入っても、通信制なら支援金の対象期間内に収まります。全日制で1年遅れると、4年目の授業料は原則として全額自己負担になります。留学を検討している家庭にとって、この12か月の差は無視できません。
一方で、就学支援金はあくまで授業料に充てるための制度です。留学のプログラム費用、渡航費、滞在費、保険、スクーリングのための一時帰国の航空券、サポート校の費用はいずれも対象外です。「通信制なら学費が安いから留学に回せる」という考え方は間違いではありませんが、留学そのものの費用は別に用意する必要があります。高校留学全体の費用の内訳は高校留学の費用で整理しています。
避けたい
「通信制は学費が安い」という一般論だけで総額を見積もる
こうすればOK
学費(単位数×単価)+留学費用+一時帰国の交通費で組み立てる。単位制なら、留学で認定を受けた単位分の授業料が発生するかどうかを学校に確認すると、差が具体的になる
避けたい
就学支援金が留学費用にも使えると考える
こうすればOK
支援金は授業料に充てるための制度。留学費用・渡航費・スクーリングの交通費は対象外。支援金を引く前の総額を先に出してから、差額の埋め方を考える
支援金を引く前の「総額」を先に出しておく
国・期間・留学タイプ・滞在方法から費用の目安を試算できます(対応期間は1か月からです)。通信制の学費とは別枠で必要になる留学費用の規模を先につかんでおくと、学校選びの判断がぶれません。
出発前に在籍校・転入先へ確認する10の質問
POINT
ここまでの内容を、そのまま学校に持っていける形にまとめます。口頭のやり取りで終わらせず、回答を書面かメールで残しておくことをおすすめします。
- 1留学に対して学校教育法施行規則第93条第1項の「留学の許可」を出していただけますか。許可の申請時期と必要書類を教えてください。
- 2第93条第2項に基づく単位認定は、最大で何単位まで認めていますか。過去に認定した実績の最大値も教えてください。
- 3留学中の面接指導について、10分の8までの免除の基準を定めていますか。定めている場合、その基準を見せていただけますか。
- 4留学中の試験はどこで、どのように受けることになりますか。オンライン受験や追試の制度はありますか。
- 5特別活動の30単位時間は、留学期間中どのように扱われますか。帰国後にまとめて消化することは可能ですか。
- 6添削指導(レポート)の提出は海外から行えますか。提出期限の設定は年間計画のどこにありますか。
- 7留学期間中の授業料は発生しますか。単位認定を受けた分の授業料の扱いを教えてください。
- 8留学中も就学支援金の受給は継続しますか。手続き上、必要になる届出はありますか。
- 9帰国後の卒業見込み時期は、留学の期間と認定単位数によってどう変わりますか。3年で卒業する場合と4年になる場合の条件を教えてください。
- 10通信教育実施計画を見せていただけますか。科目ごとの面接指導の時間数と単位認定の基準を確認したいです。
10項目もあると多く感じるかもしれませんが、いずれも学校が公表または明示することとされている事項に対応しています。答えにくそうな質問が多い場合は、その学校の運用体制そのものを見直す材料になります。
その先の進路 — 海外大学進学を視野に入れるなら
POINT
通信制と留学の組み合わせを検討している家庭の多くは、その先に海外大学進学という選択肢を持っています。出願の観点から見ると、通信制であること自体は不利になりません。
海外大学の出願では、日本の高校の課程区分よりも、成績(GPA)・英語スコア・エッセイ・推薦状・課外活動といった要素が総合的に評価されます。通信制であることが直ちに評価を下げるわけではありません。むしろ、時間の使い方を自分で設計できる環境は、課外活動や語学の学習に時間を割きたい生徒にとって有利に働く場合があります。
ただし注意点もあります。推薦状を書いてもらう教員との関係を作りにくいこと、成績証明書の書式が全日制と異なる場合があることです。海外大学進学を視野に入れているなら、推薦状を誰に依頼できるかを高2の段階で確認しておくと、出願期に慌てずに済みます。準備の全体像は海外大学進学ガイドで高1からの逆算として整理しています。
また、高校留学そのものはゴールではなく進路の選択肢の1つです。高校の3年間を海外で過ごすのか、日本の通信制に籍を置いて一定期間だけ海外に出るのか、あるいは高校は日本で終えて大学から海外に出るのか。どれを選ぶにしても、費用と時期と単位の三つを同時に見ないと判断できません。全体像は高校留学ガイドからご覧ください。
まとめ:確認すべきは登校日数ではなく「免除の基準」
通信制高校が留学と相性がよいのは事実です。ただしその理由は「登校が少ないから」ではなく、学年による課程の修了認定という仕組みから外れているからです(学校教育法施行規則第101条第2項・第103条)。だから1年間留学しても原級留置が起きにくく、就学支援金の支給期間も48か月と全日制より12か月長い。ここが構造的な利点です。
一方で、留学しても消えないものがあります。卒業に必要な74単位、3年以上の在籍、特別活動30単位時間、そして試験です。面接指導はメディア学習で最大10分の8まで免除できますが、試験には免除規定がありません。パンフレットの「年4日」という数字は、この免除を上限まで使った場合の姿であって、誰にでも自動的に適用されるものではありません。
だから学校選びで確認すべきなのは、登校日数そのものではなく「海外滞在を理由とする免除の基準を、この学校は定めて明示しているか」です。学習指導要領解説は「特に必要がある場合」の例として海外での生活時間が長い場合を名指ししており、基準をあらかじめ定めて生徒や保護者に明示しておくことが望ましいとしています。留学は制度の想定内なのですから、堂々と尋ねてください。
最後に、順番を間違えないことです。留学先やプログラムより先に、どこに籍を置くかを決める。第93条第2項の単位認定は在籍校の校長の許可を前提にしているため、籍が決まらないと単位の話が始まりません。籍を決め、免除と試験の条件を書面で確認し、そのうえで留学の時期と期間を組む。この順番で進めれば、帰国後に「単位が足りない」と気づく事態は避けられます。
Q.通信制高校に在籍したまま海外の高校に通うと、二重に在籍することになりませんか?
学校教育法施行規則第93条第1項は「校長は、教育上有益と認めるときは、生徒が外国の高等学校に留学することを許可することができる」と定めています。つまり日本の高校に在籍したまま外国の高校に通う形は、制度が正面から想定しているものです。日本の高等学校2校に同時に在籍することはできませんが、外国の学校は日本の学校教育法の適用外なので、この点は問題になりません。ただし現地校の卒業資格まで取るには、その学校の卒業要件を別途満たす必要があります。
Q.「スクーリングは年4日」と書かれていれば、留学中は日本に帰らなくてよいのでしょうか?
年4日という数字は、メディア学習による面接指導の免除を上限近くまで使った場合の姿です(学習指導要領第1章総則第2款5(5)=通常10分の6、特に必要がある場合は合わせて10分の8まで)。免除は各教科・科目ごとに学校が判断するため、自動的に全員が年4日になるわけではありません。加えて試験には免除規定がないため、試験の実施方法によっては一時帰国が必要になります。留学の日程を決める前に、免除の基準と試験の受け方の2点を学校に確認してください。
Q.留学した1年分は、そのまま卒業単位になりますか?
いいえ。学校教育法施行規則第93条第2項は「三十六単位を超えない範囲で単位の修得を認定することができる」と定めています。卒業に必要なのは74単位以上(第96条第1項)ですから、留学だけで埋められるのは半分弱までです。しかも「できる」規定なので、実際に何単位認定するかは校長の判断によります。学校が過去に認定した最大単位数を確認しておくと、現実的な見通しが立ちます。
Q.全日制から通信制に移ってから留学する場合、これまでの単位はどうなりますか?
学校教育法施行規則第92条第2項は、全日制・定時制・通信制の課程相互の転学・転籍について「修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる」と定めています。すでに修得した単位は引き継ぎの対象になりますが、年度の途中で移った場合、その年度に履修中だった科目は単位になりません。また転入後に留学した場合の扱いは転入先の規程によるため、転入の相談時点で留学の予定を伝えて確認してください。
Q.留学中に取った英語の資格は単位になりますか?
学校教育法施行規則第98条第2号は「知識及び技能に関する審査で文部科学大臣が別に定めるものに係る学修」を科目の履修とみなして単位を与えることができると定めています。実務上、英語の資格試験などを単位化している学校がありますが、対象とする審査と単位数は学校の定めによります。なお第99条により、第97条(他校での履修)と第98条による単位の合計は36単位が上限です。これは第93条第2項の留学の36単位とは別枠です。
Q.留学で卒業が4年目にずれ込むと、就学支援金は打ち切られますか?
文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」(令和8年度)によると、高等学校通信制の支給期間は48か月です(全日制・中等教育学校後期課程は36か月)。したがって4年目に入っても制度上は支援の対象期間内に収まります。ただし単位制の場合は「通算74単位、年間30単位まで」という上限があるため、履修の仕方によっては支給の枠を先に使い切ることがあります。年度ごとに制度が改定されるため、最新の内容は文部科学省と在籍校で確認してください。
確認した条件を、家族で共有できる形にしておく
免除の基準・試験の受け方・認定単位数の上限は、学校ごとに答えが変わります。LINEで留学と進路の情報を受け取りながら、ご家庭で確認した内容を整理する材料にお使いください。







