このページの要点

高校生の留学奨学金は、返済不要の給付型・返済のある貸与型・費用そのものを下げる仕組みの3層で設計します。

  • まず給付型:文部科学省のトビタテ!留学JAPAN(高校生等対象)は返済不要で、家計基準内なら奨学金は支給対象月1回分あたり12万円または16万円、留学準備金は21万円または35万円。成績・語学スコアは必須ではありません。
  • 最大の関門は金額ではなく学校:トビタテは在籍高校等を通した応募のみで、個人で応募申請することはできません。学校がオンラインシステムのアカウントを取得していないと出願自体が成立しません。
  • 足りない分は貸与と費用圧縮:国の教育ローンは3か月以上の海外留学で450万円以内。交換留学や費用の安い国を選べば、必要額そのものを下げられます。

高校生の留学で使える奨学金は、大学生向けほど数は多くありませんが、返済不要のものが確実に存在します。ただし、まとめ記事の一覧を眺めても家計の見通しは立ちません。理由は、金額が「目安」で止まっていること、そして最も重要な「どこに、誰が、いつ申し込むのか」が書かれていないことです。高校生の奨学金は、その多くが在籍する高校を通して申し込む仕組みになっており、保護者が最初にすべきことは書類集めではなく学校への相談です。この記事では、制度の全体像を3層に整理し、実際の支給額、申込みの順番、そして給付で足りない分の埋め方まで通しで扱います。

本記事の金額・要件は、文部科学省・独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム(高校生等対象)第11期=2026年度」募集要項、文部科学省・JASSO「留学奨学金検索」、日本政策金融公庫の公開資料にもとづきます(2026年7月時点)。募集時期・金額・要件は期ごとに改定され、自治体の制度は年度で変わります。応募時は必ず各制度の最新の募集要項でご確認ください。

高校生の留学奨学金は「3層」で設計する

POINT

奨学金探しは、制度名を集める作業ではありません。①返済不要でもらう ②返済ありで借りる ③必要額そのものを下げる——この3層のどこで足りない分を埋めるかを決める作業です。

高校留学の費用は、交換留学で参加費が概ね190〜250万円、私費留学なら年間200〜600万円(費用を抑えやすい国の公立で150〜320万円、欧米の私立・ボーディングで500〜1,000万円)が目安になります(詳細は高校留学の費用ガイド)。この金額を1つの奨学金で埋めることはできません。実際の家庭が組んでいるのは、給付型で数十万〜200万円弱を確保し、費用の安い形態を選んで総額を圧縮し、それでも足りない分を貸与で補う——という組み合わせです。

高校生の留学資金の3層と主な制度

主な制度金額の目安返済申込みの窓口
①給付(公的)トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム(高校生等対象)奨学金は月1回分あたり12万円/16万円(家計基準内)、留学準備金21万円/35万円不要在籍高校等を通じて(個人応募不可)
①給付(公的)社会総がかりで行う高校生国際交流促進事業(国費高校生留学促進事業)の留学支援金1人6万円(令和8年度予算・事業規模1,700人)。対象は原則10日以上1か月未満の短期派遣不要在籍高校等・都道府県を通じて(トビタテとは併給できない)
①給付(団体・企業)三菱商事高校生海外留学奨学金、AFSボランティア奨学金など参加費全額または50万円など制度ごとに固定不要留学団体(AFS等)の選考と一体で応募
①給付(自治体)都道府県・市区町村の留学支援、東京都「次世代リーダー育成道場」など制度により数十万円〜派遣費用の大部分不要自治体の教育委員会・在籍校
②貸与日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」修業年限3か月以上の学校に留学する場合450万円以内必要(最長20年)保護者が公庫へ直接申込み
②貸与(ひとり親)母子父子寡婦福祉資金(自治体)自治体ごとに設定必要(低利・無利子の設定あり)自治体の福祉窓口。海外の高校が対象になるかは自治体ごとに異なるため、まず窓口で確認
③費用を下げる交換留学を選ぶ/費用の安い国を選ぶ/期間を調整する総額で100万円単位の差留学形態・派遣先の選択

順番が重要です。③で必要額を下げてから①で給付を積み、最後に②で埋める。この順で考えると、借入額を最小にできます。逆に、私費留学の見積りを取ってから奨学金を探し始めると、給付では到底届かず、結局借入が膨らみます。ひとり親家庭の場合の組み立て方は母子家庭からの高校留学で具体的に整理しています。

最初に確認するのは金額ではなく「学校が動けるか」

POINT

高校生の給付型奨学金は、在籍高校を経由する仕組みが中心です。トビタテ!留学JAPANの募集要項には「個人で応募申請することはできません」と明記されています。学校が動かなければ、書類を完璧に用意しても応募は成立しません。

ここが大学生の奨学金と決定的に違う点であり、多くのまとめ記事が触れていない部分です。トビタテ(高校生等対象・第11期)では、応募申請はオンラインシステムで行いますが、まず在籍高校等がアカウントを取得する必要があります。そのうえで生徒が学校に計画を提出し、学校が内容を確認して機構へ申請します。応募から採用後の全手続きが学校経由です。

さらに、学校側にも満たすべき要件があります。第11期の募集要項では、在籍高校等は次の3つの体制を持つことが条件とされています。

  1. 1学修活動状況を適切に管理する体制:留学中の生徒の学びの状況を把握できること
  2. 2危機管理体制:文部科学省が定める「高等学校等における海外留学に関する危機管理ガイドライン」に記載の事項に対応でき、機構・生徒・保護者と連絡が取れること
  3. 3事務手続きを行う体制:制度の事務手続きを遅滞なく行えること

つまり、学校にとっても手間と責任が生じます。留学に前向きな学校であれば話は早いのですが、前例がない学校では「そこまでは対応できない」と難色を示されることもあります。だからこそ、保護者が最初にすべきことは奨学金の比較ではなく、担任・進路指導・国際交流担当への相談です。

校内の締切は、機構の締切より前に来る(トビタテ第11期の例)

手続き第一日程(新高校2・3年生/新高校1年生)第二日程(新高校1年生)
応募者から在籍高校等への提出各高校が指定する期間(学校ごとに異なる)各高校が指定する期間
在籍高校等のアカウント申請期限2026年1月16日2026年4月15日
在籍高校等から機構への応募申請期限2026年1月22日2026年4月21日

注目すべきは、学校のアカウント申請期限が応募期限より前に設定されていることです。校内の提出期限はさらに前です。「募集開始のニュースを見てから動く」のでは、学校側の準備期間が確保できません。留学を考え始めた時点で学校に一報を入れておく——これが実務上いちばん効く準備です。

第11期(2026年度)の応募は終了しています。上記の日程は「校内締切が機構の締切より前に来る」構造を示す実例として挙げたものです。次の期の日程・要件は改定される可能性があるため、必ず公式サイトの最新の募集要項と、在籍校の担当者にご確認ください。

トビタテ!留学JAPANで実際にいくら受け取れるか

POINT

支給額は「留学先の地域」×「家計基準」×「留学した日数」で決まります。第11期の実例では、家計基準内・北米へ1年間なら奨学金192万円+留学準備金35万円。成績・語学試験のスコアは応募要件ではありません

トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム(高校生等対象)は、文部科学省が民間の寄附を原資に実施する給付型(返済不要)の制度です。第11期の支援予定人数は高校生等700名で、STEAM探究160名・スポーツ・芸術探究140名・マイ好奇心探究250名・社会課題探究150名という4コース構成でした。留学のテーマ・行き先・期間を自分で計画して応募する形式で、探究活動を含む計画であることが求められます。

支給額は、家計基準内なら支給対象月1回分あたり16万円(北米・シンガポール・欧州・中近東=地域区分①)または12万円(アジア〈シンガポールを除く〉・大洋州・中南米・アフリカ等=地域区分②)、家計基準を超える場合は一律6万円です(地域区分に含まれる国の詳細はトビタテ!留学JAPAN 高校生ガイドの月額表をご覧ください)。

この「月額」はカレンダー上の月数ではなく、留学期間の日数から算出した支給対象月数に応じて支給されます。14日で1回分、32日で2回分——と階段状に増え、342〜365日で12回分が上限です。したがって支給総額は次のようになります。

留学期間ごとの奨学金支給総額(トビタテ第11期)

留学期間(活動期間)支給対象月数家計基準内・区分①家計基準内・区分②家計基準外
14日〜31日1回分160,000円120,000円60,000円
63日〜93日3回分480,000円360,000円180,000円
125日〜155日5回分800,000円600,000円300,000円
187日〜217日7回分1,120,000円840,000円420,000円
280日〜310日10回分1,600,000円1,200,000円600,000円
342日〜365日12回分1,920,000円1,440,000円720,000円

これに加えて、事前・事後研修の参加費や往復渡航費、査証取得や予防接種などに充てる留学準備金が支給されます。第11期はアジア地域15万円・その他の地域25万円で、円安と物価高騰を踏まえてアジアは6万円、その他は10万円が増額され、実際の支給額はアジア21万円・その他35万円でした。

家計基準は、JASSOの国内貸与奨学金「第二種奨学金(予約採用)」の家計基準に沿って判定され、判定は在籍高校が専用ツールで行います。基準を超えていても応募自体は可能ですが、募集要項では家計基準外の採用は支援予定人数全体の1割程度とされています。つまり、所得が高い家庭でも応募はできるものの、支給額は月6万円相当に下がり、採用枠も限られるという設計です。

もう一つ、上の表を読むうえで欠かせない前提があります。第11期では、留学期間が125日以上の「ロング」の計画は支援予定人数全体のうち20人程度の採用予定とされていました。つまり表の下半分(187日以上=7回分以上)は、700名の枠のうちおよそ20名しか通らない領域です。1年間の留学資金をトビタテで賄う計画は、制度上は可能でも実務上は成立しにくいと考えてください。1年を狙うなら、主軸は次章の留学団体系の奨学金や自治体の派遣プログラムに置くのが現実的です。

入金のタイミングも押さえておく必要があります。留学期間が124日以下の場合、奨学金は留学終了後に申請して総額が一括で振り込まれます(125日以上は毎月申請・翌月送金)。渡航前に受け取れるのは留学準備金だけなので、航空券・プログラム費用・保険料は家庭の資金で立て替える前提で手元資金を確保してください。コース構成・選考・採用後の義務まで含めた制度の詳細はトビタテ!留学JAPAN 高校生ガイド、採用可能性の見立てはトビタテの倍率と採用の実態で扱っています。

奨学金を引いた「実質いくら必要か」を出す

総額から給付見込みを差し引かないと、借入の要否は判断できません。費用の全体像を試算してから制度を選びましょう。

留学団体の奨学金は「プログラムの選考と一体」で動く

POINT

交換留学の派遣団体には、企業や寄附を原資とする給付型奨学金が用意されています。特徴は、留学プログラムの選考と奨学金審査が同じ流れで進むこと。プログラムに応募しなければ、そもそも奨学金の対象になりません。

代表例が、文部科学省・JASSOの「留学奨学金検索」にも掲載されている三菱商事高校生海外留学奨学金です。AFS年間派遣プログラムに応募予定の生徒を対象に50名を採用し、派遣先国に応じたAFSプログラム参加費の全額を支給します。参加費そのものが百万円単位であることを踏まえると、給付型としては最大級です(参加費の金額は派遣先国とプログラムによって異なるため、AFSの公表資料で確認してください)。同じくAFS向けのAFSボランティア奨学金は3名・50万円の支給とされています。

留学団体系の給付型奨学金の例(文科省・JASSO「留学奨学金検索」掲載内容)

制度対象支給内容人数
三菱商事高校生海外留学奨学金AFS年間派遣プログラムに応募予定で、学業・人物とも優秀、経済的に本奨学金がなければ留学が困難な者派遣先国に応じたAFSプログラム参加費の全額(選考手数料・パスポート/査証取得費・国内交通費は自己負担)50名
AFSボランティア奨学金AFS年間派遣プログラムに応募予定で、経済的必要度の高い者AFSプログラム参加費の一部として50万円3名

ここで押さえておきたいのは、給付されるのが「プログラム参加費」であり、その外側の費用は自己負担として残るという点です。三菱商事の制度でも、選考手数料・パスポートと査証の取得費・国内交通費は個人負担と明記されています。交換留学で参加費に含まれない費用の内訳は交換留学の費用にまとめました。なお、ロータリークラブの青少年交換のように、学費・滞在費・食費が免除され渡航費や保険料などの実費負担で参加できるとされる枠組みもあり、これも実質的な支援として機能します(条件は地区によって異なるため、居住地の地区に確認してください)。

団体系を狙う場合の実務上のポイントは、プログラムの応募スケジュールが奨学金の締切を決めることです。三菱商事高校生海外留学奨学金の2026年度募集はA日程が4月上旬〜5月下旬、B日程が6月中旬〜7月中旬で、いずれも翌年出発の派遣に向けたものでした。渡航の1年前から動くのが前提になります。

この団体系こそが、いわゆる「民間の奨学金」の主流です。文部科学省・JASSOの留学奨学金検索で「日本の高校在学中の留学」に該当する34件を数えると、国・自治体以外の22件のうち17件が留学団体を窓口としていました(当サイト集計・2026年8月時点)。全国から狙える枠と地域限定の枠の違い、「参加費全額」でも残る自己負担、そして民間特有の締切カレンダーは民間の留学奨学金の探し方に詳しくまとめています。

自治体の支援は「一覧」ではなく「探し方」で当てる

POINT

自治体の留学支援は、住んでいる場所と在籍校で使えるかどうかが決まります。制度は年度で新設・終了するため、他サイトの一覧を信じるより、公式の検索と窓口で自分の条件を確かめるのが確実です。

自治体の制度には大きく2種類あります。1つは奨学金として費用の一部を給付するもの、もう1つは自治体自身が派遣プログラムを持つものです。後者の代表が東京都の「次世代リーダー育成道場」で、都立高校生等を対象に約11か月の留学を支援し、事前研修は月2回程度・主に日曜日にゼミナール研究やリーダーシップ研修、日本の近現代史、伝統文化体験などを行うと公表されています。注意したいのは、これも無償ではないことです。令和8年度(第15期)の募集案内では、Aコース(オーストラリア・ニュージーランド)とBコース(アメリカ・カナダ)各75人以内・計150人以内の募集に対し、受講料80万円の納付が求められ、加えて受講料以外の諸経費等として70万円程度が自己負担(事前研修に要する交通費を除く。パスポート取得費・ビザ申請関連費・保険・制服・教材等)と明記されています。合計で約150万円の自己負担です。ただし経済的な理由により納付が困難な場合や多子世帯には受講料の減免制度があります。私費留学(年間200〜600万円)と比べれば大幅に安い一方、「自治体の派遣だから費用はかからない」わけではありません。金額・人数・応募資格は年度ごとに変わるため、検討時点の募集案内で確認してください。

探し方は次の順番が効率的です。

  1. 1文部科学省・JASSOの「留学奨学金検索」で絞り込む:カテゴリで「日本の高校在学中の留学」「海外の高校への進学」を選べば高校生向けに限定できます。支援スタイル(給付型/貸与型)、国・地域、募集期間、さらに「成績スコアが必須でない」「語学試験スコアが必須でない」といった条件でも検索でき、掲載件数は条件により変動しますが142件規模のデータベースです
  2. 2都道府県の教育委員会と国際交流協会のサイトを見る:「◯◯県 高校生 留学 支援」で検索し、必ず自治体の公式ページで要項を確認します
  3. 3市区町村の広報・教育委員会も確認する:都道府県より小さい単位で独自の派遣制度や補助金を持っている場合があります
  4. 4在籍校に聞く:自治体の制度は学校を通じて周知されることが多く、校内締切が設定されている場合もあります

自治体の支援は、実は①国が全都道府県に配る国費(原則10日以上1か月未満の派遣に1人6万円)②都道府県独自の制度 ③市区町村・国際交流協会などの制度という3つの層でできており、原資も窓口も締切も別です。JASSOが47都道府県に実施した調査の原典から、支援の型(旅費限定・定額給付・実費按分・県費派遣)、期間別の実額、県が自ら回答した応募実績(10倍を超える制度と定員割れの制度が同居しています)、在住/在籍要件の読み方までを自治体の高校生留学支援の探し方に詳しくまとめました。

自治体の制度は「在住要件」「在籍校の要件(都立・県立に限るなど)」「学年」「使途の限定」が細かく決められています。金額だけを見て期待値を上げず、まず対象になるかを確認してください。募集終了後に情報が残っているまとめ記事も多いため、必ず自治体の公式ページで年度を確認することをおすすめします。

給付で足りない分をどう埋めるか

POINT

給付型で全額は賄えません。差額の埋め方は、費用そのものを下げる → 公的な貸与で借りるの順で検討します。借入は最後の手段ですが、条件を知っておくと計画が立てやすくなります。

公的な借入の中心は、日本政策金融公庫の「教育一般貸付(国の教育ローン)」です。海外留学の場合、外国の教育施設に3か月以上留学するなら融資限度額は子ども1人につき450万円以内(それ以外は350万円以内)で、返済期間は最長20年(据置期間は在学期間内)。対象は修業年限3か月以上の教育施設で、中学校卒業以上が条件です。申込みは原則として保護者が行い、世帯年収の上限は扶養する子ども1人で790万円以内、2人890万円以内、3人990万円以内(所得ではそれぞれ600万円・690万円・790万円以内)。ただし海外留学資金の場合は上限を超えるときの特例があり、子ども1人または2人でも世帯年収990万円以内(所得790万円以内)まで利用できるとされています。

「3か月以上」という要件は平成31年度の制度改正で6か月以上から緩和されたもので、1学期分の留学でも対象になり得ます。逆に、2週間や1か月の短期留学は対象外です。短期の費用感は高校生の短期留学の費用で確認してください。金利や必要書類は改定されるため、申込前に公庫の公式情報でご確認ください。

差額を埋める手段の比較

手段使いどころ留意点
交換留学に切り替える総額を大きく下げたいとき(参加費に授業料・滞在費が原則含まれる)国・学校を自分で選べる範囲が狭くなる
費用の安い国を選ぶ英語圏にこだわらず総額を下げたいとき進学先や単位認定との相性を先に確認する
期間を短くする資金が足りず断念しそうなとき3か月未満は国の教育ローンの対象外。単位認定にも影響
国の教育ローン給付・貯蓄で足りない差額を埋めるとき修業年限3か月以上の学校が条件。返済は保護者の家計から(最長20年)
母子父子寡婦福祉資金ひとり親家庭で、給付を積んでも足りないとき貸付=要返済。対象校は学校教育法上の学校が基準で、海外の高校が対象になるかは自治体ごとに異なる。先に窓口で確認する

費用の安い国という選択肢については高校留学の費用が安い国で比較しています。また、高校留学に資金を使い切ってしまうと、その先の進路の選択肢が狭まります。海外の大学まで視野に入れているご家庭は、大学進学時に使える奨学金の規模(給付型で学費・生活費をカバーする制度があります)も踏まえて配分を考えてください。海外大学進学の奨学金で整理しています。

併給・併願で失点しないためのルール

POINT

「複数の奨学金に出しておけば安心」とは限りません。制度には併給の上限や併願の制限、再応募の可否が定められており、知らずに進めると採用後に調整が必要になります。

トビタテ第11期の要件では、留学中のインターンシップ等の報酬や他団体からの給付型奨学金を受ける場合、その総額が本制度による奨学金の総額(留学準備金は含まない)を超えないことが条件とされていました。さらに、相手方の団体が併給を認めているかを確認する必要もあります。つまり、参加費全額が出る団体奨学金と公的な給付型を単純に重ねられるわけではありません。

上限とは別に、明確な併給禁止が1つあります。文部科学省の「社会総がかりで行う高校生国際交流促進事業(国費高校生留学促進事業)」の留学支援金は、トビタテとの併給ができないと要件に明記されています。どちらも公的な給付型なので「両方申し込んでおく」と考えがちですが、ここは択一です。ただし国費高校生留学促進事業は原則10日以上1か月未満の短期派遣が対象で1人6万円(令和8年度予算・事業規模1,700人)なので、実際に迷う場面は短期留学に限られます。もう一つ、計画そのものの要件として「語学学習のみを行う計画は支援の対象外」(語学学習が留学全体の準備過程または補助的な位置づけとして計画の一部に含まれる場合は対象)とされている点も、応募前に押さえておいてください。夏休みの語学研修をそのまま出しても通らない、ということです。

避けたい

とりあえず応募できる制度すべてに出し、採用されたら考える

こうすればOK

併給の可否と上限を先に確認する。トビタテでは他団体の給付型との合計に上限があり、相手側の併給可否も確認が必要とされている

避けたい

地域の枠と全国枠の両方に出しておく

こうすればOK

併願制限の有無を各募集要項で確認する。トビタテには各都道府県が実施する「拠点形成支援事業」のプログラムがあり、本制度との併願の可否は各プログラムの要項で確認するよう案内されている。また第一日程と第二日程の両方に応募することはできない

避けたい

今年ダメでも来年また同じ制度に応募すればよいと考える

こうすればOK

再応募の条件を確認する。トビタテでは過去に派遣留学生として採用された者は応募できない(本人の責によらず留学開始前に辞退した場合を除く)とされており、学年が上がると応募できる日程も変わる

避けたい

採用されたら金銭的な負担はもう発生しないと考える

こうすればOK

自己負担が残る前提で組む。トビタテの面接審査は対面で、会場は機構が指定し交通費は応募者の自己負担。事前研修(半日)と事後研修(1日)は参加必須で、参加できる前提で計画する

この「採用後にも自己負担と義務が残る」点は見落とされがちです。返済不要という言葉から、費用も手間もゼロになる印象を持ってしまいますが、実際には研修への参加、報告、そして計画どおりに活動したことの証明が求められます。給付型で実際にいくら残るのかという計算は返済不要の留学奨学金の実質負担で詳しく扱っています。

逆算スケジュールと、保護者の動き方

POINT

高校生の奨学金は渡航の約1年前から動くのが標準です。学校の体制確認、校内締切、面接、研修が順に並ぶため、資金の目処より先にスケジュールを押さえてください。

1年間の留学を想定した逆算(トビタテ第11期の日程を例に)

時期家庭でやること学校・制度側の動き
渡航の1年〜1年半前留学の希望を学校に伝える。奨学金を使いたい意向も同時に伝える学校が対応可否・体制を検討
渡航の約1年前(12月ごろ)計画書の準備(テーマ・行き先・受入先の候補)。家計基準の確認資料を用意機構への応募申請が開始。学校がアカウントを申請
1月(校内締切→機構締切)校内の締切に間に合わせて提出。締切後は差替え・訂正ができない学校が内容を確認し機構へ申請(第11期は1月22日)
3月面接会場までの交通手段を手配(交通費は自己負担)書面審査の結果通知、対面での面接審査
4〜5月採否を受けて資金計画を確定。不採用なら団体・自治体系や貸与に切り替え採否結果の通知
6月事前研修に参加(必須)事前研修・壮行会
7月以降渡航。帰国後は事後研修(必須)に参加留学開始(第11期は7月10日〜翌3月31日の間に開始)

保護者の役割は、計画書を代筆することではありません。学校との接点をつくること、家計の資料を整えること、そして不採用だった場合の代替案を先に決めておくことです。とくに3つ目が重要で、「奨学金が取れたら行く」という条件付きの計画は、採否が出る4〜5月まで留学の準備を止めてしまいます。給付が取れなかった場合に、期間を短くするのか、費用の安い国に変えるのか、貸与を使うのか——この分岐を先に決めておけば、結果が出た日から動けます。

留学そのものの制度や進め方の全体像は高校留学の基礎ガイドをご覧ください。

まとめ

高校生の留学奨学金は、返済不要の給付型・返済のある貸与型・費用そのものを下げる仕組みの3層で設計します。給付の中心は文部科学省のトビタテ!留学JAPAN(高校生等対象)で、第11期では家計基準内なら支給対象月1回分あたり12万円または16万円、留学準備金は21万円または35万円が支給されました。成績・語学スコアは応募要件ではありませんが、応募は在籍高校を通す仕組みで、個人では出願できません。したがって最初の一手は制度の比較ではなく学校への相談です。留学団体系の奨学金はプログラムの選考と一体で動き、自治体の制度は在住要件と年度に左右されるため公式の検索と窓口で確認します。それでも足りない分は、費用の安い形態への切り替えと、3か月以上の留学で450万円以内まで借りられる国の教育ローンで埋める。この順番で組めば、借入を最小にしながら現実的な資金計画が立てられます。

Q.高校生でも返済不要の奨学金は本当にありますか?

あります。文部科学省のトビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム(高校生等対象)は給付型(返済不要)で、第11期は高校生等700名の支援が予定されていました。ほかに、AFS年間派遣プログラム向けの三菱商事高校生海外留学奨学金(50名・参加費全額)やAFSボランティア奨学金(3名・50万円)など、留学団体経由の給付型もあります。自治体独自の給付制度もありますが、在住要件や在籍校の条件が付きます。

Q.成績が良くないと奨学金は無理でしょうか?

制度によります。トビタテ!留学JAPANは成績や語学試験スコアを応募の必須要件としておらず、探究の計画そのものが評価されます。文部科学省・JASSOの「留学奨学金検索」では「成績スコアが必須でない」「語学試験スコアが必須でない」という条件で絞り込めるので、まずそこで候補を出すのが効率的です。一方、団体系の奨学金は「学業・人物とも優秀」という要件を掲げるものもあります。

Q.奨学金の申込みは家庭から直接できますか?

トビタテ!留学JAPAN(高校生等対象)は在籍高校等を通した応募のみで、個人で応募申請することはできません。学校がオンラインシステムのアカウントを取得し、生徒の計画を確認して機構へ申請します。学校側にも危機管理体制などの要件があるため、まず担任や進路指導・国際交流の担当に相談してください。自治体の制度も学校経由で周知・受付されることが多いです。

Q.奨学金だけで留学費用は足りますか?

足りないのが前提です。たとえば1年間・北米・家計基準内でトビタテに採用された場合、奨学金192万円+留学準備金35万円が上限です(ただし125日以上の「ロング」は支援予定人数700名のうち20人程度の枠なので、1年をこの制度に依存する設計は成立しにくい点に注意)。一方で交換留学の参加費は概ね190〜250万円、私費留学なら年間200〜600万円(抑えやすい国の公立150〜320万円、欧米の私立500〜1,000万円)が目安です。給付型を積み、費用の安い形態を選んで総額を下げ、それでも残る差額を国の教育ローン(3か月以上の留学で450万円以内)などで埋める設計になります。

Q.複数の奨学金に応募して両方受け取れますか?

上限があります。トビタテ第11期では、他団体からの給付型奨学金などの総額が本制度の奨学金総額(留学準備金を除く)を超えないことが要件とされ、相手方の団体が併給を認めているかの確認も必要でした。地域の枠との併願制限もあります。応募前に、それぞれの募集要項で併給・併願の扱いを確認してください。

Q.いつから準備すればいいですか?

渡航の1年〜1年半前です。トビタテ第11期では、機構への応募申請が12月上旬に開始し学校の締切が1月、面接が3月、採否通知が4月下旬〜5月下旬、留学開始が7月10日以降でした。校内の提出期限は機構の期限より前に設定され、学校のアカウント申請期限も応募期限より前にあります。留学を考え始めた時点で学校に伝えておくのが最も確実な準備です。

制度の最新情報を追いかける負担を減らす

奨学金は募集時期が早く、要件も期ごとに変わります。情報を整理する手がかりとしてお使いください。