このページの要点
中学生の留学は「留学制度」ではなく就学義務の問題で、国外転出が1年以上か未満かで扱いが変わります。
- 中学校には「留学」も「休学」も規定がありません。 学校教育法施行規則第93条(留学)と第94条(休学)は高等学校の規定で、中学校への準用(第79条)に含まれていません。高校留学のように「留学扱いで単位認定」という枠組みは存在しません。
- 分かれ目は「1年」です。 文部科学省の就学事務Q&Aは、あらかじめ1年以上の国外転出と分かっている場合は転出届により住民票と学齢簿が消除され「学校からは除籍される」、1年未満と分かっている場合は在学関係を変更せず「指導要録上(長期)欠席の取扱いとすることが適当」としています。
- 日本の中学を卒業しなくても高校は受験できます。 学校教育法施行規則第95条は、外国で学校教育における9年の課程を修了した者など5つの類型を「中学校卒業者と同等以上の学力があると認められる者」としています。第5号は「その他高等学校において……認めた者」で、志望校の個別判断の道も残されています。
中学生の留学について書かれた記事の多くは、留学の種類・費用・国選びから始まります。しかし保護者が最初に決めなければならないのは、日本の中学校の籍をどうするかです。中学生は学齢生徒であり、保護者には就学義務がかかります。高校生の留学とは適用される条文がそもそも違い、「留学扱い」も「休学」も制度として存在しません。この記事では、学校教育法・同施行令・同施行規則の条文と、文部科学省「就学事務Q&A」の原文をもとに、出発前の手続き、帰国後の編入学年、そして高校の入学資格までを保護者の意思決定の順番で整理します。
結論:分かれ目は「国外転出が1年以上かどうか」
POINT
中学生の留学で最初に決めるのは行き先ではなく期間です。国外転出があらかじめ1年以上と分かっているかどうかで、住民票・学齢簿・中学校の籍のすべてが変わります。
文部科学省「就学事務Q&A」の第6項「学齢児童生徒が国外に転出した場合における学齢簿や学籍の取扱いについて」は、この扱いを2つに分けて示しています。原文を要約せずにそのまま押さえると、判断がぶれません。
国外転出の期間による扱いの違い(文部科学省「就学事務Q&A」6より)
| 項目 | あらかじめ1年未満と分かっている場合 | あらかじめ1年以上と分かっている場合 |
|---|---|---|
| 住民票 | 「国内に住所を有するものとして処理される」 | 転出届の提出により消除 |
| 学齢簿 | そのまま(変更不要) | 住民票の消除に伴い消除 |
| 中学校の籍 | 「引き続き当該児童生徒の在学関係を変更する必要はありません」 | 「学校からは除籍されることとなります」 |
| 指導要録 | 「(長期)欠席の取扱いとすることが適当」 | 除籍のため在籍記録は終了 |
| 帰国後 | 在籍していた学校に戻る | 教育委員会が学齢簿を編製し、就学すべき学校の指定・編入学期日を通知(同Q&A 7) |
同じQ&Aは、転出届を出さずに国外へ出た場合についても書いています。その場合は住民票が残るため学齢簿も残り、教育委員会は「可能な限り予め……国外転出の期間が1年以上であるか否かを確認し、1年以上の場合には子の転出届を出してもらうよう、促すことが適当」とされています。さらに期間が確認できない場合は「転出してから1年までは欠席として、1年を超えた場合には、居所が1年以上不明であるときと同様、在学しないものと同様に取り扱い」とあります。手続きをしないまま長期化するのが、いちばん扱いが不安定になる形だということです。
避けたい
留学先とプログラムを決めてから、日本の中学校に事後報告する
こうすればOK
期間を先に決めて、在籍中学校と市区町村教育委員会に相談する。1年未満か1年以上かで籍の扱いが変わるため、期間が決まらないと学校側も判断できない
避けたい
「1年くらい」と曖昧なまま出発し、現地で延長を決める
こうすればOK
延長の可能性がある場合はその旨も含めて事前に相談する。期間が確認できないまま1年を超えると、居所不明者と同様の取扱いに近づき、帰国後の手続きが重くなる
中学校には「留学」も「休学」も制度としてない
POINT
ここが高校留学との最大の違いです。高校には留学と休学の規定がありますが、中学校にはどちらもありません。制度用語をそのまま持ち込むと、学校との相談がかみ合いません。
学校教育法施行規則で、外国の高等学校への留学を定めているのは第93条です。第1項が「校長は、教育上有益と認めるときは、生徒が外国の高等学校に留学することを許可することができる」、第2項が「三十六単位を超えない範囲で単位の修得を認定することができる」。休学を定めているのは第94条「生徒が、休学又は退学をしようとするときは、校長の許可を受けなければならない」です。
この2条はいずれも第6章「高等学校」第2節「入学、退学、転学、留学、休学及び卒業等」に置かれた高等学校の規定です。そして中学校への準用を定めた第79条が挙げているのは「第41条から第49条まで、第50条第2項、第54条から第68条まで」であり、第93条も第94条も入っていません。
この読み方は、他の学校種と比べると裏づけが取れます。第113条第3項は第93条を中等教育学校の「後期課程」にのみ準用しており、前期課程(中学生に相当)には準用していません。また第176条は高等専門学校について「校長は、教育上有益と認めるときは、学生が外国の高等学校又は大学に留学することを許可することができる」と独自の留学規定を置いています。つまり立法者は学校種ごとに留学の規定を明示的に置いており、中学校には置いていないのです。
中学校と高等学校で、適用される制度がどう違うか
| 項目 | 中学校(義務教育段階) | 高等学校 |
|---|---|---|
| 「留学」の規定 | なし(第79条の準用に第93条は含まれない) | 第93条第1項(校長の許可) |
| 留学中の学びの単位認定 | なし(単位制ではない) | 第93条第2項(36単位を超えない範囲) |
| 「休学」の規定 | なし(第94条は準用されない) | 第94条(校長の許可) |
| 在学関係の根拠 | 保護者の就学義務+学齢簿(住民基本台帳に基づき編製・施行令第1条) | 生徒本人と学校の在学関係 |
| 中等教育学校の場合 | 前期課程には第93条は準用されない | 後期課程に準用(第113条第3項) |
実務上の意味は明確です。中学校に「留学させてください」と申し出ても、学校が使える制度がありません。相談すべきは「この期間の出席の取扱いをどうするか」「籍を残すか、いったん除籍になるか」です。高校留学の単位認定の仕組みは高校留学の単位はどうなる?で解説していますが、その枠組みは中学生には使えません。
上位の解説記事のなかには「日本の中学校を休学する場合には留年のリスク」と書いているものがありますが、中学校に休学の規定はありません。誤った前提で学校に相談すると話が進まないため、用語は「出席の取扱い」「籍を残せるか」に置き換えて相談してください。なお運用は自治体ごとに異なる部分があるため、最終的な判断は在籍中学校と市区町村教育委員会(学務課)にご確認ください。
住民票を抜くか残すか — 何が連動して動くのか
POINT
住民票の扱いは、単なる住所の届出ではありません。学齢簿の編製が住民基本台帳に基づくため、住民票の有無が就学義務の督促や在籍の扱いに直結します。
学校教育法施行令第1条第1項は、市町村の教育委員会が「当該市町村の区域内に住所を有する学齢児童及び学齢生徒」について学齢簿を編製しなければならないと定め、第2項で「学齢簿の編製は、当該市町村の住民基本台帳に基づいて行なうものとする」としています。住民票と学齢簿は連動しているということです。
住民票を残したまま長期の海外滞在に入ると、学齢簿も残ります。すると次の3つの条文が動き始めます。施行令第19条「校長は、常に、その学校に在学する学齢児童又は学齢生徒の出席状況を明らかにしておかなければならない」、第20条「休業日を除き引き続き七日間出席せず……その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、速やかに、その旨を……市町村の教育委員会に通知しなければならない」、第21条「市町村の教育委員会は……その保護者に対して、当該学齢児童又は学齢生徒の出席を督促しなければならない」。
つまり「正当な事由」があると学校に認識されているかどうかが、実務上の焦点になります。事前に相談し、海外の学校に就学することを伝えて記録に残しておけば、長期欠席として整理されます。何も言わずに出発すると、制度上は督促の対象になり得ます。ここが「まず学校と教育委員会に相談する」ことの実質的な理由です。
住民票を抜く場合と残す場合で連動して変わること
| 項目 | 国外転出届を出す(住民票を抜く) | 住民票を残す |
|---|---|---|
| 学齢簿 | 消除される(施行令第1条第2項) | 残る |
| 中学校の籍 | 除籍 | 在学関係は変更されない |
| 就学義務 | 「外国に居住する日本国民には適用されません」(Q&A 7) | 国内に住所を有する者として継続 |
| 出席の督促 | 対象外 | 「正当な事由」がないと認められれば通知・督促の対象(施行令第20条・第21条) |
| 帰国時の手続き | 転入届 → 教育委員会が学齢簿を編製 → 就学すべき学校の指定・編入学期日の通知 | 在籍校へ復帰 |
| その他の制度 | 国民健康保険など住民票に紐づく制度の扱いが変わる(市区町村の窓口で確認) | 継続 |
健康保険・各種手当・税など住民票に紐づく制度の扱いは市区町村や制度ごとに異なり、教育委員会の所管外です。本記事は学籍と就学義務に絞って整理しています。住民票を動かす前に、必ずお住まいの市区町村の窓口で個別にご確認ください。
帰国後の学年は「年齢相当」が原則
POINT
1年間海外にいたぶん学年が下がるのではないかという不安をよく聞きますが、文部科学省の整理は明確です。原則は年齢に応じた相当学年への編入です。
就学事務Q&Aの第7項「外国から帰国した学齢児童生徒の就学手続について」は、まず就学義務の性質を確認しています。「学校教育法第17条に規定された就学義務については、国内に居住する日本国民に対して課されているものであり、外国に居住する日本国民には適用されません」。そして「日本国民である学齢児童生徒が帰国した場合、その時点からその保護者には就学義務がかかる」としています。
編入学の学年については「原則として、その年齢に応じ、小学校、中学校又は義務教育学校の相当学年に編入学することになります」と明記されています。つまり中2の年度に1年間海外にいて帰国すれば、原則は中3に戻ります。例外として3つのパターンが示されています。
帰国後の編入学年(文部科学省「就学事務Q&A」7より)
| 扱い | 条件 | 指導要録上の扱い |
|---|---|---|
| 原則:年齢相当学年に編入 | 特別な事情がない場合 | 相当学年 |
| 就学義務の猶予 | 「義務教育の就学に必要な基礎条件を欠くと認められる程度に日本語の能力が欠如している場合」=学校教育法第18条の「やむを得ない事由」。ただし「日本語の教育を受ける等……措置が講ぜられている場合に限る」 | — |
| 一時的に下級学年へ編入 | 「日本語能力等の事情により、直ちに相当学年の教育を受けることが適切でないと認められるとき」。学校生活に適応した後、学年の中途で相当学年に戻すことが可能 | 学齢相当学年に編入したものとしておく必要がある |
| 指導要録上も下級学年へ | 「このような措置では十分ではないほどに日本語能力等が著しく欠如しているなどの特別な理由がある場合」。保護者や本人の意向を確認のうえで | 下級学年 |
注目すべきは、例外の条件がいずれも日本語能力に関するものだという点です。「1年間日本の授業を受けていないから」という理由だけで学年が下がる制度にはなっていません。日本語での学習を止めずに続けることが、帰国後の選択肢を守ることに直結します。なお同Q&Aは「重国籍者であっても日本の国籍を有する学齢児童生徒の保護者は、就学義務を負う」ことも注記しています。
どの形の留学が現実的かを整理する
期間・国・滞在方法の組み合わせで、必要な手続きも費用も変わります。いくつかの質問に答えるだけで、ご家庭の状況に近い留学のタイプを整理できます。
日本の中学を卒業しなくても、高校は受験できる
POINT
中3で留学を考える家庭の最大の不安がここです。高校の入学資格は「中学校を卒業した者」だけではなく、法令上5つの類型が用意されています。
学校教育法第57条は、高等学校に入学できる者を「中学校若しくはこれに準ずる学校……を卒業した者……又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者」としています。この後段を具体化しているのが学校教育法施行規則第95条で、次の5つの類型を挙げています。
「中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」(学校教育法施行規則第95条)
| 号 | 対象 | 中学生の留学との関係 |
|---|---|---|
| 第1号 | 外国において、学校教育における九年の課程を修了した者 | 海外の学校で9年の課程を終えれば、日本の中学を卒業していなくても受験資格が認められる。日本の中学を卒業しない場合の主な経路 |
| 第2号 | 文部科学大臣が中学校の課程と同等の課程を有するものとして認定した在外教育施設の当該課程を修了した者 | 現地の日本人学校などが対象。認定を受けている施設かどうかが要件 |
| 第3号 | 文部科学大臣の指定した者 | 告示で定められた類型 |
| 第4号 | 就学義務猶予免除者等の中学校卒業程度認定規則により、中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認定された者 | いわゆる中卒認定。就学義務の猶予・免除を受けた場合などの経路 |
| 第5号 | その他高等学校において、中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者 | 志望校の個別判断の道。第1〜4号のどれにも当てはまらない場合の受け皿になる |
実務で効くのは第1号と第5号です。第1号は「外国において、学校教育における九年の課程を修了した者」ですから、日本と海外を合わせて9年ではなく、外国での修了が要件である点に注意が必要です。学年の数え方は国によって異なるため、現地校が発行する修了・在籍の証明で何が証明されるのかを、渡航前に確認しておく価値があります。
第5号は「その他高等学校において……認めた者」という包括的な規定です。判断するのは受験する高校なので、志望校が決まっているなら早い段階で問い合わせるのが確実です。文部科学省の就学事務Q&Aも「国外への転出期間と国内における中学校の卒業時期が重なったり、日本の高等学校に進学するために海外から帰国したりする場合は、保護者や受験生は……どの資格をもとに受験・進学するか検討しておくことが望まれます」としています。
避けたい
「中学を卒業していないと高校を受験できない」と思い込み、中3の留学を諦める
こうすればOK
入学資格は5類型ある。とくに第1号(外国で9年の課程を修了)と第5号(志望校が個別に認定)を前提に、志望校の入試要項と受験資格の欄を確認する
避けたい
帰国してから受験資格を調べ始める
こうすればOK
渡航前に「どの号で受けるか」を決める。第1号なら現地校の修了証明が要るし、第5号なら志望校への事前照会が要る。必要な書類が変わる
避けたい
帰国生入試(帰国子女枠)があるから大丈夫と考える
こうすればOK
帰国子女枠は在外年数や帰国後の経過年数の要件があり、条件を満たさないこともある。一般入試での受験資格と両方を確認しておく。要件の考え方は帰国子女枠と高校留学を参照
中3で行く場合に、とくに重なる問題
POINT
中1・中2と中3では、同じ1年でも難易度が違います。中3は卒業の認定・調査書・受験期がすべて重なるためです。
学校教育法施行規則第57条は、第79条により中学校にも準用されます。「各学年の課程の修了又は卒業を認めるに当たつては、平素の成績を評価して、これを定めなければならない」。長期間在籍していれば評価の材料がありますが、年度の大半を海外で過ごすと、この評価の材料そのものが乏しくなります。籍を残す形(1年未満・長期欠席)を選んだ場合でも、卒業の認定がどうなるかは在籍校の判断になるということです。
もう1つが調査書です。日本の高校入試は調査書と学力検査等を資料として行われます(第90条)。海外にいた期間の学習の記録をどう扱うかは学校ごとに運用が分かれるため、帰国後に一般入試を受ける可能性があるなら、出発前に「調査書はどう作成されるか」を確認しておくのが確実です。
- 1卒業の認定:籍を残す場合、平素の成績の評価材料が乏しくなる。卒業を認めてもらえるかを在籍校に確認する(第57条・第79条)。
- 2調査書:一般入試を受けるなら、海外滞在期間をどう記載するかを確認する。
- 3受験資格:卒業できない見通しなら、第95条のどの号で受けるかを先に決める。
- 4受験期の物理的な制約:出願・受験のために帰国が必要になる時期と、現地校の学年暦が重ならないかを見る。
- 5戻り先の選択肢:全日制以外に、学年による課程の区分を設けない通信制課程という受け皿もある。先に用意しておくと判断が楽になる。
逆にいえば、中1・中2であればこれらの多くは回避できます。何年生で行くかの考え方は、高校生の場合について高校留学は何年生がベスト?でも整理していますが、中学生の場合は「受験期と重ねない」が最も強い判断軸になります。
費用の考え方 — 「中学生だから高い」のではない
POINT
中学生の留学が高くなりやすいのは年齢そのものではなく、受け入れ先が限られることと、未成年に固有の手続きが加わることが理由です。
高校生に比べ、中学生を受け入れる学校とプログラムは選択肢が少なくなります。選択肢が少なければ価格競争が働きにくく、私立校や寮のある学校が中心になりがちです。加えて、未成年の滞在にあたって現地の後見人(ガーディアン、カストディアン)の指定を求める国・州があり、その手配と費用が上乗せされます。「年齢が上がると安くなる」のではなく、「選択肢が増えると幅が広がる」という構造です。
金額はプログラム・国・学校によって大きく変わるため、この記事では具体的な数字を示しません。費用の内訳の考え方(プログラム費用と総額を分けて積み上げる方法、見落としやすい費目)は高校留学の費用にまとめていますので、構造だけ先に押さえたうえで、各校・各国の公式情報で実額を確認してください。ビザや後見人の要件は国ごとに異なり改定もあるため、渡航前に各国政府の公式情報で必ず確認が必要です。
避けたい
総額を見ずに「プログラム費用」だけで比較する
こうすればOK
プログラム費用と総額を分けて積み上げる。航空券・保険・後見人費用・ビザ関連費・現地での生活費まで含めて初めて比較できる
避けたい
費用から留学の可否を決める
こうすればOK
先に決めるのは期間と籍の扱い。ここが決まらないと、日本側で発生する費用(在籍を続ける場合の学校納付金など)も確定しない
総額の規模を先につかんでおく
国・期間・留学タイプ・滞在方法から費用の目安を試算できます(対応期間は1か月からです)。中学生向けの学校は選択肢が限られるぶん実額は上振れしやすいので、まず全体の規模感をつかむ目的でお使いください。
出発前に確認する10の質問
POINT
在籍中学校・市区町村教育委員会・志望校の3か所に分けて確認します。口頭で終わらせず、回答をメールなどの記録に残しておくことをおすすめします。
- 1【中学校】国外転出の期間が1年未満の場合、籍を残していただけますか。 指導要録上は(長期)欠席の取扱いになりますか。
- 2【中学校】海外の学校に就学することは「正当な事由」として記録していただけますか(学校教育法施行令第20条の通知の対象にならないか)。
- 3【中学校】帰国後はもとの学年に戻れますか。中3で渡航する場合、卒業の認定はどうなりますか(第57条の平素の成績の評価)。
- 4【中学校】一般入試を受ける可能性がある場合、調査書は海外滞在期間をどう記載して作成されますか。
- 5【教育委員会】1年以上の国外転出の場合、転出届の提出と学齢簿の消除の手続きはどう進めればよいですか。
- 6【教育委員会】帰国したときの転入届から就学すべき学校の指定・編入学期日の通知まで、どのくらいの期間がかかりますか。
- 7【教育委員会】編入学は年齢相当学年になりますか。下級学年への編入が検討されるのはどのような場合ですか。
- 8【志望高校】学校教育法施行規則第95条第1号(外国で9年の課程を修了)で受験資格が認められますか。 必要な証明書類は何ですか。
- 9【志望高校】第1号に当たらない場合、第95条第5号(高等学校が個別に同等以上の学力があると認める)での受験は可能ですか。
- 10【志望高校】帰国生入試(帰国子女枠)の在外年数・帰国後の経過年数の要件はどうなっていますか。一般入試との併願は可能ですか。
10項目のうち前半7つは制度の運用に関するもので、自治体・学校によって答えが変わります。後半3つは志望校次第です。この10問に答えが揃った時点で、留学の可否と時期はほぼ決まります。行き先や学校を比べるのは、そのあとで構いません。
その先の進路をどう見るか
POINT
中学生の留学は、それ自体がゴールではなく、高校と大学の選択肢をどう広げるかという話につながります。日本に戻る前提か、海外で続ける前提かで、準備の中身が変わります。
日本に戻って高校に進む前提なら、この記事で整理した受験資格と調査書の確認が中心になります。一方、そのまま海外の高校に進む前提なら、日本の中学の籍を残す意味は薄くなり、現地校の進級要件と学費の見通しのほうが重要になります。高校留学そのものの全体像は高校留学ガイドにまとめました。
さらにその先に、海外の大学に進学するという選択肢があります。海外大学の出願では、成績(GPA)・英語スコア・エッセイ・推薦状・課外活動が総合的に評価されるため、中学生の段階でできることは限られます。ただし「英語で学ぶことに慣れておく」「推薦状を書いてもらえる関係を作る」という点では、早い時期の海外経験が効いてくる場面があります。準備の全体像は海外大学進学ガイドで高1からの逆算として整理しています。
なお、学校に通いづらい状況をきっかけに海外を検討しているご家庭もあります。その場合は留学の可否そのものよりも先に見るべき論点があるため、不登校からの留学は選択肢になるかをあわせてご覧ください。
まとめ:行き先より先に、期間と籍を決める
中学生の留学でまず押さえるべきは、中学校には「留学」も「休学」も制度としてないという事実です。学校教育法施行規則第93条(留学)と第94条(休学)は高等学校の規定で、中学校への準用を定めた第79条には含まれていません。ですから相談の言葉も「留学扱いにしてください」ではなく「この期間の出席の取扱いと籍をどうするか」になります。
そのうえで分かれ目になるのが1年です。文部科学省の就学事務Q&Aは、あらかじめ1年以上と分かっている国外転出は転出届により住民票と学齢簿が消除され「学校からは除籍される」、1年未満と分かっている場合は在学関係を変更せず「指導要録上(長期)欠席の取扱いとすることが適当」としています。期間が決まらないと、学校も教育委員会も判断できません。
帰国後については、就学義務が「国内に居住する日本国民に対して課されている」ものである以上、帰国した時点から改めて手続きが始まります。編入学は原則として年齢相当学年で、下級学年への編入が検討されるのは日本語能力に関する事情がある場合に限られます。「1年遅れる」ことが既定路線ではありません。
そして高校の入学資格は「中学校の卒業」だけではありません。学校教育法施行規則第95条は5つの類型を定めており、とくに第1号(外国で9年の課程を修了)と第5号(志望校が個別に同等以上の学力があると認める)が実務で効きます。どの号で受験するかを渡航前に決めておくと、必要な証明書類が具体的になります。行き先やプログラムを比べるのは、期間と籍と受験資格の3つが決まってからで十分です。
Q.中学生でも「留学扱い」で単位を認定してもらえますか?
いいえ。単位の認定は高等学校の制度です。学校教育法施行規則第93条第2項が「外国の高等学校における履修を高等学校における履修とみなし、三十六単位を超えない範囲で単位の修得を認定することができる」と定めていますが、これは高等学校の規定で、中学校への準用を定めた第79条には含まれていません。中学校はそもそも単位制ではないため、留学中の学びを単位に換算するという仕組み自体がありません。相談すべきは「出席の取扱い」と「籍を残せるか」です。
Q.1年間の留学なら、住民票は抜くべきですか?
文部科学省の就学事務Q&Aは、あらかじめ1年以上の国外転出と分かっている場合は転出届の提出により住民票と学齢簿が消除され「学校からは除籍される」、1年未満と分かっている場合は「国内に住所を有するものとして処理される」ため在学関係を変更する必要はない、としています。ちょうど1年前後になる場合や延長の可能性がある場合は、市区町村の窓口と在籍中学校の両方に事前に相談してください。なお健康保険など住民票に紐づく他の制度の扱いは教育委員会の所管外です。
Q.帰国したら、1学年下がってしまいますか?
原則は下がりません。就学事務Q&Aは「原則として、その年齢に応じ……相当学年に編入学することになります」としています。例外として下級学年への編入が検討されるのは「義務教育の就学に必要な基礎条件を欠くと認められる程度に日本語の能力が欠如している場合」などに限られます。しかも一時的な措置の場合は「指導要録上は学齢相当学年に編入したものとしておく必要があります」とされています。海外にいる間も日本語での学習を続けることが、選択肢を守ることにつながります。
Q.日本の中学校を卒業しないと、日本の高校は受験できませんか?
受験できる道があります。学校教育法第57条は「中学校……を卒業した者」に加えて「これと同等以上の学力があると認められた者」にも入学資格を認めており、これを具体化した学校教育法施行規則第95条が5つの類型を定めています。第1号は「外国において、学校教育における九年の課程を修了した者」、第5号は「その他高等学校において、中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」です。第5号は志望校の個別判断なので、志望校が決まっているなら渡航前に問い合わせておくのが確実です。
Q.中3で1年間留学するのは無謀でしょうか?
無謀とまでは言えませんが、中1・中2より確認事項が増えます。中3は卒業の認定・調査書・受験期がすべて重なるためです。卒業の認定は「平素の成績を評価して」行われるため(学校教育法施行規則第57条・第79条により中学校に準用)、年度の大半を海外で過ごすと評価の材料が乏しくなります。渡航前に、①卒業の認定がどうなるか ②調査書はどう作成されるか ③第95条のどの号で受験するか の3点を確認してください。この3つに答えが出れば判断できます。
Q.学校に相談したら「前例がない」と言われました。どう進めればよいですか?
前例がないのは珍しいことではありません。制度としての「留学」が中学校にない以上、学校が参照できる手続きの型がないためです。有効なのは、文部科学省「就学事務Q&A」の第6項(国外転出時の学齢簿・学籍の取扱い)と第7項(帰国後の就学手続)を示したうえで、市区町村教育委員会の学務課に同席または照会してもらうことです。学齢簿を編製・管理しているのは教育委員会(学校教育法施行令第1条)なので、判断の主体はそちらにあります。
確認した内容を、家族で共有できる形にしておく
籍の扱い・卒業の認定・受験資格は、学校と自治体ごとに答えが変わります。LINEで留学と進路の情報を受け取りながら、ご家庭で確認した内容を整理する材料にお使いください。






