このページの要点

高校生の留学保険は、比較する前に「もう決まっている条件」を確認します。順序を逆にすると入り直しになることがあります。

  • 米国の交換訪問者(J)プログラムは、連邦規則が金額を定めている:22 CFR 62.14(b) は最低の補償として「Medical benefits of at least $100,000 per accident or illness」「Repatriation of remains in the amount of $25,000」「Expenses associated with the medical evacuation ... in the amount of $50,000」「Deductibles not to exceed $500 per accident or illness」を挙げています。これはスポンサー(受入団体)に課された規定です。
  • オーストラリアの学生ビザは、加入の維持そのものがビザの条件:オーストラリア政府の privatehealth.gov.au は「it is a condition of your visa to maintain Overseas Student Health Cover (OSHC) for the duration of your visa」と説明しています。
  • 日本の健康保険からも一部が戻る:海外療養費制度により、「やむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合」に一部の払い戻しを受けられます。ただし支給額は「日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額」から自己負担相当額を差し引いた額です(全国健康保険協会)。海外の請求額そのものが戻るわけではありません。

留学準備で、比較サイトを開いた瞬間に手が止まりやすいのが保険です。比較サイトを開き、補償額を見比べ、保険料を計算する——その作業に入る前に、確認すべきことがあります。加入する保険が、ビザの要件や受入団体の規定によって、すでに外側から決まっている場合があるからです。先に自由に選んで契約すると、あとで指定の保険に入り直すことになり、費用が二重にかかります。さらに、日本の健康保険からも一部が戻る仕組みがあり、これを知らないまま自己負担として処理してしまうご家庭もあります。本記事は、条文と各国政府の公式資料の原文から「確認すべき順序」を整理します。準備全体の逆算は高校留学の準備をご覧ください。

当サイトの立場について: GLOBAL進路ナビは保険の募集・媒介を行っておらず、特定の保険商品や保険会社を推奨する立場にありません。本記事では保険料の相場や商品の比較は扱いません。扱うのは「どの条文・どの公式資料に、何が定められているか」という確認の枠組みだけです。本記事の条文と引用は、米国国務省が所管する連邦規則 22 CFR 62.14(eCFRの原文)、オーストラリア政府 privatehealth.gov.au(連邦オンブズマン=Commonwealth Ombudsman が運営する政府サイト)、全国健康保険協会(協会けんぽ)の海外療養費のページを、当サイトが2026年8月25日に取得したものです。制度・金額・要件は改定されます。加入の前に、受入団体の案内、渡航先国の政府の公式情報、保険会社の約款、そしてご加入の医療保険の保険者に必ずご確認ください。

結論早見表|確認する順序と、それぞれの確認先

POINT

順序は4段階です。①査証区分の要件 → ②受入団体・受入校の指定 → ③日本の健康保険から戻る分の把握 → ④残った部分の比較検討。①と②を飛ばして④から始めると、入り直しになる可能性があります。

まず全体像です。左に行くほど「決まっていること」、右に行くほど「選べること」と考えてください。多くの記事が右端(商品の比較)から始めますが、左を確定させないと比較の前提そのものが定まりません。

高校生の留学保険で確認する順序

順序確認すること確認先選べるか
査証区分に保険の要件があるか。あれば最低補償額や加入の枠組みが定められている渡航先国の政府・大使館の公式情報(米国J区分なら 22 CFR 62.14、豪州なら学生ビザの条件)選べない
受入団体・受入校が加入先や補償内容を指定していないか受入団体・受入校から届く書類、募集要項指定があれば選べない
日本の健康保険から一部が戻る仕組み(海外療養費)を把握しておくご加入の保険者(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険)—(制度として存在する)
①②で満たされない補償項目を洗い出す(本記事は商品の比較そのものは扱いません)各保険会社の約款・パンフレット選べる

ここで強調したいのは、①と②に該当した場合、「安いから」「補償が手厚いから」という理由で別の保険を選ぶことができないという点です。要件を満たさない保険に入っても、要件を満たしたことにはなりません。 以下では、①の実例として米国とオーストラリアを、③として日本の海外療養費を扱います。②(受入団体・受入校の指定)は、届く書類でしか確認できないため、確認の観点だけを示します。

①の実例A:米国の交換訪問者プログラムは、連邦規則が金額まで定めている

POINT

米国のJ区分(交換訪問者)プログラムでは、連邦規則が保険の最低補償を金額で定めています。ただし義務を負うのはスポンサー(受入団体)であり、規定の対象範囲を正しく理解しておく必要があります。

米国の高校交換留学の多くは、J区分(交換訪問者)のプログラムとして運営されます。この区分については、米国連邦規則集の 22 CFR 62.14(Insurance)が保険について定めています。まず(a)の冒頭です。

Sponsors must require that all exchange visitors have insurance in effect that covers the exchange visitors for sickness or accidents during the period of time that they participate in the sponsor's exchange visitor program.」(22 CFR 62.14(a) より引用。日本語にすると「スポンサーは、すべての交換訪問者が、そのスポンサーの交換訪問者プログラムに参加している期間について、病気または事故を補償する保険に加入していることを求めなければならない」という趣旨になります。この日本語は当サイトによる訳で、原文の逐語訳ではありません。

ここで見落としてはいけないのが、主語が「Sponsors(スポンサー)」であることです。加入させる義務はスポンサー(受入団体)に課されています。一方で、加入した保険を維持する義務は交換訪問者本人にかかります。同条(i)は、保険の維持を意図的に怠った交換訪問者は「will be deemed to be in violation of these regulations」——これらの規則に違反しているとみなされる、と定めているためです。義務の入口はスポンサー、維持と違反の効果は本人、という二段構えだと理解してください。 そのうえで重要なのは、条文が求めているのは「要件を満たす保険に加入している状態」であって、加入先を特定の会社に限定することではないという点です。同条は(b)で補償の最低金額を、(d)で引受会社の格付けの条件を並べており、基準を満たしていればよいという書き方になっています。実務上は、受入団体が履行を確認しやすいよう加入先をまとめて指定していることが多いのですが、それは団体の運用方針であって条文の帰結ではありません(この段落は当サイトの整理で、条文にこう書かれているわけではありません)。すでに加入している保険がある場合は、(b)の4項目と(d)の引受会社の条件を満たすかどうかを添えて、受入団体に照会する余地があります。

そして同条(b)の末尾は「Minimum coverage must provide:(最低限の補償は次を提供しなければならない)」として、具体的な金額を列挙しています。

22 CFR 62.14(b) が定める最低限の補償(原文を引用)

項目原文内容(当サイトによる要約)
(1) 医療給付Medical benefits of at least $100,000 per accident or illness事故または疾病1件あたり10万ドル以上
(2) 遺体の本国送還Repatriation of remains in the amount of $25,0002万5,000ドル
(3) 医療上の緊急移送Expenses associated with the medical evacuation of exchange visitors to his or her home country in the amount of $50,000本国への医療搬送の費用として5万ドル
(4) 免責金額の上限Deductibles not to exceed $500 per accident or illness事故または疾病1件あたりの免責は500ドルを超えないこと

保護者の方に特に見ていただきたいのは(4)です。免責金額は「500ドルを超えないこと」であって、「ゼロ」ではありません。つまり要件を満たした保険でも、1件あたり最大500ドルまでの自己負担が生じうる設計になっています。さらに同条(c)(2)は、共同保険(co-insurance)の規定を置くことを認めており、その場合、交換訪問者は「may be required to pay up to 25% of the covered benefits per accident or illness」——事故または疾病1件あたり、補償対象となる給付の最大25%までの支払いを求められることがある、としています。

また同条(c)(1)は、既往症(pre-existing conditions)について「現在の業界標準に照らして合理的な」待機期間を設けることを認めています。持病がある場合、この待機期間の扱いは事前に確認しておくべき論点です。

この章の限定について(重要): 22 CFR 62.14 は、交換訪問者(J)プログラムのスポンサーに課された規定です。「アメリカ留学に必要な補償額」という一般的な基準ではありません。私費で現地の高校に在籍する形(F区分)や、他の国への留学には、この金額は適用されません。ご自身のプログラムがどの区分に該当するかは、受入団体・受入校の書類でご確認ください。なお同条(i)は、保険の維持を意図的に怠った交換訪問者は規則違反とみなされ、交換訪問者としての資格の終了(termination)の対象となる旨を定めています。保険は「入って終わり」ではなく「維持するもの」という点にご注意ください。同条(b)は補償が必要な期間について「The period of required coverage is the actual duration of the exchange visitor's participation in the sponsor's exchange visitor program as recorded in SEVIS …」——SEVISに記録されたプログラム参加の実際の期間である、と定めています。米国の高校留学の全体像はアメリカの高校留学、交換留学という形そのものについては高校の交換留学で扱っています。

①の実例B:オーストラリアは、加入を続けること自体がビザの条件

POINT

オーストラリアの学生ビザでは、OSHC(Overseas Student Health Cover)の維持がビザの条件そのものです。金額の基準ではなく「指定の枠組みの保険に入り続ける」という形で要件が組まれています。

同じ「保険が必須」でも、国によって制度の形がまったく違います。米国のJ区分が金額の下限で要件を組んでいるのに対し、オーストラリアは指定された枠組みの保険(OSHC)を維持することを要件にしています。オーストラリア政府のサイト privatehealth.gov.au(連邦オンブズマン=Commonwealth Ombudsman が運営)は次のように説明しています。なお学生ビザの条件そのものの一次情報は内務省(Department of Home Affairs)で、同ページも内務省の学生ビザ(Subclass 500)のページへ案内しています。ここでは保険の側から説明したページを引用します。

If you are a student from overseas on a temporary student visa, it is a condition of your visa to maintain Overseas Student Health Cover (OSHC) for the duration of your visa.」(オーストラリア政府 privatehealth.gov.au「Overseas Student Health Cover」より引用)

同ページは、OSHCが「also includes ambulance cover and limited pharmaceuticals(救急車の費用と、限定的な医薬品も含む)」と説明しています。日本の感覚では「保険の対象」と思わない費目が、現地では大きな出費になることがあるという一例です。 そして、この「limited(限定的)」の中身も同じページに書かれています。医薬品の給付は「Only limited benefits for pharmaceuticals apply, limited to $50 per pharmaceutical item to a maximum of $300 a year for single membership ($600 for a family membership).」——1品目あたり50豪ドル、単身の契約で年間300豪ドル(家族契約は600豪ドル)を上限とする、とされ、続けて「You may face significant out of pocket costs(相当額の自己負担が生じることがあります)」と注意喚起されています。さらに「OSHC does not pay for general treatment (ancillary, or extras cover) such as dental, optical or physiotherapy.」——歯科・眼科・理学療法は対象外です。高校生の生活で発生しやすい費目がここに含まれる点は、見積もりの段階で押さえておく必要があります。 つまり米国のJ区分は免責と共同保険という形で「補償の内側」に自己負担が残り、オーストラリアのOSHCは給付の対象外という形で「補償の外側」に自己負担が残ります。残り方の形が違うだけで、どちらも自己負担がゼロになるわけではありません。

さらに実務上重要なのが、支払いが滞った場合の扱いです。同ページはこう続けます。「As holding OSHC is a visa requirement, take care to maintain your cover at all times. If you do fall behind in payments or renewing your cover, you will be able to continue your cover but you may not be able to claim for services you received while you were in arrears.」——支払いが遅れても契約自体は継続できるが、滞納していた期間に受けたサービスについては請求できない可能性がある、という趣旨です。

米国J区分とオーストラリア学生ビザ|要件の組まれ方の違い

米国・交換訪問者(J)プログラムオーストラリア・学生ビザ
要件の形補償の最低金額を規則で定める(22 CFR 62.14(b))指定の枠組みの保険(OSHC)を維持することをビザの条件とする
義務を負う主体加入させる義務=スポンサー(受入団体)(同(a))/維持する義務と違反の効果=交換訪問者本人(同(i))ビザ保持者本人(ビザの条件として)
自己負担の残り方補償の内側に残る。免責は1件あたり500米ドルを超えない(同(b)(4))/共同保険で最大25%の負担がありうる(同(c)(2))補償の外側に残る。医薬品の給付は1品目あたり50豪ドル、単身の契約で年間300豪ドル(家族契約は600豪ドル)を上限とし、超えた分は自己負担。歯科・眼科・理学療法(general treatment)は対象外(privatehealth.gov.au)
維持を怠った場合規則違反とみなされ、交換訪問者としての資格の終了の対象(同(i))滞納期間中に受けたサービスは請求できない可能性がある

確認ポイント: 同じページには、OSHCの加入義務が免除されうる国(スウェーデン・ノルウェー・ベルギーの学生)と、Medicareに申請できる相互医療協定の対象国(英国・スウェーデン・オランダ・ベルギー・スロベニア・イタリア・ニュージーランド)が挙げられていますが、日本はいずれにも含まれていません。ネット上でこれらの情報を見かけても、日本からの留学には適用されないとお考えください。なお同ページは、相互協定でMedicareを使える場合でも「Having reciprocal access to Medicare does not exempt you from needing to take out OSHC」(OSHCの加入義務は免除されない)としています。上の表は、当サイトが2026年8月25日に取得した両国の公式資料に書かれている内容を対比したものです。両国以外(カナダ・ニュージーランド・イギリスなど)にもそれぞれ異なる仕組みがあり、州や地域によって公的医療の扱いが変わる国もあります。本記事ではすべての国を検証できていないため、渡航先が決まったら必ずその国の政府の公式情報でご確認ください。オーストラリアの高校留学の全体像はオーストラリアの高校留学で扱っています。

②受入団体・受入校の指定は、書類のどこを見ると分かるか

POINT

②は公開情報だけでは確定できないことがあります。届いた書類の中にしか書かれていないこともあるため、確認する場所を知っているかどうかで差がつきます。

①(査証区分の要件)は各国政府の公式情報で誰でも確認できますが、②は違います。募集要項が公開されている場合もありますが、確定した条件は受入団体・受入校がご家庭に送る書類にしか書かれていないことがあるからです。ここを読み落として先に契約してしまうのが、入り直しの典型的なきっかけになります。

  • 募集要項・参加規約の「参加費に含まれるもの/含まれないもの」の欄。保険が参加費に含まれている場合、別に契約する必要はありません。逆に「含まれない」と書かれていても、加入先が指定されていることがあります。
  • 入学許可に関する書類に添えられる案内。「Insurance」「Health Cover」といった見出しの節に、加入すべき保険や提出すべき証明が書かれていることがあります。英文書類の場合、この節だけは訳して確認する価値があります。
  • 提出書類の一覧(チェックリスト)。「保険加入証明書」が提出物に入っていれば、要件が存在するという意味です。いつまでに提出するのかが、保険を決める期限になります。
  • 書類に見当たらない場合は、問い合わせて記録に残す。「保険の指定はありますか。ある場合、最低の補償条件を教えてください」とメールで聞き、回答を保存しておきます。口頭のやり取りだけにしないのは、後で条件が食い違ったときに確認できるようにするためです。

なお受入団体を選ぶ段階であれば、契約前に「保険の指定の有無と、その理由」を確認しておくと、費用の見通しが立てやすくなります。団体に何をどう聞くかは高校生の留学エージェントの選び方で扱っています。

②のあとに検討しがちな論点:クレジットカード付帯の保険は、高校生だと前提が崩れやすい

POINT

「カードに付いている保険で足りないか」は、留学保険とあわせてよく検索される論点です。ただし高校生の留学では、期間・名義・立替という3つの前提がいずれも崩れやすく、そもそも比較の土俵に乗らないことがあります。

クレジットカードに付帯する海外旅行保険で代替できないか、という論点があります。結論から言えば、高校留学では検討の前提そのものが成り立たない場合があるのですが、その理由は「補償が薄いから」だけではありません。3つの前提を順に確認してください。

  1. 1期間の前提:カード付帯の海外旅行保険には、1回の渡航について補償される期間の上限が設けられているのが一般的です。1年間の留学期間を通しでカバーする設計かどうかは、渡航1回あたりの補償期間の上限を約款で確認する必要があります。期間も条件も商品ごとに異なりますので、上限の日数は必ずカード会社の約款でご確認ください。
  2. 2名義の前提:カード付帯の保険は、原則としてそのカードの会員を対象とします。高校生本人が自分名義のカードを持てるかどうかは、各カード会社の入会条件によります。保護者名義のカードの補償がお子さんに及ぶかどうかは「家族特約」の有無と条件次第で、これも商品ごとに異なります。「家族だから当然カバーされる」という前提は成り立ちません。
  3. 3立替の前提:カード付帯の保険では、現地で医療費をいったん立て替えて、帰国後に請求する形になる場合があります。高額の立替を、現地にいる高校生本人が実行できるか——ここは事前に検討しておく必要があります。キャッシュレスでの診療に対応しているかどうかは、保険や医療機関によって異なります。

そして重要なのは、①②で要件が定められている場合、カード付帯の保険では要件を満たせないことがあるという点です。米国のJ区分であれば「Repatriation of remains(遺体の本国送還)」や「医療上の緊急移送」まで含めた補償が求められますし、オーストラリアであれば「OSHC」という指定の枠組みに入っていることが求められます。 さらに 22 CFR 62.14 は(d)で、要件を満たす保険が最低限そなえるべき条件として「Underwritten by an insurance corporation having an A.M. Best rating of “A−” or above」——A.M. Best の格付けが「A−」以上の保険会社によって引き受けられていること(ほかS&P・Weiss・Fitch・ムーディーズの格付け基準や、本国政府の信用による裏づけ、指定スポンサーが提供する団体制度、連邦の要件を満たすHMO等が提供する制度なども選択肢として並びます)を挙げています。つまり要件を満たすかどうかは、補償額を見比べるだけでは判断できません。カードに付いている保険は、こうした条件に合わせて設計されたものではありません。

避けたい

「カードに海外旅行保険が付いているから、留学保険は不要」と判断する

こうすればOK

まず査証区分と受入団体の要件を確認する。 要件がある場合、カード付帯では満たせないことがあります。要件がない場合でも、期間・名義・立替の3つの前提を約款で確認してから判断します

避けたい

保護者名義のカードの補償が、当然お子さんにも及ぶと考える

こうすればOK

家族特約の有無と条件をカード会社に確認する。 対象になる家族の範囲・年齢・同行の要否は商品ごとに異なります

避けたい

補償額の数字だけを見比べて、いちばん大きいものを選ぶ

こうすればOK

免責金額と自己負担の割合もあわせて見る。 米国のJ区分の規則でも、免責は1件あたり最大500ドル、共同保険で最大25%の負担がありうる設計です

避けたい

契約したら手続きは終わり、と考える

こうすればOK

保険は「維持するもの」。 米国のJ区分では維持を意図的に怠ると資格の終了の対象になり(22 CFR 62.14(i))、オーストラリアでは滞納期間中のサービスを請求できない可能性があります

確認ポイント: 本記事はクレジットカード付帯保険の期間の上限、付帯の条件(自動付帯か利用付帯か)、家族特約の内容について、具体的な日数や条件を示していません。これらはカード会社と商品ごとに定められており、当サイトは全社の約款を検証していないためです。判断の前に、必ずお手持ちのカードの約款・保険金額のご案内をご確認ください。

③日本の健康保険からも一部が戻る。ただし「日本の基準」で計算される

POINT

海外で受けた治療について、日本の健康保険から一部の払い戻しを受けられる制度があります。ただし支給額は日本国内の治療費を基準に計算されるため、海外の請求額がそのまま戻るわけではありません。

見落とされがちなのが、日本の公的医療保険の側の制度です。全国健康保険協会(協会けんぽ)は、海外療養費についてこう説明しています。

「海外療養費制度は、海外旅行中や海外赴任中に急な病気やけがなどによりやむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合、申請により一部医療費の払い戻しを受けられる制度です。」(全国健康保険協会「海外療養費」より引用)

給付の対象になるには、同協会が挙げる2つの要件を満たす必要があります。「(1)日本国内で保険診療として認められている医療行為であること」——美容整形やインプラントなど、日本で保険適用になっていない医療行為や薬が使われた場合は対象外です。「(2)療養(治療)を目的で海外へ渡航し診療を受けた場合でないこと」——治療目的の渡航は対象になりません。留学中の急な病気やけがは、通常この2つの要件に照らして判断されることになります。

ここからが、保護者の方に必ず知っておいていただきたい部分です。戻ってくる金額の計算方法です。

日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から、自己負担相当額(患者負担分)を差し引いた額を支給します。」(全国健康保険協会「海外療養費」より引用)

つまり基準は日本の治療費です。海外で請求された金額ではありません。医療費の水準が日本より大幅に高い国で治療を受けた場合、支払った額と戻る額の差は非常に大きくなりえます。海外療養費は「保険に入らなくてよい理由」にはならず、あくまで留学保険の下に敷く二枚目の網として理解するのが正確です。

手続き上の注意も2点あります。同協会は「海外療養費の審査には、通常、数か月お時間をいただきます」としており、すぐに現金が戻る制度ではありません。また「海外療養費の支給は、海外への直接送金はできません。事業主または日本在住のご家族に受け取りを委任してください」とあります。留学中のお子さん本人が現地で受け取ることはできないということです。

  • 現地の医療機関で、診療内容と領収の明細を証明する書類を作ってもらう必要があります。協会けんぽでは診療内容明細書(様式A)・領収明細書(様式B)に加え、領収書原本およびその日本語訳、様式の日本語訳の添付が必要とされ、翻訳文には翻訳者の署名・住所・電話番号の記載も求められます。必要な様式は保険者ごとに異なります。帰国後に海外の医療機関から書類を取り寄せるのは容易ではないため、受診の際に依頼しておくと確実です。
  • ご加入の保険者によって手続きと必要書類が異なります。上記は協会けんぽの説明です。健康保険組合や国民健康保険にご加入の場合は、それぞれの保険者にご確認ください。
  • 申請には期限があります。協会けんぽの場合は「海外で治療費の支払いをした翌日から2年を経過すると、時効により申請できなくなります」とされています。他の保険者では起算点や期間が異なることがありますので、必ずご加入の保険者の案内でご確認ください。

確認ポイント: 本記事では、海外療養費でいくら戻るかを金額で示していません。支給額は傷病の内容と日本国内の診療報酬を基準とした保険者の算定によるためです。また、留学中に日本の健康保険の被扶養者であり続けられるか(住民票や在留の状況によって扱いが変わることがあります)についても、本記事は判断を示していません。ご加入の保険者と、お住まいの市区町村にご確認ください。

保険料も含めて、留学費用の総額を見積もる

本記事は保険料の相場や商品の比較を扱いませんが、**留学費用の総額に積む費目としての概算**であれば、条件を入れて確認できるシミュレーターをご用意しています。

まとめ:比較の前に、決まっている部分を確定させる

POINT

高校生の留学保険は「どれがおすすめか」から入らないほうが早く終わります。査証区分と受入団体の要件を先に確認し、日本の健康保険から戻る分を把握したうえで、残った部分だけを比べます。

保険を売る側が書いた記事は、どうしても「比較して選ぶ」ところから始まります。しかし高校留学では、選ぶ余地が最初から限られている場合があります。米国の交換訪問者プログラムでは連邦規則が金額の下限を定め、オーストラリアの学生ビザではOSHCの維持がビザの条件そのものです。受入団体が加入先を指定していることもあります。ここを確認せずに契約すると、入り直しになって費用が二重にかかります。

そして、日本の健康保険からも一部が戻ります。ただし日本国内の治療費を基準に計算されるため、海外の請求額がそのまま返ってくるわけではありません。この制度は保険の代わりにはならず、下に敷く二枚目の網として位置づけるのが正確です。

確認の順序は、①査証区分の要件 → ②受入団体・受入校の指定 → ③海外療養費の把握 → ④それでも満たされない部分の検討。この順で進めれば、迷う時間そのものが大幅に短くなります。準備全体の逆算は高校留学の準備、エージェントとの契約範囲の確認は高校生の留学エージェントの選び方をあわせてご覧ください。

Q.高校生の留学保険は、いくらの補償額にすればよいですか。

ご自身で決める前に、要件が定められていないかを確認してください。たとえば米国の交換訪問者(J)プログラムでは、22 CFR 62.14(b) が最低限の補償として「事故または疾病1件あたり10万ドル以上の医療給付」「遺体の本国送還2万5,000ドル」「本国への医療搬送5万ドル」「免責は1件あたり500ドルを超えないこと」を定めています。ただしこれはJ区分のスポンサーに課された規定で、他の区分や他の国の一般的な基準ではありません。要件がない場合の金額の決め方については、当サイトは保険の募集を行う立場になく、具体的な推奨は示していません。受入団体と保険会社にご相談ください。

Q.クレジットカードに付いている海外旅行保険では足りませんか。

高校留学では前提が崩れやすく、検討の土俵に乗らないことがあります。確認する点は3つです。1つ目は期間で、カード付帯の保険には1回の渡航について補償される期間の上限が設けられているのが一般的なため、1年間の留学期間を通しでカバーする設計かどうかを約款で確認する必要があります。2つ目は名義で、高校生本人が自分名義のカードを持てるかは各社の入会条件によりますし、保護者名義のカードの補償が及ぶかは家族特約の有無と条件次第です。3つ目は立替で、現地で医療費をいったん立て替える必要が生じる場合があり、高額の立替を現地の高校生本人が実行できるかは事前に検討しておく必要があります期間・条件・特約はいずれも商品ごとに異なるため、必ずお手持ちのカードの約款をご確認ください。

Q.留学先で保険に入るよう指定されました。日本の保険に入り直せますか。

まず「指定に従う義務」が規則上のものか、団体の運用方針かを切り分けてください。米国のJ区分では、規則上の義務を負っているのはスポンサー(受入団体)で(22 CFR 62.14(a))、条文が求めているのは「要件を満たす保険に加入している状態」です。加入先を特定の会社に限定せよ、とは書かれていません。したがって、すでに加入している保険が要件((b)の4項目と(d)の引受会社の条件)を満たすなら、それを添えて受入団体に照会する余地はあります。一方、オーストラリアの学生ビザではOSHCの維持がビザの条件そのものなので、こちらは枠組み自体が指定されています。いずれにせよ、要件を満たさない保険に入っても要件を満たしたことにはなりません。日本の保険で置き換えられるかどうかは、受入団体・受入校に直接ご確認ください。指定に加えて別途上乗せしたい補償がある場合は、その部分だけを検討することになります。

Q.留学中に日本の健康保険から治療費が戻ると聞きました。本当ですか。

一部が戻る制度があります。海外療養費制度といい、「やむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合」に申請により一部の払い戻しを受けられます。ただし2点ご注意ください。支給額は「日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額」から自己負担相当額を差し引いた額で、海外で請求された金額がそのまま戻るわけではありません。医療費の水準が高い国では差が非常に大きくなります。また審査には通常、数か月かかり、海外への直接送金はできません(日本在住のご家族などに受け取りを委任します)。これは協会けんぽの説明で、健康保険組合や国民健康保険では手続きが異なりますので、ご加入の保険者にご確認ください。

Q.保険に入っていれば、自己負担はゼロになりますか。

ゼロになるとは限りません。米国のJ区分の要件を例にとると、免責金額は「1件あたり500ドルを超えないこと」と定められており(22 CFR 62.14(b)(4))、ゼロと定められているわけではありません。さらに同条(c)(2)は共同保険の規定を認めており、その場合、交換訪問者は事故または疾病1件あたり、補償対象となる給付の最大25%までの支払いを求められることがあります。また同条(c)(1)は既往症について合理的な待機期間を設けることを認めています。持病がある場合は、待機期間の扱いを加入前に必ず確認してください。

Q.保険の手続きは、準備のどの段階でやればよいですか。

ビザの種類と受入校・受入団体が確定した直後です。それより早く比較検討を始めると、指定があった場合に入り直しになります。逆に遅すぎると、加入証明の提出が入学手続きやビザの条件に絡んでいた場合に間に合いません。高校留学の準備の逆算スケジュールでは、受入校の書類が届いてビザ手続きに入る「4〜2か月前」の段階に置いています。なお米国のJ区分では、保険は加入して終わりではなく期間を通じて維持するもので、意図的に維持を怠ると交換訪問者としての資格の終了の対象になります(22 CFR 62.14(i))。

そもそもどの形の留学が合うか、整理するところから

交換留学か私費留学かで、保険の要件も手続きの流れも変わります。ご家庭の状況から留学のタイプを整理する診断をご用意しています。