このページの要点

自治体の留学支援は国費・都道府県・市区町村の3層。まず自分がどの層のどの型に当てはまるかを決めます。

  • 全国どこでも使える6万円がある:文部科学省の国費高校生留学促進事業は、原則10日以上1か月未満の派遣に1人6万円を都道府県経由で支援します(令和8年度予算案・1,700人)。ただし学校単位での応募が原則で、ご家庭から直接は申し込めません。
  • 都道府県の支援は「型」で自己負担が変わります:航空券だけ、定額◯万円、実費の2分の1、費用のほぼ全額を県が負担——同じ「補助」でも残る自己負担は桁で違います。
  • 枠が埋まっていない制度があります:JASSOの調査では、募集人数に達していないと自ら回答した県が複数ありました。競争率10倍の制度と、応募がゼロの年がある制度が同じ資料に並んでいます。

「自治体の留学支援」を調べると、多くの記事は制度を3〜4件並べて終わります。しかし実際に保護者が知りたいのは、①わが家が対象になるのか ②いくら残るのか ③取れる見込みがあるのか、の3つのはずです。この記事は、日本学生支援機構(JASSO)が2025年10月下旬から47都道府県に実施した調査の結果(2026年1月14日公表)と、文部科学省の令和8年度予算資料、各自治体の募集要項の原文をもとに、制度の層構造・支援の型・実際の応募状況・要件の読み方・申請の段取りを整理したものです。奨学金全体の設計は高校生の留学奨学金ガイドにまとめています。

本記事は、文部科学省「令和8年度予算(案)主要事項」、JASSO「自治体による海外留学支援(資金面)の調査」(2026年1月14日公表・回答時点は2025年11月〜2026年1月)、および各自治体が公表する募集要項・実施要綱の原文にもとづく2026年8月時点の整理です。金額・人数・要件・締切はいずれも年度ごとに改定され、すでに募集が終了しているものもあります。本文で挙げた制度は「型」を説明するための例であり、一覧ではありません。応募を検討する際は必ず当該自治体の最新の募集要項をご確認ください。

結論:自治体の留学支援は「3層」でできている

POINT

自治体の支援は1種類ではありません。①国が全都道府県に配る国費 ②都道府県独自の制度 ③市区町村・関連団体の制度の3層があり、原資も窓口も締切も別です。3層を混ぜて「自治体の奨学金」と呼ぶから、探す場所が分からなくなります。

まず押さえたいのは、「自治体の支援」と呼ばれているものの中に、実は国のお金が混じっていることです。文部科学省の「国費高校生留学促進事業」は、都道府県を通じて短期留学の費用を支援する仕組みで、全都道府県が対象になっています。つまりお住まいがどこであっても、この層だけは全国共通で存在します。その上に都道府県独自の制度が乗り、さらに市区町村や国際交流協会などの制度が乗る——この重なり方を先に理解しておくと、「うちの県にはないから諦める」という早すぎる結論を避けられます。

自治体の高校生留学支援の3層(文部科学省令和8年度予算資料・JASSO調査より作成)

代表例金額の幅窓口・申請ルート情報の探し先
①国費(全国共通)国費高校生留学促進事業1人6万円(原則10日以上1か月未満)都道府県を通じて配分。学校単位での応募が原則在籍校の担当教員(ご家庭からは直接申請できない)
②都道府県◯◯県高校生海外留学支援事業、◯◯県グローバル人材育成事業 など5万円〜費用のほぼ全額(型による)多くは在籍校を通じて案内・申請。県の教育委員会が所管県教育委員会サイト、JASSOの47都道府県調査結果
③市区町村・関連団体横浜市はまっこ留学support、国際交流協会の奨学金 など数万円〜上限150万円という例も本人・保護者が直接申請するものが多い(学校の推薦書は別途)市区町村の広報・教育委員会、地域の国際交流協会

3層をまたいで注意したいのが併給の可否です。国費高校生留学促進事業の留学支援金は、トビタテ!留学JAPANの募集要項に「併給はできません」と明記されています。どちらも公的な給付なので「両方出しておこう」と考えがちですが、ここは択一です。制度全体の併給ルールは高校生の留学奨学金ガイドの併給の章に整理しています。トビタテ本体の制度内容はトビタテ!留学JAPAN高校生コースの解説をご覧ください。

第1層:全国共通の6万円は「学校が動くかどうか」で決まる

POINT

国費高校生留学促進事業は、保護者や生徒個人が申し込む制度ではありません。学校教育活動の一環としての派遣が対象で、学校単位での応募が原則です。だから最初の関門は選考ではなく、在籍校がこの事業に手を挙げているかです。

文部科学省の令和8年度予算(案)資料には、この事業の中身がはっきり書かれています。対象は「自治体や学校等が主催する原則10日以上1か月未満の海外派遣プログラムに、学校教育活動の一環として参加する中学生・高校生等の生徒」。そして「派遣前の語学学習、オリエンテーション及び帰国後のフォローアップを十分に行うことを条件とし、学校単位での応募を原則とする」と続きます。支援金額は1人6万円、対象人数は1,700人で、いずれも前年度と同額です(事業全体の予算額は143,558千円、うち国費高校生留学促進事業は104,846千円)。

ここから読み取れる実務上の意味は3つあります。第一に、個人で手配した語学研修や、家族旅行を兼ねた渡航は対象になりません。「学校教育活動の一環」という条件があるためです。第二に、期間の条件が厳しめです。原則10日以上1か月未満なので、1週間の語学研修も、1年間の交換留学も対象外になります。第三に、学校が事前研修と事後フォローの体制を持っていることが条件なので、留学に慣れていない学校では、そもそも応募自体が行われていない可能性があります。

この事業は資料によって呼び名が変わります。文部科学省の令和8年度予算資料では親事業が「初等中等教育段階からの国際交流促進事業」、トビタテの募集要項では「社会総がかりで行う高校生国際交流促進事業」と書かれていますが、いずれも括弧書きで「国費高校生留学促進事業」が共通しています。検索するときは「国費高校生留学促進事業」で当たるのが確実です。名称が変わるのは制度の位置づけが整理されるためで、廃止されたわけではありません。

なお、同じ予算事業の中には「都道府県内に留学支援員を配置し、留学に関する各種相談に応じられるようにする」という取組も含まれています。つまり都道府県には留学相談の担当が置かれている前提で国の予算が組まれている、ということです。学校の先生が留学に不慣れな場合でも、県の教育委員会に相談先がある可能性は高い、と考えて動いてかまいません。

避けたい

「国から1人6万円もらえる」と読んで、家庭で申し込む方法を探す

こうすればOK

在籍校に「国費高校生留学促進事業に応募している短期派遣はありますか」と聞く。応募の主体は学校で、家庭から直接は出せない

避けたい

夏休みの語学研修に参加するので、この6万円が使えるはずだと予算に組み込む

こうすればOK

「学校教育活動の一環」「原則10日以上1か月未満」の2条件を先に確認する。個人手配のプログラムは原則として対象外。短期留学の費用全体は短期留学の費用で確認する

第2層:都道府県の支援は5つの型に分かれ、型で自己負担が変わる

POINT

同じ「補助」でも、航空券だけを補助する型と、費用のほぼ全額を県が負担する型では、家計に残る金額が桁で違います。金額の大小ではなく、まず型を見てください。とくに「実費の2分の1」型は、支給上限まで出ても自己負担が必ず半分残ります。

その前に、規模感を押さえておきます。当サイトで42都道府県の節を1件ずつ読んだところ、留学フェアなどのイベント案内だけ、あるいは大学生向けの事業だけしか載っていない県は10前後でした(資料に集計は載っていないため、当サイトが原典を読んで分類したものです。事業の書き方が県ごとに違うため、厳密な線引きは定義によって1〜2県ぶれます)。つまり掲載されている県の大半には、高校生等を対象とする資金の支援が載っているということです。「うちの県にはない」と決める前に、まず調べる価値があります。

JASSOが47都道府県に実施した調査(2026年1月14日公表)の原文を1件ずつ読むと、都道府県の支援は次の5つの型に整理できます。この分類は当サイトが原典を読んで作成したもので、資料に型の区分が書かれているわけではありません。

都道府県の留学支援の5類型(JASSO「自治体による海外留学支援(資金面)の調査」より当サイトが分類・実額は各県の回答時点のもの)

支援の中身実額の例家計に残る負担
①旅費限定型航空券や旅費など、費目を限定して補助する北海道の高校生交換留学促進事業補助金は航空券購入代金の補助で、カナダ・アルバータ15万円、ハワイ5万円、ニュージーランド15万円授業料・滞在費は全額自己負担。総額に対する比率は小さい
②定額給付型期間区分ごとに1人あたりの定額を給付する茨城県は短期(12日以上30日以内)上限10万円・長期(原則1年)上限100万円。熊本県は最大50万円、鳥取県は40万円、佐賀県は短期10万円・中期20万円・長期30万円残りは自己負担だが、金額が読めるので予算を組みやすい
③実費按分型補助対象経費の2分の1・3分の2など、割合と上限の低い方を支給する京都府の府立高校向け事業は「25万円と実支払額の2分の1の少ない方」など。兵庫県の「はじめて留学」は経費の3分の2(上限20万円)上限まで出ても自己負担が割合分だけ必ず残る
④県費派遣型県が企画したプログラムに選抜し、費用を県が負担する福岡県の「福岡から世界へ」人材育成プロジェクトはプログラム経費・渡航費・宿泊代を県が負担。沖縄県の長期留学事業は保険料とお小遣いを除く費用全般を支援自己負担は小さいが、行き先とプログラムは選べない
⑤トビタテ拠点形成型国の拠点形成支援事業の採択を受け、県が地域枠として運営する石川・高知・静岡・富山・群馬・徳島などが該当。支援内容はトビタテ本体に準じる設計が多いトビタテ本体との併願制限があるため、どちらで出すかの判断が要る

型を意識すると、比較の仕方が変わります。たとえば「上限50万円」の定額給付型と、「上限60万円だが実支払額の2分の1まで」の実費按分型を比べたとき、留学費用が80万円なら前者は50万円、後者は40万円です。金額表示は後者のほうが大きいのに、実際に受け取れる額は前者が上回ります。募集要項の「◯万円と実支払額の2分の1とを比較して少ない方」という一文を読み飛ばさないことが、そのまま数十万円の差になります。

⑤のトビタテ拠点形成型については、本体の全国枠と地域枠のどちらで出すかによって競争の条件が変わります。枠の選び方はトビタテの倍率と枠の選び方で詳しく整理しています。

いくら出るのか——期間別に見た実額のレンジ

POINT

自治体の支援額は、留学期間にほぼ比例します。1〜2週間なら5万〜10万円、1年なら30万〜100万円が中心帯で、海外大学進学に対する支援は桁が変わります。留学費用の総額に対する充足率は、短期ほど高く、長期ほど低くなります。

期間別に見た都道府県の支援額の実例(JASSO調査に各県が回答した2025年11月〜2026年1月時点の内容より作成)

期間支援額の実例留学費用の総額に対する位置づけ
1〜4週間(短期)国費6万円/岡山県 短期5万7千円/茨城県 上限10万円/大分県 短期10万円/佐賀県 短期10万円/宮崎県 10万円まで短期の総額は30万〜80万円が中心(→短期留学の費用)。おおむね1〜2割、費用の小さいプログラムなら3割前後
1〜3か月(中期)兵庫県 はじめて留学 経費の3分の2(上限20万円)/佐賀県 中期20万円/京都府の各事業 20万〜30万円台総額100万〜200万円規模に対し1〜2割。ただし按分型は上限まで届かない場合がある
約1年(長期)茨城県 上限100万円(2人)/熊本県 最大50万円/大分県 50万円(3名)/鳥取県 40万円(4名)/山梨県 50万〜100万円(所得割額に応じる)/静岡県 27万〜83万円1年留学の総額は交換留学で190万〜250万円、私費で年200万〜600万円。2〜4割を埋める規模(→高校留学の費用
海外大学への進学福島県 年最大380万円×通算4年(上位2名)/大阪府 おおさかグローバル塾修了生に渡航費上限30万円/新潟県 貸与・月額51,000円桁が変わる。給付型は要件が厳しく人数も少ないが、当たれば負担構造そのものが変わる(→海外大学進学ガイド

この表で目を引くのは、長期になるほど支援額は増えるのに、費用に占める割合は下がるという構造です。1〜2週間の研修なら支援金だけで参加費の3割前後が埋まることもありますが、1年留学では総額200万円超に対して40万〜100万円ですから、残りをどう組むかの設計が必ず必要になります。給付型を積み上げて自己負担がどこまで下がるかは返済不要の留学奨学金でいくら残るかで期間別に計算しています。

枠が埋まる制度と、応募がゼロの制度が同居している

POINT

これがこの記事でいちばんお伝えしたい事実です。JASSOの調査には各県が応募実績を自己申告しており、10倍を超える人気制度と、「応募なし」「募集人数に達していない」と県自身が書いている制度が、同じ資料に並んでいます。支援額の大きさと競争率は、必ずしも比例していません。

応募状況の実例(各都道府県がJASSOの調査に回答した内容より作成。回答時点は2025年11月〜2026年1月で、現在の募集状況を示すものではありません)

制度応募状況(県の回答)読み取れること
兵庫県 高校生チャレンジ留学(上限50万円)R6は10人、R7は20人R6は102人応募、R7は74人応募国公私立すべてが対象で金額も大きい制度は競争が激しい
福岡県「福岡から世界へ」(費用を県が負担)75名412名応募自己負担がほぼない県費派遣型は例外なく人気
北海道 高校生交換留学促進事業補助金ハワイ7名(5万円)/アルバータ20名(15万円)/NZ5名(15万円)ハワイは26名応募6名支給、アルバータは22名応募19名支給、NZは5名応募5名支給補助額が3倍のアルバータ・NZより、5万円のハワイに応募が集中。行き先の人気で決まっており、支援額では決まっていない
三重県 長期留学支援(上限10万円)2名程度R5は2名応募、R6・R7は応募なし枠が小さく金額も控えめな制度は、そもそも知られていない
宮崎県 高校生留学促進補助事業(10万円まで)100名「例年募集人数に達していない」100名の枠が埋まらない。県内の高校生なら射程に入る
山梨県 大村智人材育成基金(50万〜100万円)高校生コース4名程度「近年は募集人数に達しないことが多い」所得割額に応じて最大100万円。県外の高校に通う県内在住者も対象
佐賀県 中学生・高校生海外留学等助成事業短期100人・中期4人・長期20人「コロナ禍以降募集人数に達していない」短期100人枠は、県内の中高生にとって現実的な選択肢
福島県 高校生海外留学応援事業(年最大380万円×4年)上位2名R6は2名応募1名採用、R4・R5・R7は応募なし最大1,520万円の給付に応募がない年がある。ただし要件は厳しい(後述)

なぜこんな非対称が生まれるのでしょうか。原典を読むと、理由は2つに整理できます。1つは、単純に知られていないこと。都道府県の制度は在籍校を通じて案内されるため、学校が積極的でなければ生徒の目に触れません。もう1つは、要件を満たすのに時間がかかること。たとえば福島県の制度は、年最大380万円を4年間という破格の内容ですが、募集要項の応募要件を読むと、県内の高校に在籍する県内在住の高校3年生であること、CEFR B2レベル以上の英語力、在籍校長の推薦、そして「中学生・高校生の国際理解・国際交流論文 朝河貫一賞へ応募した実績があること」が並びます。さらに支援対象大学はU.S.News全国60位以内、同リベラルアーツ30位以内、THE世界100位以内の米国大学、QS世界100位以内の米国大学に限られます。高校3年生になってから知っても間に合わない設計なのです。

つまり「定員割れ=簡単にもらえる」ではありません。しかし裏を返せば、高校1年生の時点で要件を知っていれば、狙って準備できるということでもあります。英語のスコアも、論文への応募実績も、1年あれば作れます。自治体の制度を「今ある費用の穴埋め」ではなく「これから満たしにいく要件」として見るのが、この層の正しい使い方です。

この表の数値は、各都道府県がJASSOの調査票に回答した実績値です。集計の定義(応募者数の数え方、辞退者の扱いなど)は県によって異なる可能性があり、県をまたいで倍率を厳密に比較することはできません。また「応募なし」はあくまで回答時点までの実績であり、その制度が今後も応募が少ないことを保証するものではありません。

対象になるかは「在住」か「在籍」かで決まる

POINT

自治体の制度でいちばん多い取りこぼしが、要件の読み違えです。「県内に住んでいる」ことが条件なのか、「県内の高校に通っている」ことが条件なのか、あるいは「県立高校の生徒」に限るのか——この3つはまったく別の条件で、どれに当たるかで使える制度が入れ替わります。

対象要件の4つの軸と、読み違えやすいポイント(各自治体の募集要項・実施要綱より作成)

何が問われるか実例見落としやすい点
在住か在籍か住民票のある自治体か、通学先のある自治体か横浜市は「市内在住(市内外の高校に在籍)」または「市外在住で市内の高校に在籍」の両方が対象。山梨県は県内在住なら県外の高校に通っていても対象県外の高校に通っていても、住んでいる自治体の制度は使える場合がある。逆に寮生活で住民票を移していると外れることがある
設置者の限定県立・市立に限るのか、国公私立すべてか京都府の各事業は府立高校の生徒が対象。茨城県は県立高校等が対象。兵庫県のチャレンジ留学は国公私立すべてが対象私立高校に通う場合、県の主要制度から外れることがある。その代わり私学向けの別制度がある自治体もある
政令市の扱い県の制度と政令市の制度が別立てになっていないか横浜市は市独自に長期上限150万円の制度を持つ。兵庫県の長期支援は対象記述に「神戸市立を除く」とある県だけを調べて終わると、市の手厚い制度を見落とす。政令市・中核市にお住まいなら市も必ず調べる
時点の要件いつ時点で要件を満たす必要があるか横浜市は「出発日および帰国日において」市内在住または市内在学であることが必要転居・卒業のタイミングで要件を外れることがある。高3の1〜3月出発は特に注意

私立高校に通うご家庭は、県の主要制度から外れることが少なくありません。その場合の受け皿として、私学向けの別枠が用意されている自治体があります。たとえば東京都私学財団の私立高等学校海外留学推進助成事業は、都内の私立高校に在籍し在籍校の推薦を受けた生徒の保護者を対象とし、都内在住でなくても対象とされています。対象は概ね1学期(3か月)以上の留学で、申請は学校がとりまとめる形です(令和8年度は第1回が6月1日〜7月9日、第2回が9月14日〜10月22日)。助成額は当該ページに記載がないため、金額は在籍校または財団にご確認ください。

避けたい

「◯◯県 高校生 留学 支援」で検索して、県の制度が見つからなかったので支援はないと判断する

こうすればOK

県・市区町村・国際交流協会・在籍校の4か所を必ず当たる。県が制度を持たない年でも、市区町村や協会が持っていることがある

避けたい

私立高校だから公的な支援は関係ないと考える

こうすればOK

国公私立を問わない制度と、私学向けの別制度の両方を探す。県の主要制度が県立限定でも、私学財団や市区町村の制度は対象になり得る

避けたい

募集要項の金額欄だけを見て、対象要件は後で読もうと考える

こうすればOK

要件(在住/在籍・設置者・学年・時点)を先に読む。金額を見てから外れると、検討にかけた時間がそのまま無駄になる

第3層:市区町村が県より手厚いことがある

POINT

都道府県だけを調べて終わるのは、もっともよくある取りこぼしです。政令市や財政に余裕のある市区町村は、県を上回る規模の制度を持っていることがあります。岩手県はJASSOの調査に「33市町村中16市町村が短期留学支援を実施」と回答しています。

分かりやすい例が横浜市です。JASSOの調査で神奈川県の欄に載っているのは留学経験者とのオンライン交流会というイベントのみですが、市の実施要綱を読むと、横浜市高校生留学補助事業「はまっこ留学support」は長期留学(90日以上365日以下)で補助対象経費の2分の1以内・上限150万円(25名程度)、短期留学(7日以上90日未満)で2分の1以内・上限20万円(75名程度)という規模でした。県の欄だけを見ていたら、この制度には一生たどり着きません。

市区町村の制度は、都道府県の制度と違って本人・保護者が直接申請するものが多いのも特徴です。横浜市の場合、申請は本人がエントリーフォームから行い、在籍校からの推薦書は学校が別ルートで提出します。添付書類には前年度の成績表(出欠の実績を含む)と、1,000〜1,200字の作文(必ず申請者本人が作成すること、と要綱に明記)が含まれます。学校の推薦は要るが、動くのは家庭という設計です。

  • 併給の調整がある:横浜市の要綱では、他団体から奨学金等の給付を受けている場合、補助額は「他の団体等からの奨学金額を足して、補助対象経費を超えない範囲」とされています。重ねて総額を増やすことはできても、実費を超えて受け取ることはできません
  • 一度きりの制度がある:横浜市では、過去にこの補助(前身の「世界を目指す若者応援事業」を含む)を受けた者は原則として対象外です(短期の補助を受けた人が長期に申請する場合を除く)。短期で使うか、長期まで取っておくかの判断が要ります
  • 補助対象経費の範囲が細かく決まっている:横浜市の場合、空港までの国内交通運賃も1往復分が対象ですが、特別車両料金は対象外と明記されています。何が対象経費かで、実際の補助額は変わります
  • 締切が早い:横浜市の令和8年度の受付は5月8日から6月7日まででした。夏休みの留学を考え始めた時には、すでに締切が過ぎていることがあります

「一度きり」「実費を超えない」「対象経費が限定されている」という3つの制約は、市区町村の制度に共通して見られる考え方です。支援金は費用の穴埋めであって、留学で得をする仕組みではない——この前提で設計されているため、複数の制度を重ねても手元にお金が残る形にはなりません。制度を積む目的は、あくまで自己負担を下げることだと理解しておくと、応募先の優先順位を決めやすくなります。

一覧に「載っていない制度」がある

POINT

この記事の元にしたJASSOの調査結果ですら、網羅ではありません。回答のあった都道府県のみ掲載という但し書きがあり、実際に掲載は42都道府県です(当サイトが原典の節を数えた値。山形・埼玉・愛知・滋賀・島根は掲載されていません)。掲載がない=制度がない、ではありません。

実例を2つ挙げます。1つは埼玉県です。都道府県の欄に埼玉県の記載はありませんが、同じJASSOのサイトでは「埼玉発世界行き」奨学金が関連団体の実施する奨学金として紹介されています。県の事業ではなく関連団体の事業だと、都道府県の調査票には出てこない、という構造です。もう1つは東京都です。東京都の欄に載っているのは東京グローバル・パスポート(生計維持者が1年以上都内に住所を有し、本人が国内の大学等に在籍している者が対象)と、その他として港区の事業のみ。都立高校生等を対象とする「次世代リーダー育成道場」は、この資料には掲載されていません(この制度の内容は高校生の留学奨学金ガイドの自治体の章で扱っています)。

だから「一覧を見て終わり」にせず、探し方の手順そのものを持っておく必要があります。順番は次のとおりです。上から順に当たれば、ご家庭が対象になる制度をひととおり洗い出せます。

  1. 1在籍校の担当教員に聞く:国費の6万円も、都道府県の制度の多くも、学校を通じて案内・申請されます。「今年、うちの学校が案内している留学の支援制度を全部教えてください」と聞くのがいちばん早い
  2. 2都道府県の教育委員会サイトで「留学」を検索する:JASSOの調査結果PDF(「自治体による海外留学支援(資金面)の調査」)で自県の欄を読み、そこに載っている事業名で県サイトを直接検索します。リンク先が県のページになっているものは、そこから最新年度の要項に飛べます
  3. 3お住まいの市区町村を必ず調べる:市区町村の広報・教育委員会・国際交流協会の3か所。政令市・中核市は県と別立ての制度を持っていることがあります
  4. 4私立在籍なら、私学財団・私学協会の枠を探す:県の主要制度が県立限定でも、私学向けの助成が別にあることがあります
  5. 5JASSOの海外留学奨学金検索で条件を絞る:地域・支援スタイル・募集期間などで絞り込めます。自治体系だけでなく民間の留学奨学金も同時に拾えます(このデータベースで高校在学中の留学に該当する34件のうち、国・自治体以外は22件でした)

JASSOの調査結果には「すでに募集が終了しているものもございます」という但し書きが付いています。この記事に挙げた金額・人数も、各県が2025年11月〜2026年1月時点で回答した内容です。制度名を手がかりに、必ず当該自治体の最新の募集要項に当たってください。まとめ記事に残っている情報は、募集終了後もそのまま残り続けます。

申請の実務——保護者ができること、できないこと

POINT

自治体の制度は、申請の主体が制度ごとに違います。学校単位(国費)、学校を通じた生徒の申請(多くの都道府県)、本人の直接申請+学校の推薦書(多くの市区町村)の3パターンがあり、保護者が動ける範囲もそれぞれ違います。

保護者が代わりに書けない書類がある点にも注意が必要です。横浜市の募集要項では、作文について「必ず申請者本人が作成すること」と明記されています。福島県の要項では、申請書の氏名欄は本人が自筆で署名することとされています。お子さん本人が動かないと成立しない制度である以上、保護者の役割は「代行」ではなく「締切と段取りの管理」になります。

高校1年の春から逆算した、自治体の支援を取りにいく段取り

時期やること根拠・注意点
高1の春〜夏在籍校に留学支援制度の一覧を聞く。県・市区町村の制度を一度洗い出し、要件(英語スコア・成績・活動実績)を確認する英語スコアや論文応募実績を要件にする制度は、満たすまでに1年前後かかる
高1の冬〜高2の春要件のうち「今から満たせるもの」に着手する(英語検定の受験、探究活動・論文への応募など)福島県の制度はCEFR B2以上+特定の論文への応募実績が要件。高3で知っても間に合わない
高2の春〜夏前年度の募集要項で締切月を確認し、家族の予定表に入れる。学校の校内締切も確認する自治体の募集は4〜6月に集中(横浜市は5月8日〜6月7日、福島県は5月7日〜10月30日)。学校経由の制度は校内締切がさらに早い
高2の秋〜冬留学の時期と期間を決め、対象になる制度を絞る。併給の可否を確認する期間の条件(10日以上1か月未満、7日以上90日未満、90日以上365日以下など)で対象制度が入れ替わる
高3の春申請書・作文・成績表・推薦書を準備する。学校への推薦書依頼は早めに推薦書は学校側の作業。依頼から提出までの時間を見込む

この表で強調したいのは、制度探しは高3の作業ではないということです。募集要項が公開されるのは多くが年度初め(4〜5月)ですが、そこに書かれている要件を満たすための準備は、その1年以上前から始まっています。留学そのものの計画づくりは高校留学の費用高校生の留学奨学金ガイドと並行して進めてください。

調べた制度と締切を、家族で共有できる形にしておく

自治体の制度は募集期間が短く、学校経由の校内締切はさらに早く設定されます。LINEで進路・留学の情報を受け取りながら、ご家庭の検討状況を整理する材料にお使いください。

落選しても、次の手はある

POINT

自治体の制度は募集人数が1桁のものが珍しくありません。落ちる前提で次の手を用意しておくのが現実的です。ポイントは、①同じ年度の別制度 ②期間を変えて対象制度を入れ替える ③翌年度の再応募、の3方向です。

興味深い例として、香川県はJASSOの調査に「トビタテ!留学SANUKI」という事業を回答しています。内容はトビタテ!留学JAPANに応募したものの不採用になった県立高校の生徒に1人あたり10万円(令和8年度は15万円の予定)を補助するというもので、令和7年度は3名の枠に3名の応募でした。落選者の受け皿を自治体が用意している例です(この事業は香川県の公式ページでは確認できなかったため、JASSOの調査に対する県の回答としてご紹介しています。詳細は県教育委員会にご確認ください)。

同様の発想は、他の自治体でも応用できます。期間を変えると対象制度が入れ替わるというのが実務上いちばん効く手です。たとえば1年留学の枠が2名しかない県でも、短期の枠は50〜100名という県があります(茨城県は短期50人・長期2人、佐賀県は短期100人・長期20人)。1年留学が難しければ、まず3か月から始めて、次の年に長期を狙うという組み立ても可能です。留学の形そのものを比較したい場合は交換留学の仕組み高校生の短期留学が参考になります。

経済的な事情がある場合は、自治体の制度と並行して、ひとり親家庭向けの支援や貸付も含めた設計が要ります。制度ごとの窓口が違うため、早い段階でそれぞれに一報を入れておくと締切を逃しません。詳しくは母子家庭の高校生が留学するにはにまとめています。

まとめ:自治体の支援は「探す」より「当てはまりにいく」

POINT

自治体の留学支援を活かせるかどうかは、情報量ではなく着手の早さで決まります。制度は毎年ほぼ同じ時期に、ほぼ同じ要件で募集されます。だから前年度の要項を読めば、来年の準備は今日から始められます。

最後に、この記事の要点を行動の順番でまとめます。第一に、在籍校に聞く。国費の6万円も都道府県の制度の多くも、学校が窓口です。第二に、県だけでなく市区町村と関連団体まで調べる。神奈川県の欄がイベントだけでも、横浜市には上限150万円の制度がありました。第三に、金額ではなく型と要件を先に読む。実費の2分の1という一文が、数十万円の差になります。第四に、要件を「今から満たしにいく」。定員割れしている制度は、知られていないか、要件を満たすのに時間がかかるかのどちらかで、どちらも早く動いた家庭が有利になります。

自治体の支援は、留学費用の全部を賄うものではありません。1年留学であれば、総額200万円超に対して埋まるのは2〜4割程度です。それでも、制度を1つ取れば、家計の判断が「行けるか行けないか」から「どの形なら行けるか」に変わります。費用全体の設計は高校留学の費用、給付型を積んだあとに残る自己負担は返済不要の留学奨学金でいくら残るかで確認してください。海外大学への進学まで視野に入れる場合は、自治体の制度にも進学支援型があります(→海外大学進学ガイド)。

支援金を引く前の「総額」を先に出しておく

国・期間・留学タイプ・滞在方法から費用の目安を試算できます(対応期間は1か月からです)。自治体の支援は総額の一部を埋めるものなので、まず総額を出してから差額を考えると判断がぶれません。

Q.うちの都道府県の制度が見つかりません。本当に何もないのでしょうか。

「見つからない」と「ない」は違います。JASSOが47都道府県に行った調査の結果(2026年1月14日公表)でも、掲載されているのは回答のあった42都道府県で、山形・埼玉・愛知・滋賀・島根は掲載されていません(当サイトが原典の節を数えた値)。ただし埼玉県は「埼玉発世界行き」奨学金が同じJASSOのサイトの関連団体の欄に掲載されています。県の事業ではなく国際交流協会などの事業だと、都道府県の調査には出てこないためです。県の教育委員会・市区町村・地域の国際交流協会・在籍校の4か所を当たってから判断してください。

Q.国から1人6万円もらえると聞きました。どこに申し込めばよいですか。

ご家庭からは申し込めません。文部科学省の国費高校生留学促進事業は、令和8年度予算資料に「学校単位での応募を原則とする」と明記されており、対象も「学校教育活動の一環として参加する」中学生・高校生等に限られます。まず在籍校に「国費高校生留学促進事業に応募している短期派遣はありますか」と確認してください。なお対象は原則10日以上1か月未満の派遣で、1年留学や1週間の研修は対象外です。またトビタテ!留学JAPANの留学支援金との併給はできないと、トビタテの募集要項に明記されています。

Q.私立高校に通っています。県の制度は使えませんか。

制度によります。京都府の府立高校向け事業や茨城県の事業のように在籍校の設置者を限定するものがある一方、兵庫県の高校生チャレンジ留学のように国公私立すべてを対象とする制度もあります。加えて、私学向けの別枠を持つ自治体もあります。たとえば東京都私学財団の私立高等学校海外留学推進助成事業は、都内の私立高校に在籍し在籍校の推薦を受けた生徒の保護者が対象で、都内在住でなくても対象とされています(対象は概ね3か月以上の留学、申請は学校がとりまとめ)。県の主要制度と、私学向けの別制度の両方を探してください。

Q.県と市の制度は両方使えますか。トビタテとの併用はどうなりますか。

制度ごとの併給規定によります。横浜市の実施要綱では、他団体から奨学金等の給付を受けている場合の補助額は「他の団体等からの奨学金額を足して、補助対象経費を超えない範囲」とされています。つまり重ねること自体は可能でも、実際にかかった費用を超えて受け取ることはできません。トビタテ!留学JAPANについては、第11期の募集要項で、他団体の給付型奨学金等の総額が本制度の奨学金総額(留学準備金を除く)を超えないこと、かつ相手方団体が併給を認めているかの確認が必要とされています。国費高校生留学促進事業の留学支援金との併給は明確に不可です。詳しくは高校生の留学奨学金ガイドの併給の章をご覧ください。

Q.応募が定員に達していない制度があると聞きました。狙い目でしょうか。

半分は正しく、半分は違います。JASSOの調査では、山梨県・佐賀県・宮崎県などが自ら「募集人数に達しない」旨を回答しており、三重県や福島県のように応募がなかった年を回答している県もあります。ただし定員割れの理由は「簡単だから」ではなく、知られていないか、要件を満たすのに時間がかかるかのどちらかです。たとえば福島県の年最大380万円×4年の制度は、CEFR B2以上の英語力、特定の論文への応募実績、校長推薦、対象大学の限定(U.S.News全国60位以内など)が要件で、高3から準備を始めて間に合うものではありません。高1のうちに要件を確認し、満たしにいくかどうかを決めるのが現実的です。

Q.いつから動けばよいですか。高2の夏に留学したい場合の逆算を教えてください。

自治体の募集は年度初め(4〜6月)に集中し、学校経由の制度は校内締切がさらに早く設定されます。横浜市の令和8年度は5月8日〜6月7日、福島県は5月7日〜10月30日でした。高2の夏に行くなら、遅くとも高1の冬までに前年度の募集要項を読み、要件(期間・英語スコア・成績・在住/在籍)を確認しておくのが安全です。とくに期間の条件は制度ごとに違い、7日以上90日未満、10日以上1か月未満、90日以上365日以下などと分かれているため、留学の期間を決めると対象制度が自動的に絞られます。期間を決めてから制度を探すのが最短です。