このページの要点

不登校の高校生の留学は、行き先より先に「日本の高校の籍をどうするか」で結果が変わります。

  • 籍を残せるかが分岐点:学校教育法施行規則第93条第1項により、校長が「教育上有益と認めるとき」に留学を許可できます。この許可があれば、外国の高校での履修を36単位を超えない範囲で自校の単位として認定できます(同条第2項)。
  • 休学と留学は別:第93条第2項が単位認定の対象としているのは「留学することを許可された生徒」です。休学のまま渡航した場合、この条文を根拠にした認定は想定されていません(第94条は休学・退学に校長の許可が必要と定める規定で、休学中の扱いは各校の学則によります)。
  • 戻り先は3通り:在籍校に復学する/通信制課程に転籍して修得済みの単位を持ち越す(第92条第2項)/高等学校卒業程度認定試験を使う。出発前にどれを軸にするか決めておきます。

不登校の高校生が留学を検討するとき、情報の多くは行き先やプログラムの話に集中します。しかし実務上いちばん先に決めるべきなのは、日本の高校の籍をどうするかです。籍を残して校長の許可を受ければ、留学中の学びを単位にできる可能性があります。休学すればその枠組みは使えません。退学すれば戻り先を別に作る必要があります。しかもこの判断は、出発が近づくほど選択肢が減ります。この記事では、4つのルートの違い、単位と卒業の関係、原級留置と中退の実際の数字、そして在籍校への相談の進め方を、法令と公的データにもとづいて整理します。

結論:4つのルートと、それぞれで変わるもの

POINT

選択肢は「籍を残して留学」「休学して渡航」「通信制に転籍してから渡航」「退学して海外の高校へ」の4つ。単位認定の制度(第93条第2項)が使えるのは、校長から「留学の許可」を受けた場合だけです。①が典型で、③も転籍先の許可を受ければ同じ枠組みに乗り得ます。

まず全体像を押さえてください。同じ「留学」でも、日本側の手続きが違えば、留学中の学びが日本の高校の単位になるかどうかが変わります。次の表は、学校教育法施行規則の規定にもとづく整理です。

4つのルートと日本の高校での扱い

ルート必要な手続き留学中の学びの扱い卒業までの見通し
①籍を残して留学校長の許可(施行規則第93条第1項)外国の高校での履修を36単位を上限に認定できる(同第2項)認定されれば進級・卒業を続けられる。学年の途中でも修了・卒業を認められる場合がある(同第3項)
②休学して渡航校長の許可(同第94条)第93条第2項の対象は「留学を許可された生徒」。休学のままでは同項を根拠にした認定は想定されていない休学期間の扱いは学校の学則による。卒業時期が後ろにずれる場合がある
③通信制に転入学してから渡航転学(転入学)の手続き。転学先の校長の許可が必要(同第92条第1項)。修得単位に応じた学年への転入は同第2項転籍時に修得済みの単位が引き継ぎの対象になる。留学中の学びは、転籍先の校長の許可を受ければ第93条第2項の対象になり得る(可否は転籍先の規程による)自分のペースで単位を積み上げる形になる
④退学して海外の高校へ校長の許可(同第94条)日本の高校の単位は積み上がらない現地校の卒業要件を満たすか、高認で大学受験資格を得る

見落とされやすいのは①と②の違いです。どちらも籍は残りますが、第93条第2項が認定の対象としているのは「留学することを許可された生徒」です。休学のまま渡航しても、この条文を根拠に外国での学びを自校の単位とみなす道は用意されていません。「とりあえず休学して行ってきます」と決めてしまうと、後から単位認定を求めるのが難しくなります。

根拠:学校教育法施行規則第92条第2項、第93条第1項〜第3項、第94条。実際にどのルートを取れるか、認定を受けられるかは在籍校(校長)の判断であり、学校の規程によって運用が異なります。ここに書いたのは制度上の枠組みであり、個別の可否は必ず在籍校にご確認ください。

「校長の許可」という最初の関門

POINT

留学は届出ではなく許可制です。条文は「校長は、教育上有益と認めるときは、生徒が外国の高等学校に留学することを許可することができる」と定めています。つまり学校を説得する場面が必ずあります。

学校教育法施行規則第93条第1項の文言は、そのまま読むと重要な意味を持ちます。留学の許可は校長の裁量であり、判断基準は「教育上有益と認めるとき」です。不登校の状況にある生徒の場合、学校側が最初に確認したいのは、留学が学業の放棄ではなく学びの継続として設計されているかという点になります。

あわせて手元に置いておきたいのが、文部科学省の通知(令和元年10月25日・元文科初第698号)です。同通知は不登校児童生徒への支援について、「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す」という考え方を示しています。留学を主体的な進路選択の一部として説明できれば、「教育上有益と認めるとき」という条文の判断基準とも矛盾しません。

そのうえで保護者が用意すべきなのは、熱意ではなく資料です。学校が「教育上有益」と判断するために必要な材料を、こちらから揃えて持っていくほうが話が早く進みます。

  1. 1プログラムの内容:渡航先の学校名・種別(現地の高校か語学学校か)、期間、履修する科目、授業時数がわかる資料。現地校であれば、修了時に在籍・履修・成績の証明が発行されるかを確認して伝える
  2. 2期間と復学の時期:いつ出て、いつ戻るか。学年のどこにかかるかを学校暦と重ねて示す
  3. 3健康面の見通し:主治医がいる場合は、渡航について相談済みであることを伝える(診断書の要否は学校に確認する)
  4. 4単位認定の希望:認定を希望する旨と、認定の条件・必要書類を学校側に確認する。認定するかどうかは在籍校の判断なので、条件を先に聞いておく
  5. 5戻ってこられなかった場合の想定:途中で帰国した場合の扱いをあらかじめ相談する。ここを避けずに話しておくと、学校側の警戒が下がる

避けたい

現状の説明だけで終わり、留学期間に何をどう学ぶかの計画を示さない

こうすればOK

現状は率直に伝えたうえで、「この期間にこの科目をこう学ぶ計画です」とあわせて示す。条文の判断基準が「教育上有益と認めるとき」である以上、有益性を示す材料があるほど話が進みやすい

避けたい

出発直前に相談し、単位認定の条件を聞かないまま渡航する

こうすればOK

検討段階で担任・進路担当に相談し、認定の条件と必要書類(現地校が発行する在籍・履修・成績の証明)を先に確認する。書類の様式は現地校側の都合もあるため、早いほど間に合う

避けたい

単位認定が難しいと言われた時点で、留学そのものを諦める

こうすればOK

認定と卒業は別の話。通信制課程への転籍で単位を持ち越す道や、高等学校卒業程度認定試験を使う道がある。到達点(大学受験資格・卒業資格)から逆算して選び直す

単位と卒業の関係を正確に理解する

POINT

卒業に必要なのは74単位以上。留学で認定できるのは36単位まで。この2つの数字の関係を押さえると、「1年留学したら卒業がどうなるか」が自分で計算できます。

学校教育法施行規則第96条第1項は、校長が全課程の修了を認めるにあたっては、74単位以上を修得した者について行わなければならないと定めています。一方、第93条第2項は、留学を許可された生徒について外国の高校での履修を自校の履修とみなし、36単位を超えない範囲で単位の修得を認定できるとしています。

単位と卒業に関わる数字

項目数字根拠
卒業に必要な修得単位74単位以上学校教育法施行規則第96条第1項
留学で認定できる単位の上限36単位同第93条第2項(2010年4月に30単位から36単位へ拡大)
認定の可否在籍校(校長)の判断同第93条第2項(「認定することができる」という規定)
学年途中での修了・卒業認められる場合がある同第93条第3項

重要なのは、条文が「認定することができる」という書き方をしている点です。認定は自動ではなく、在籍校の判断です。判断材料になるのは、現地校が発行する在籍・履修・成績の証明です。したがって、留学先を選ぶ段階で「英文の成績証明が出るか」「履修科目と時数がわかる書類が出るか」を確認しておく必要があります。この確認を怠ると、帰国後に材料が揃わず認定を受けられない事態が起きます。単位認定の実務は高校留学と単位認定留学の単位認定と高校の対応でさらに詳しく扱っています。

また、第93条第3項は、単位の修得を認定された生徒について、学年の途中においても各学年の課程の修了または卒業を認めることができると定めています。留学の時期が学年の区切りとずれていても、制度上は救済の余地があるということです。これも在籍校の判断ですが、知らずに諦める必要はありません。

原級留置と中退の実際 — 数字で見る

POINT

不登校の生徒のうち、中途退学に至ったのは15.6%残る84.4%は退学に至っていません。原級留置(留年)は別に4.4%ですが、留年しても在籍は続きます(文部科学省 令和6年度調査)。

「このままだと留年か中退になる」という不安から留学を急ぐご家庭がありますが、実際の分布を見ておくと判断の温度が変わります。文部科学省の令和6年度調査によると、高等学校の不登校生徒67,782人のうち、中途退学に至った者は10,566人(15.6%)、原級留置になった者は2,963人(4.4%)でした。

高等学校全体の中途退学者は44,571人、中途退学率は1.4%です。理由の内訳は、進路変更が最も多く18,505人(41.5%)、次いで学校生活・学業不適応が15,618人(35.0%)、学業不振が2,814人(6.3%)でした。中退の最大の理由は「進路変更」であり、追い出される形ばかりではないという点は押さえておいてよい事実です。

高等学校の中途退学の主な理由(令和6年度)

理由人数割合
進路変更18,505人41.5%
学校生活・学業不適応15,618人35.0%
学業不振2,814人6.3%
病気・けが・死亡1,799人4.0%
問題行動等1,506人3.4%
家庭の事情1,306人2.9%
経済的理由549人1.2%
その他2,474人5.6%

この数字の使い方は2つあります。ひとつは、焦りの補正です。在籍を続けている生徒のほうが圧倒的に多く、いま出席日数が足りていないことがそのまま中退を意味するわけではありません。もうひとつは、留学の位置づけです。留学が「進路変更としての中退」に接続するなら、それは制度上ありふれた選択であり、後ろめたさを持つ必要はありません。留年そのものの考え方は高校留学と留年で扱っています。

出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(令和7年10月29日公表/令和8年1月16日一部修正)。割合は同資料の記載にもとづきます。数値は毎年更新されます。

海外側が求める書類と、記録が薄い場合の考え方

POINT

現地の高校に通う形では、日本での履修歴が受け入れ判断の材料になります。米国の交換留学では、スポンサー団体が全履修内容の英訳サマリーを受け入れ校に提供することが連邦規則で義務づけられています。

日本側の手続きと並行して、海外側の要件も確認が必要です。米国の交換留学(J-1)を規定する連邦規則 22 CFR 62.25 では、スポンサー団体は生徒を配置する前に受け入れ校から書面による承諾を得なければならず、あわせて生徒の全履修内容を英訳した書面のサマリーを学校に提供しなければならないとされています。参加者の要件としても、学業適性(scholastic aptitude)を示すことが求められます。

つまり、在籍と成績の記録が実質的な入場券になります。ここで「うちは記録が薄いから無理だ」と結論を急ぐ必要はありませんが、事実として選べる形が変わります。記録の状況別に、現実的な進め方を整理すると次のようになります。

記録の状況別・現実的な進め方

日本での記録の状況選びやすい形先に手をつけること
在籍が続き、評定も概ね出ている現地校への留学(1ターム〜1年)も検討できる在籍校に留学の許可と単位認定の条件を確認する
在籍は続いているが、評定が付いていない科目が多い短期プログラム、または通信制へ転籍して単位を作ってから通信制課程への転籍で修得済み単位を持ち越せるか確認する
在籍が途切れている/退学している語学学校中心の短期、または現地校への直接出願高等学校卒業程度認定試験で大学受験資格を確保する道を並行検討

あわせて確認しておきたいのが年齢と就学年数の要件です。米国の交換留学(J-1)を規定する 22 CFR 62.25(e)(1) は、参加者について「母国で初等・中等教育を11年を超えて修了していないこと」または「プログラム開始時点で15歳以上18歳6か月以下であること」と定めており、条文はこの2つを「or」で結んでいます。片方を満たさなくても、もう片方を満たせば条文上ただちに要件を欠くわけではありません。ただし原級留置や休学があると、渡航時の年齢と、就学年数の数え方(留年した年を「修了した年」に数えるか)の両方が動きます。条文はこの数え方までは定めていないため、参加資格をどう確認するかはスポンサー団体の運用によります。前章の原級留置・中退の話は、ここで海外側の要件とつながります。期間や費用より先に、学年・年齢・これまでの就学年数を伝えて参加資格を個別に確認してください。受け入れ校が独自の年齢・学年の上限を設けている場合もあります。

必要書類は国・州・学校・プログラムによって異なります。ここに書いたのは米国の交換留学の規定であり、私費留学や他国では要件が違います。「何を提出する必要があるか」を検討の初期に個別に確認する——これが最も効率のよい進め方です。留学が選択肢になるかどうかの判断全体は不登校からの留学は選択肢になるかで扱っています。

どの形の留学が現実的かを整理する

期間・滞在形態・必要な条件は、記録の状況によって変わります。検討の出発点を整理できます。

登校できない期間に、在籍校で単位を積む方法

POINT

学校教育法施行規則には、不登校の生徒を名指しした条文があります。第88条の4により、学校生活への適応が困難で相当の期間欠席すると認められる生徒に対して、高校は授業に代えて通信教育を行うことができるとされています。

留学の話に入る前に、押さえておきたい制度があります。「登校できない=単位が取れない」と考えて退学を急ぐご家庭は多いのですが、条文はそこまで狭くありません。第88条の4は次のように定めています。学校生活への適応が困難であるため相当の期間欠席し引き続き欠席すると認められる生徒、疾病による療養や障害のため相当の期間欠席すると認められる生徒などを対象として、教育上有益と認めるときは、授業に代えて通信教育を行うことができる——つまり、在籍したまま登校以外の方法で学ぶ道が制度として用意されています。

さらに、学校の外での学びを単位にできる規定もあります。第97条は他の高校で修得した単位の加算を、第98条は文部科学大臣が定める技能審査などに係る学修を単位とみなすことを、それぞれ校長が認められるとしています。第99条により、この2つを合わせた上限は36単位です。留学の36単位(第93条第2項)とは別枠なので、混同しないでください。

「登校以外」で単位につながりうる制度(いずれも校長の判断)

条文内容上限
第88条の4適応が困難で相当の期間欠席すると認められる生徒等に、授業に代えて通信教育を行うことができる条文上の単位数の定めなし
第93条第2項留学を許可された生徒の、外国の高校での履修を単位として認定36単位
第97条・第98条他の高校での修得単位の加算/技能審査等に係る学修の単位化合わせて36単位(第99条)
第100条第1号高等学校卒業程度認定試験で合格点を得た試験科目に係る学修を単位化(入学前のものを含む)条文上の単位数の定めなし

いずれも「校長は、教育上有益と認めるときは…できる」という書き方で、認めるかどうかは在籍校の判断です。ただ、選択肢として存在することを知っているかどうかで、学校との相談の内容はまったく変わります。「もう単位が取れないので退学するしかない」と言われたときに、これらを確認したかどうかを聞けるようにしておいてください。

根拠:学校教育法施行規則第88条の4、第93条第2項、第97条、第98条、第99条、第100条第1号。条文が定めているのは「校長が認められる」という枠組みであり、実際の運用(対象・手続き・認定される単位数)は学校ごとに異なります。個別の可否は必ず在籍校にご確認ください。

通信制課程への転入学という受け皿を先に用意する

POINT

別の学校の通信制課程に移ることは、正確には転学(転入学)です。学校教育法施行規則第92条第2項は「修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる」と定めています。すでに修得した単位は引き継ぎの対象になりますが、履修の途中で修得に至っていない科目は単位になりません。移る時期によって、残るものが変わります。

留学を考える段階で、通信制課程を「失敗したときの行き先」と捉えているご家庭は多いのですが、実務的にはむしろ先に用意しておく足場です。理由は3つあります。

  • 修得済みの単位が引き継ぎの対象になる:転学・転籍は修得した単位に応じて相当学年に転入できると定められている(第92条第2項)。ただし何単位を認めるかは転入先の判断で、年度の途中で移ると、その年度に履修中だった科目は単位にならない。移る時期を含めて転入先に確認する
  • 通学のペースを選べる:スクーリングの頻度は学校により大きく異なり、登校日数の負担を調整しやすい。渡航前後の期間を挟みやすい
  • 進路が狭まりにくくなってきている:文部科学省の学校基本調査をもとにしたリクルート進学総研の集計(2025年3月公表)では、通信制課程に在籍する高校生は2015年度の180,393人から2024年度は290,087人へ約1.6倍に増加し、通信制課程を設置する高校も231校(2014年)から303校(2024年)に増えた。卒業者の大学進学率も13.5%から21.2%へ上昇している

手続きの面では、転学先の校長の許可が必要で、在籍校が在学証明書などの書類を転学先へ送付します(第92条第1項)。同じ学校の中で課程を移る場合は「転籍」と呼びますが、別の通信制高校に移るなら「転入学」で探すと情報が見つかりやすくなります。なお、通信制課程に移ったあとに留学する場合、留学中の学びがどう扱われるかは転入先の規程による点に注意してください。全日制と同じように単位認定が受けられるとは限りません。転入学を検討する時点で、留学の予定があることを伝えて確認しておくのが確実です。通信制課程から留学する場合に固有の実務(面接指導の免除の上限、免除できない試験、就学支援金の支給期間48か月)は通信制高校で留学する方法で制度側から整理しています。

高認という選択肢の位置づけ

POINT

高等学校卒業程度認定試験は、文部科学省が年2回実施し、受験する年度の終わりまでに満16歳以上であれば受験できます。高校に在学中でも受験できる点が、留学と組み合わせるうえで重要です。

高認は「高校をやめた人が使うもの」と思われがちですが、実際には在学中でも受験できます。つまり、留学に出る前に一部の科目に合格しておく、あるいは留学中に進路が変わっても大学受験資格は確保しておく、という使い方ができます。合格すれば大学受験資格が得られます。

さらに重要なのが、高認の合格科目は、在籍している高校の単位になり得るという点です。学校教育法施行規則第100条第1号は、高等学校卒業程度認定試験で合格点を得た試験科目に係る学修を、校長が教育上有益と認めるときは在学する高校の科目の履修とみなし、単位を与えることができると定めています(入学する前に行ったものを含む)。欠席が続いて単位が取れず、74単位に届くかどうかが不安な場合、高認は「退学した後の代替手段」ではなく「在籍したまま単位を積む手段」にもなりうるということです。認めるかどうかは校長の判断なので、受験の前に在籍校へ確認してください。

注意点として、高認の合格は「高等学校卒業」そのものではありません。高卒の資格が要件になる場面では扱いが異なることがあります。また、出願時期・受験科目・免除の条件は年度によって変わるため、文部科学省の公式情報で必ず確認してください

卒業資格・受験資格の作り方の比較

方法得られるもの向いている状況
在籍校で卒業(留学の単位認定を活用)高等学校卒業籍が残っており、校長の許可と単位認定が見込める
通信制課程で卒業高等学校卒業自分のペースで単位を積み上げたい。修得済み単位を持ち越せる
現地校を卒業現地の高校の卒業資格日本の高校に戻らない前提。海外大学進学まで見据える場合
高等学校卒業程度認定試験大学受験資格在籍が途切れている、または進路を大学受験に絞る

どれを軸にするかは、最終的にどこへ進みたいかで決まります。日本の大学受験を見据えるなら高校留学と大学受験、海外の大学まで視野に入れるなら海外大学進学ガイドが判断の材料になります。高校留学はゴールではなく、進路の途中にある選択肢です。

戻ってきたときのことを、出発前に決めておく

POINT

途中帰国は珍しいことではありません。帰る場所を決めてから出すと、撤退が失敗ではなくなり、本人も限界まで我慢しなくなります。

学籍の話は、行くときだけでなく戻るときにも効いてきます。出発前に在籍校と確認しておきたいのは、次の3点です。

  1. 1途中帰国した場合の学籍の扱い:留学の許可を受けて出た場合、期間の途中で戻ったときに復学できるか、単位の扱いはどうなるかを確認する
  2. 2復学の時期と手続き:学年の途中で戻る場合の受け入れ方。第93条第3項は学年の途中でも課程の修了・卒業を認められる場合があると定めているが、運用は学校による
  3. 3授業料などの費用の扱い:留学中・休学中の授業料がどうなるかは学校の規程による。共通のルールがあるわけではないため、金額を含めて書面で確認する

そのうえで、家庭側でも「どうなったら帰るか」を状態の言葉で決めておいてください。「眠れない日が続いたら」「食事が摂れなくなったら」といった具体的な基準です。実際に本人から「帰りたい」と連絡が来たときの判断の順序は、高校留学で「帰りたい」と言われたらにまとめています。

まとめ

不登校の高校生が留学するときは、行き先より先に籍の扱いを決めてください。籍を残して校長の許可を受ければ、外国の高校での履修を36単位を上限に認定できます(学校教育法施行規則第93条第2項)。休学は籍を残す手続きですが単位認定の枠組みではなく、退学すれば戻り先を別に作る必要があります。卒業に必要なのは74単位以上で、留学で埋められるのは最大36単位。この関係を押さえると、自分の家庭で何年かかるかが計算できます。また、現地校に通う形では日本での履修歴が受け入れ判断の材料になるため、在籍と成績の記録が実質的な入場券になります。記録が薄い場合は、通信制課程への転籍で単位を持ち越すか、高等学校卒業程度認定試験で受験資格を確保する道を並行して検討してください。文部科学省の調査では、不登校の生徒のうち中途退学に至ったのは15.6%で、残る84.4%は退学に至っていません(原級留置の4.4%も、留年はしても在籍は続きます)。焦って選択肢を減らす前に、在籍校に条件を聞くところから始めてください。留学そのものが選択肢になるかどうかの判断は不登校からの留学は選択肢になるかで整理しています。

Q.不登校でも、高校に籍を置いたまま留学できますか?

制度上は可能です。学校教育法施行規則第93条第1項は「校長は、教育上有益と認めるときは、生徒が外国の高等学校に留学することを許可することができる」と定めており、許可を受ければ籍を残したまま留学できます。ただし許可は校長の判断です。出席状況だけで機械的に決まるものではないため、留学の計画(期間・履修科目・現地校が発行する証明)を資料にして、検討段階で担任・進路担当に相談してください。

Q.留学中の勉強は、日本の高校の単位になりますか?

校長の許可を受けて留学した場合、外国の高校での履修を自校の履修とみなし、36単位を超えない範囲で単位の修得を認定できます(同第93条第2項)。ただし条文は「認定することができる」という書き方であり、認定するかどうかは在籍校の判断です。判断材料は現地校が発行する在籍・履修・成績の証明なので、留学先を選ぶ段階で英文の証明書が発行されるかを確認しておいてください。

Q.休学して留学するのと、留学の許可を受けるのは何が違いますか?

単位認定の枠組みが使えるかどうかが違います。第93条第2項が認定の対象としているのは「留学することを許可された生徒」であり、休学のまま渡航した場合に同項を根拠として認定する道は用意されていません(第94条は休学・退学に校長の許可が必要と定める規定で、休学中の扱いそのものは各校の学則によります)。一方、留学の許可を受けた場合は36単位を上限とする単位認定の対象になり、単位を認定された生徒については学年の途中でも課程の修了・卒業を認められる場合があります(同第3項)。どちらになるかで卒業の時期が変わるため、渡航前に必ず確認してください。

Q.退学してしまった場合、もう留学はできませんか?

留学自体はできます。語学学校中心の短期プログラムであれば学力要件はほとんど問われません。ただし現地の高校に通う形では、日本での履修歴が受け入れの判断材料になります(米国の交換留学では、スポンサー団体が受け入れ校へ全履修内容の英訳サマリーを提出することが連邦規則で義務づけられています)。並行して、通信制課程への転入や高等学校卒業程度認定試験で受験資格を確保する道を検討しておくと、帰国後の進路が閉じません。

Q.通信制高校に移ると、これまでの単位はどうなりますか?

すでに修得した単位は引き継ぎの対象になります。学校教育法施行規則第92条第2項は、全日制・定時制・通信制の課程相互の間の転学・転籍について「修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる」と定めています。ただし何単位を認めるかは転入先の判断であり、年度の途中で転籍した場合、その年度に履修中だった科目は単位になりません。また、転籍したあとに留学した場合の扱いは転籍先の規程によります。移る時期と留学の予定の両方を伝えたうえで、転籍前に確認してください。

Q.高等学校卒業程度認定試験は、高校に在学中でも受けられますか?

受けられます。文部科学省が年2回実施しており、受験する年度の終わりまでに満16歳以上であれば、高等学校等に在籍している人も受験できます。留学に出る前に一部の科目に合格しておくといった使い方も可能です。ただし合格は「高等学校卒業」そのものではなく、大学受験資格が得られるものです。出願時期・受験科目・免除の条件は年度によって変わるため、文部科学省の公式情報でご確認ください。

学籍の選択肢を整理したいとき

籍を残すか、休学か、転籍か。決め方は到達点によって変わります。情報の整理にお使いください。