このページの要点

高校留学の持ち物は、リストを作る前に「許可・申告・検疫の判断が要る物」を先に確定させます。

  • 薬には出発2週間前という締切がある:医療用麻薬と医薬品である覚醒剤原料は、自己の疾病の治療のためであっても「事前に地方厚生(支)局長の許可」が必要で、申請は「出国日又は入国日の2週間前までに提出」と定められています(厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部)。許可書の発行に手数料はかかりません。
  • 現金は100万円が境目で、申告場所が分かれる:「100万円(北朝鮮を仕向地とする輸出にあっては10万円)相当額を超える現金等」を携帯して出国する場合、「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」の提出が必要です。機内預けにするなら「航空会社に預ける前に」出発ロビー内等の税関事務室で申告します(税関)。
  • 食品は「持ち込まない」ではなく「申告する」:ニュージーランドでは申告漏れ自体が「an offence under section 154N(21) of the Biosecurity Act 1993」で、うっかりでも NZD$400 の即時罰金の対象です。MPIは「There is no excuse」と明記しています。

留学の荷造りというと、まずリストを探すご家庭が多いと思います。しかし高校留学で実際に問題になるのは、衣類や文房具ではありません。スーツケースに入れる前に、許可を取るのか、申告するのか、そもそも持って行かないのかを判断しなければならない物——具体的には薬・現金・食品・電池です。ここを見落とすと、出発の直前になって間に合わない、あるいは到着した空港で足止めされる、という形で表面化します。しかも薬の許可の申請には「原則、出入国の2週間前まで」という受付期限があり、間に合わない場合は個別に相談するほかありません。本記事は、日本の法令・政府資料と渡航先の政府情報の原文から、判断の順序を整理します。準備全体の逆算は高校留学の準備をご覧ください。

本記事の出典と、扱わないことについて: 本文の手続き・数値・引用は、厚生労働省 地方厚生(支)局麻薬取締部(「麻薬・覚醒剤原料などを携帯して日本を出入国する方へ」「携帯による医療用麻薬等の輸入・輸出手続きに関する手引き」および「携帯による医薬品である覚醒剤原料の輸入・輸出手続きに関する手引き」)、関東信越厚生局「麻薬、向精神薬及び医薬品である覚醒剤原料の携帯輸出入許可申請について」(更新日:2025年2月28日)、税関(財務省)「支払手段等の携帯輸出入の手続」国土交通省航空局の液体物持込制限資料および「モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて」(令和8年4月14日報道発表)、ニュージーランド Ministry for Primary Industries(MPI)米国 U.S. Customs and Border Protection(CBP) の各原典を、当サイトが2026年8月27日に取得したものです。なお本記事は、個別の薬が規制の対象かどうかの判断は行いません(成分での該当性の判断は医師・歯科医師・薬剤師の領分です)。また航空会社の手荷物許容量、国際郵便の料金・重量上限、渡航先の電圧やプラグ形状は、会社・路線・国で異なり改定されるため列挙しません制度・金額・要件は改定されます。必ず出発前に公式でご確認ください。

結論早見表|持ち物は「3つの層」に分けると迷わない

POINT

持ち物を「①手続きの判断が要る物 ②失うと代えがきかない物 ③現地で買える物」の3層に分けます。多くのリストは③から始まりますが、荷造りの直前に締切が来るのは①だけです。①から着手してください。ただし②のうち予防接種だけは例外で、新規に受ける場合は渡航の12〜10か月前から動く必要があります(→高校留学の準備)。

市販のチェックリストが役に立ちにくいのは、性質のまったく違う物が一列に並んでいるからです。歯ブラシと処方薬とパスポートが同じリストに載っていると、どれも同じ重さの「買い忘れ」に見えてしまいます。しかし実際には、歯ブラシは現地で買えますが、処方薬の許可は出発の2週間前を過ぎたら間に合わない可能性があります。この違いを先に立てるのが、荷造りでいちばん効きます。

高校留学の持ち物|3つの層と、それぞれの締切

何が入るか判断することいつまでに
①手続きの判断が要る物医療用麻薬・医薬品である覚醒剤原料/向精神薬/100万円相当額を超える現金等/食品・植物・動物由来の物/モバイルバッテリー許可を取るか、申告するか、持って行かないか。荷造りの前に決める遅くとも出発の2週間前(薬の許可申請の受付期限。原典は「原則」)。診断書の取得を含めると1か月前
②失うと代えがきかない物パスポート/査証(ビザ)/入学許可書・受入書類/保険証書/予防接種の記録/英文の処方箋・診断書/眼鏡・コンタクト/常用している薬原本・コピー・データの3系統に分けて分散させる書類が手元に揃い次第(渡航の1〜2か月前が目安)
③現地で買える物衣類/文房具/シャンプー等の日用品/お土産重量と価格で判断する。現地で買えるものは持たない直前でよい

この記事は①→②→③の順に説明します。①だけは、ご家庭の判断ではなく法令と各国政府の規定で決まっている部分なので、最初に確定させてください。②と③は、確定した①の残りスペースで考えれば足ります。

①-1 薬:出発の2週間前という受付期限がある

POINT

医療用麻薬と医薬品である覚醒剤原料は、自分の治療のためであっても、事前に地方厚生(支)局長の許可が必要です。申請の期限は出国日の2週間前まで。手数料はかかりませんが、医師の診断書が要ります。

まず前提です。麻薬は、麻薬及び向精神薬取締法により、厚生労働大臣の許可を受けた麻薬輸入業者・麻薬輸出業者でなければ輸出入できません。ただし、自己の疾病の治療のために麻薬を施用している人が出入国する場合には例外規定が設けられており、「事前に地方厚生(支)局長の許可を受ければ」携帯して輸出入できる、という建て付けになっています(厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部)。医薬品である覚醒剤原料についても、覚醒剤取締法に同様の例外規定があります。

ここで保護者の方に知っておいていただきたいのは、「うちの子が使っているのは病院で出された普通の薬だから関係ない」とは限らないということです。麻薬取締部の手引きに載っている向精神薬の総量一覧表は、第1種から第3種までの向精神薬を成分の一般名で列挙したもので、そこには睡眠薬・抗不安薬や抗てんかん薬として処方されることのある成分(フルニトラゼパム、エチゾラム、アルプラゾラム、フェノバルビタールなど)も含まれています。「医薬品である覚醒剤原料」のほうは、国内で承認されている品目がごく限られています。麻薬取締部の「携帯による医薬品である覚醒剤原料の輸入・輸出手続きに関する手引き」は、「令和6年9月現在、医薬品医療機器等法第14条第1項に基づき医薬品の製造販売承認されているもの」として、セレギリン(商品名:エフピーOD錠2.5、セレギリン塩酸塩錠2.5mg「アメル」「タイヨー」)とリスデキサンフェタミン(商品名:ビバンセカプセル20mg、同30mg)の2成分を表で挙げています該当するかどうかは薬の商品名では判断できず、成分で決まります。関東信越厚生局も、総量の一覧表について「表(医療用向精神薬を携帯して出入国する際の総量一覧表)にはお薬の成分の一般名が記されています。いわゆるお薬の名前とは異なる場合があります。」としたうえで、「ご自身の使用しているお薬がこれらの向精神薬を含んでいるかどうかについては、医師、歯科医師、薬剤師などに確認してください」と案内しています。

薬の区分と、日本を出国するときに必要な手続き(出国時)

区分事前の許可必要になるもの期限
医療用麻薬必要(地方厚生(支)局長の許可)①携帯輸出許可申請書1部/②医師の診断書1通(日本語又は英語。患者の住所・氏名、必要とする理由、品名・規格・一日量の記載)/③携帯する麻薬の品名が確認できる資料(お薬手帳や薬剤情報提供書のコピーなど)/④宛先を明記した返信用封筒1枚。手数料はかからない出国日の2週間前までに提出
医薬品である覚醒剤原料必要(同上)同上(様式は麻薬とは別。両方を1枚の申請書にまとめることはできない。診断書は合わせて1通で可)出国日の2週間前までに提出
向精神薬(注射剤以外)不要総量が一覧表に示す量以下なら手続き不要超える場合は「書類」を所持—(ただし書類の取得に医師の受診が要る)
向精神薬(注射剤)不要量に関わらず「書類」を所持

表にある「書類」とは、関東信越厚生局の説明では「自己の疾病の治療のため特に必要であることを医師が証する書類」で、例として「処方せんの写し」「患者の氏名及び住所並びに携帯を必要とする向精神薬の品名及び数量を記載した医師の診断書」が挙げられています。つまり、主治医に一度かかる必要があるということです。ここが2週間の締切より手前にあるので、実務上は出発の1か月前には動き出しておくのが安全です。

申請書の記入例に「留学のため」があります。 麻薬取締部の「携帯による医療用麻薬等の輸入・輸出手続きに関する手引き」は、申請書の「入国(出国)する理由」欄の書き方について「『観光のため』、『帰国のため』、『仕事のため』、『留学のため』等と記入してください」と説明しています。留学は想定された用途であり、特別な手続きではありません。期限までに申請すれば通常の事務手続きとして処理されます。過度に不安になる必要はありませんが、期限だけは守ってください。

そして、この制度でもっとも見落とされやすい注意点があります。関東信越厚生局は「郵便によって輸入(輸出)したり、知人等に託して麻薬等を輸入(輸出)することはできません」と明記しています(本人と一緒に行動する付添人・介護人が代わりに携帯するのは差し支えないとされています)。つまり、これらに該当する薬については、出発後に日本のご家族が国際郵便で送るという手当てができません。ここで射程に注意してください。この禁止がかかるのは、関東信越厚生局が「麻薬等」と定義している麻薬・向精神薬・医薬品である覚醒剤原料です。それ以外の一般的な薬まで一律に送れないわけではありません。ただし該当する場合は、1年間の留学では決定的で、「足りなくなったら送ればいい」という前提が成り立たなくなります。

忘れやすい2点:帰りの手続きと、そもそも持ち出せない薬。帰国分の申請も要ります。手引きは「輸出し再び輸入する場合(医療用麻薬を持って日本から出国し、残った麻薬を日本に持ち帰る場合)…には、①の診断書と②及び③の申請書双方が必要です」としています。出国用だけ取って帰国分を忘れると、帰りで詰まります。また向精神薬については、関東信越厚生局が「用法・用量からみて一ヶ月分を超える量を携帯して入国する場合は、輸入確認証の手続きも必要」としており、入国時のほうが条件が厳しくなります。許可を取っても持ち出せない薬があります。同局は「携帯輸入(輸出)が認められない薬物」としてヘロイン(ジアセチルモルヒネ)/あへん末(あへん散、あへんチンキを含む)/覚醒剤/メサドン(痛み止めとして服用している場合を除く)を挙げています。なお麻薬取締部は、許可後について「日本語の輸入(輸出)許可書と英語の輸入(輸出)許可証明書が1通ずつ交付されますので、入国(出国)時に日本の税関にお薬と一緒に提示して下さい」と案内しています。この許可書は「代えがきかない書類」なので、手荷物に入れてください。

①-2 薬のもうひとつの壁:渡航先の規制と「90日分」という目安

POINT

日本の許可は、日本を出入国するためのものです。渡航先が持ち込みを認めるかどうかは別の話で、渡航先の規制は在日大使館・領事館に確認します。米国は英語の処方箋と原容器を求め、目安として90日分を超えないよう案内しています。

ここは誤解が非常に多いところです。麻薬取締部は「この許可はあくまで日本を出入国する際のものですので、渡航先の外国における麻薬・覚醒剤原料の持込みを保証するものではありません」と明記しています。関東信越厚生局も「訪問する国の在日大使館や領事館などに、事前に許可が必要かどうか必要な場合はその手続きについて問い合わせていただき、トラブルなどが発生しないよう十分にご注意ください。」と案内しています。日本側の許可と、渡航先の許可は、別々に確認する必要があります。

渡航先側の例として、米国の税関・国境警備局(CBP)の案内を見てみます。CBPは米国市民以外の渡航者について、「In general, you should have with you a valid prescription or doctor's note—written in English—to bring medication to the U.S.(一般に、米国へ薬を持ち込むには、英語で書かれた有効な処方箋または医師の書面を携帯すべきです)」としています。さらに「The medication should be in its original container with the doctor's instructions printed on the bottle.(薬は、医師の指示が容器に印字された元の容器のままであるべきです)」とし、原容器がない場合は処方箋の写しか医師の書面を持参するよう求めています。

そして、高校留学にとって重要なのがこの一文です。CBPは「Travel with no more than you need for your personal use during your stay. A rule of thumb: Bring no more than a 90-day supply of medication.(滞在中の個人使用に必要な量を超えて持ち込まないこと。目安として、90日分を超える量は持ち込まないこと)」としています。1年間の留学で、1年分の薬をまとめて持たせるという計画は、この目安と正面から衝突します。ただしCBPは、この直後に受け取り方も示しています。「If you're staying longer than 90 days, you may have additional medication sent to you by mail or courier.(90日を超えて滞在する場合は、追加の薬を郵送または宅配便で送ってもらうことができます)」とし、そのときは自分自身の使用のために送られたことを示す書類——「a copy of your visa and passport, a letter from your doctor, and a copy of your prescription (in English)」——を提示できるようにしておくべきだとしています。つまり米国側は郵送での補充を想定しています。ただしCBPは医薬品の節の冒頭で、「If the medication is also a Controlled Substance, you will also need to comply with the requirements of the Drug Enforcement Administration (DEA).(その薬が規制物質にも当たる場合は、麻薬取締局(DEA)の要件にも従う必要があります)」という前提を置いています。本章で扱っている医療用麻薬や覚醒剤原料は、米国側でも規制物質に当たりうる区分です。そのうえで注意すべきは日本側で、麻薬・向精神薬・医薬品である覚醒剤原料に該当する薬は、日本から郵便で送り出すこと自体ができません(前章のとおり)。どちらの規制も確認したうえで、該当するなら現地で処方を受け直す道筋を用意しておく必要があります。

常用している薬がある場合に、出発前に決めておく3つのこと

決めることなぜ必要か誰に相談するか
日本から携行できる量の上限日本側の手続き(麻薬・覚醒剤原料は許可、向精神薬は総量と書類)と、渡航先側の受け入れ可能量の両方で決まる主治医・薬剤師/地方厚生(支)局麻薬取締部/渡航先の在日大使館・領事館
現地で処方を受け直す道筋麻薬等に該当すると日本から郵送で送り出せないため、長期留学では現地の医療機関につながる必要がある。同じ成分の薬が現地にあるとは限らない主治医(成分名での紹介状・英文の診断書)/受入団体・受入校/加入する保険
英文の証明書の内容違法薬物の所持を疑われるトラブルを避けるため。商品名は海外で通用しないことがあるかかりつけの医師(必ず成分名で記載してもらう

3つ目について、関東信越厚生局は「海外で麻薬等の処方薬を所持する場合、違法薬物所持の疑いをかけられるなどのトラブルを避けるために、上記の条件に係わらず英文の医師の証明書を携帯することをお勧めします」「麻薬等の商品名は海外では通用しない場合がありますので、必ず成分名で記載するようにしてください」と案内しています。手続き上は不要な場合でも用意しておくことが推奨されている、という位置づけです。

確認ポイント:市販薬とサプリメントも「成分」で見ます。 薬局で買える風邪薬や鎮痛薬、市販の睡眠改善薬、海外製のサプリメントの一部には、国によって規制の対象となる成分が含まれていることがあります。本記事では個別の成分の可否を判断しません。渡航先での取り扱いは国ごとに異なるため、常用しているものがある場合は、成分名を控えたうえで、渡航先の在日大使館・領事館にお問い合わせください。厚生労働省も「海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続き」として一部の国の情報を掲載しています。

①-3 現金:100万円が境目で、しかも申告場所が分かれる

POINT

100万円相当額を超える現金等を持ち出す場合、税関への申告が必要です。見落とされやすいのは申告する場所で、スーツケースに入れて預けるなら、航空会社のカウンターに預ける前に済ませなければなりません。

税関は「100万円(北朝鮮を仕向地とする輸出にあっては10万円)相当額を超える現金等を携帯して出国又は入国する場合には、出国(入国)時に、「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」の税関への提出が必要です」と案内しています。留学の場合、入学金や1年分の滞在費を現金で持たせようとすると、この基準に届くことがあります

注意すべきは、「現金だけ」で数えるのではないという点です。税関が挙げる申告対象は次のとおりで、これらの合計額で判定します。

  • 現金(本邦通貨、外国通貨)
  • 小切手(トラベラーズ・チェックを含む)
  • 約束手形
  • 有価証券(株券、国債等)
  • 上記とは別に、金の地金(純度90%以上)の重量が1kgを超える場合も申告対象

そして実務でいちばん引っかかるのが申告する場所です。税関は出国時について、機内預けにする場合と手荷物にする場合を分けて案内しています。現物を確認される場合があるため、預けてしまった後では申告できません。

支払手段等の携帯輸出・輸入申告書を提出する場所

場面どこで申告するか気をつけること
出国時・機内預けにする場合出発ロビー内等の税関事務室航空会社に預ける前に申告を行う必要があります。チェックイン前に立ち寄る時間を見込んでください
出国時・機内手荷物にする場合出国審査場前の税関出国カウンター保安検査・出国審査の前です
入国時税関検査場帰国時も同じ基準で判定されます

申告書の様式は全国の空港や港の税関に備え付けられているほか、税関のウェブサイトから印刷して事前に記入していくこともできます。空港での所要時間を減らしたい場合は、印刷して記入済みで持参するのが確実です。なお、金額の大小にかかわらず、多額の現金を高校生本人に持たせること自体のリスク(紛失・盗難)は別途ご検討ください。当サイトは金額や送金手段の推奨は行っていませんが、費用の全体像は高校留学の費用で確認できます。

①-4 食品・お土産:「持ち込まない」ではなく「申告する」

POINT

食品や植物・動物由来の物は、渡航先の生物検疫にかかります。ニュージーランドでは申告漏れそのものが違反で、うっかりでもNZD$400の即時罰金の対象です。正解は「持って行かない」ではなく「申告する」です。

ホームステイ先へのお土産、日本の食べ物、インスタント食品——ここは「持って行っていいのか、だめなのか」で悩みやすいところです。しかし各国の検疫制度の設計を見ると、問いの立て方自体を変えたほうが正確です。多くの国は「持ち込みの可否」の前に「申告の義務」を置いています。申告さえすれば、検査を受けて通ることもあれば、その場で処分になることもありますが、罰せられるのは「申告しなかったこと」です。

この構造がもっとも明快なのがニュージーランドです。MPI(Ministry for Primary Industries)は「You're breaking the law (the Biosecurity Act 1993) if you don't declare risk goods you have in your possession.(所持しているリスク品を申告しなければ、生物安全保障法1993に違反することになります)」としたうえで、申告しなかった理由が「意図せず」「うっかり」「忘れた」「不注意だった」「ルールや荷物の中身を知らなかった」のいずれであっても違反であると列挙し、「There is no excuse(言い訳はできません)」と見出しに掲げています。

ニュージーランドの生物検疫|申告と罰則(MPIの説明より)

項目MPIの説明
根拠と性質an offence under section 154N(21) of the Biosecurity Act 1993」であり「a strict liability offence(厳格責任の犯罪)」。MPIは「スピード違反や駐車違反のようなもの」と説明しています
申告漏れの罰則The penalty for a false declaration is an NZD$400 infringement fee – commonly called an instant fine.」。あわせて「You do not get a criminal conviction.(前科にはなりません)」とも明記されています
意図的な密輸の場合If you're convicted of deliberate smuggling, you could be fined up to NZD$100,000 and be sentenced to up to 5 years in prison.
申告の方法New Zealand Traveller Declaration(NZTD)を提出。「All travellers into New Zealand must complete a declaration even if you don't have anything to declare.」(申告する物がなくても全員が提出)
申告した場合Declared risk goods may be inspected to ensure it's safe for them to be brought into New Zealand.」。申告=没収ではありません
捨てる選択肢dispose of undeclared risk goods in marked amnesty bins on your arrival to avoid being searched or fined」(到着時に指定の回収箱で処分すれば、検査や罰金を避けられる)

保護者の方に直接関係する一文もあります。MPIは罰金を避ける方法として、「making sure you know what is in your bags and luggage, and the baggage of anyone under the age of 18 travelling with you自分の荷物と、同行する18歳未満の人の荷物の中身を把握しておくこと)」を挙げています。親が持たせたお土産の中身を本人が把握していない、という状態がいちばん危険だということです。荷造りを本人任せにせず、何を入れたかを一緒に確認して、リストを共有しておくことをおすすめします。

MPIがリスク品として挙げている範囲は、想像よりずっと広いものです。「Any food – cooked, uncooked, fresh, preserved, packaged or dried.調理済み・未調理・生鮮・保存食・包装食品・乾物を問わずあらゆる食品)」に加え、はちみつ・乾燥きのこ・スパイス・ナッツといった常温保存の食材、木製品や竹・籐の工芸品、使用済みの屋外用品(「used outdoor equipment, including dirty boots and dirty shoes」=泥のついた靴を含む)も対象です。部活で使っていたスパイクやスニーカーをそのまま持って行く、というのは典型的な引っかかり方です。

確認ポイント:他国の罰金額は本記事では扱いません。 ニュージーランドについては当サイトが原典(MPI)を取得して数値を確認しましたが、オーストラリアの農業・水産・林業省およびオーストラリア国境警備隊のページは、当サイトからの取得ができませんでした。したがってオーストラリアやその他の国の罰金額は本記事には書きません(未確認の数値を載せないという方針によるものです)。渡航先の検疫の扱いは、渡航先の政府機関の公式サイトで確認してください。探し方は「国名+biosecurity/quarantine/customs declaration」で政府ドメイン(`.govt.nz`・`.gov.au`・`.gov`・`.gc.ca`・`.gov.uk` など)のページに当たるのが確実です。国別の制度はニュージーランドの高校留学アメリカの高校留学でも触れています。

①-5 機内に持ち込む物:モバイルバッテリーのルールは2026年4月に変わった

POINT

モバイルバッテリーは預入手荷物に入れることが禁止されています。さらに2026年4月24日から、機内持込みは2個(160Wh以下)まで、機内での充電は不可というルールが加わりました。

留学の荷造りで見落とされやすいのが、ここ数年でルールが変わった項目です。モバイルバッテリーがその代表で、少し前の持ち物リストをそのまま使うと現行のルールに合いません。国土交通省航空局は令和8年(2026年)4月14日の報道発表で、ICAO(国際民間航空機関)の国際基準の緊急改訂を受けた新しいルールを2026年4月24日から適用すると公表しました。

モバイルバッテリーの取り扱い(国土交通省航空局の資料より)

項目ルールいつから
預入(受託)手荷物預入(受託)手荷物に入れることは禁止されています。必ず機内に持ち込んでください。従来から
容量の上限ワット時定格量が160Whを超えるものは持ち込み禁止されています。従来から
保護端子に絶縁テープを貼る、ケースや収納袋に入れる、複数のバッテリーや金属品と同じ袋に入れないなど、ショートを防ぐこと従来から
保管場所座席上の収納棚に収納せず、座席ポケットなどお手元に保管してください。従来から
個数機内持込みのモバイルバッテリーは2個(160Wh以下に限る)まで2026年4月24日から
機内での充電機内においてモバイルバッテリーへの充電をしないこと」「機内においてモバイルバッテリーから他の電子機器への充電をしないこと2026年4月24日から

容量は製品に「mAh」で書かれていることが多いので、換算が必要です。航空局の資料は計算式を示しています。ワット時定格量(Wh)=定格容量(mAh)×定格電圧(V)÷1,000。資料の例では、定格容量27,000mAh・定格電圧3.7Vの製品が99.9Whと計算されています。手持ちの製品の表示を、出発前に確認しておいてください。なお国土交通省は、これらのルールの一部について航空法にもとづく罰則の対象となりうるとしています。

液体物の制限も、留学の荷造りでは意外に効きます。航空局の資料によれば、国際線では「すべての液体物は、100ミリリットル以下の容器に入れます。(100ミリリットルを超える容器に100ミリリットル以下の液体物が入っていてもいけません。)」「それらの容器をジッパー付の容量1リットル以下の透明プラスチック製の袋に余裕をもって入れます。」「旅客1人当たりの袋の数は1つのみとします。」とされています。この制限は受託手荷物には適用されませんので、化粧品や洗面用品はスーツケースに入れるのが基本です。

知っておくと助かる例外:医薬品は液体物制限の適用除外です。 航空局の資料は「医薬品、ベビーミルク/ベビーフード、特別な制限食等については、適用除外です。(機内で必要な量に限り適用除外となりますので、検査員まで申告願います。その際、医薬品については、処方箋の写し、薬袋、医師の診断書等の提示をお願いします。)」と明記しています。常用している薬は、機内で必要な分を手元に持てます。そのときに提示を求められるのが処方箋の写し・薬袋・診断書なので、薬の書類は預けずに手荷物に入れておくのが正解です。なお「液体物」には「液体」に加えて「ジェル類」「エアゾール」が含まれ、容器に入れないと形状を保てない半液体状物も対象です。また航空局は「保安上の観点で問題ない液体物等であっても、別途、検疫等の観点から、海外への持ち出しが禁止されている可能性もあります」とも注意を促しています。保安検査を通ったことと、渡航先の検疫を通ることは別です。

②失うと代えがきかない物は、原本・コピー・データの3系統に分ける

POINT

書類は「1つ持つ」のではなく「3系統に分ける」と考えます。原本は本人の手荷物、コピーは別の荷物、データはクラウド。紛失したときに再取得の交渉ができる状態を作ります。

②の層は、現地で買い直せません。パスポートを紛失すれば在外公館での手続きになり、入学許可書や受入書類を失えば発行元に再発行を依頼することになります。いずれも「元の情報が手元にあるか」で復旧の速さがまったく違います。そこで、次の3系統に分けて持たせるのが実務的です。

代えがきかない物の持たせ方(3系統)

系統何をどこに
原本パスポート/査証(ビザ)/入学許可書・受入書類/保険証書/英文の処方箋・診断書/薬の許可書本人の手荷物(預けない)。薬の書類は機内で提示を求められる可能性があるため必ず手元に
紙のコピーパスポートの顔写真ページ/査証/受入書類/保険証券番号/緊急連絡先/薬の成分名と用法別の荷物(預入手荷物やサブバッグ)。原本と一緒に持たない
データ上記すべてのスキャンまたは撮影データ本人と保護者の双方がアクセスできるクラウド。ご家庭でも同じものを保管する

予防接種の記録も②に入ります。受入校が接種証明の提出を求めることがあり、日本の母子健康手帳の記録を英文にしてもらう必要が生じる場合があるためです。新規に接種が必要な場合、シリーズで受ける種類は接種の間隔が空くため12〜10か月前から動く必要があることがあります(なお予防接種実施規則が定めているのは定期接種の方法で、留学のための任意接種を直接規律するものではありません)。この点は高校留学の準備で詳しく扱っています。保険証書については高校生の留学保険をご覧ください。

未成年の渡航同意書は「要るかどうか」を先に確認する

「留学 親 同意書」で検索されるように、未成年の渡航にともなう親権者の同意書が必要になる場面があります。ただし、必要かどうかは一律ではありません。航空会社が未成年者単独搭乗の扱いとして求める場合、渡航先の入国管理が求める場合、受入団体や受入校が求める場合があり、それぞれ様式も必要事項も異なります。当サイトでは「すべての国で必要」といった断定は行いません。確認する先は次の3つです。

  1. 1搭乗する航空会社:未成年者単独搭乗の取り扱い、必要な書類と申込の期限(乗り継ぎがある場合は特に確認が必要)
  2. 2渡航先の在日大使館・領事館:入国にあたって親権者の同意を示す書類が求められるか
  3. 3受入団体・受入校:団体独自の同意書・委任状の様式があるか(カストディアンの届出が要る国もあります)

いずれも英文が求められることが多く、公証が必要になる場合もあります。「同意書が要ると分かってから作る」と間に合わないことがあるので、受入先が確定した時点で3か所に問い合わせておくのが安全です。

③現地で買える物と、日本から持っていく価値がある物

POINT

③の判断基準はシンプルで、「現地で同じものが手に入るか」です。手に入らないのは、体に合わせて選んでいる物と、日本固有の規格の物。それ以外は現地調達で足ります。

衣類・文房具・シャンプー・タオル——このあたりは、留学先が先進国であればほぼ確実に現地で買えます。それでも日本から持って行く価値があるのは、次の2種類だけと考えると整理しやすくなります。

日本から持っていく価値がある物/現地で買えばよい物

区分具体例理由
体に合わせて選んでいる物眼鏡・コンタクトレンズ(度数の控えも)/履き慣れた靴/肌に合う洗顔料やスキンケア/生理用品/下着サイズ規格や成分が国によって違い、合うものを探す時間がかかるため。留学の最初の数週間は探し物に時間を使えない
日本固有の規格の物常用薬(手続きを済ませたもの)/日本の教科書・参考書/日本の電子機器を使うための変換プラグ/日本語の辞書類現地に同等品がない、または見つけにくいため
現地で買えばよい物衣類全般/文房具/シャンプー・ボディソープ等の日用品/傘・タオル・寝具の補助品重量あたりの価値が低い。持って行くほど預入手荷物の重量制限を圧迫する

「留学 持ち物 女子」という調べ方をされる方が多いのですが、男女で分けるより「体に合わせて選んでいる物かどうか」で分けるほうが実用的です。生理用品や下着、肌に合うスキンケアは、現地の製品が体質や規格に合わないことがあり、合うものを探すために貴重な最初の数週間を使うことになりがちです。数か月分を持って行き、現地で試しながら切り替えるのが現実的です。なお、女子生徒の安全面の備えについては女子高校生の留学の安全で別途扱っています。

確認ポイント:電圧とプラグ形状は国ごとに確認してください。 渡航先の電圧・周波数・プラグ形状は国(さらに同じ国でも地域)によって異なり、本記事では一覧を掲載しません(一覧は改定を追いきれず、古い情報が残るためです)。ドライヤーやヘアアイロンなど発熱する機器は、変圧器を介しても対応できないことがあります。渡航先の電圧に対応した製品かどうかを、機器本体の表示(「INPUT 100-240V」等)で確認したうえで、変換プラグの形状は渡航先の政府観光局や在日大使館の案内でご確認ください。

荷物は「持つ・送る・現地で買う」に分ける。ただし送れない物がある

POINT

1年間の荷物をすべて機内に持ち込むことはできません。持つ・送る・現地で買うの3つに割り振りますが、麻薬・向精神薬・医薬品である覚醒剤原料に該当する薬は「送る」に入れられないことに注意してください。

長期の留学では、預入手荷物だけで全部を運ぶのは無理があります。そこで「持つ・送る・現地で買う」の3つに割り振るわけですが、ここで①の層の知識が効いてきます。

持つ・送る・現地で買うの割り振り

方法向いている物注意
持つ(機内・預入)書類の原本/常用薬と関連書類/眼鏡・コンタクト/到着後2〜3週間の生活に必要な物/モバイルバッテリー(機内持込のみ)航空会社の無料手荷物許容量は会社・路線・運賃で異なります。購入した航空券の条件を必ず確認してください
送る(国際郵便・クーリエ)季節外の衣類/教科書・参考書/すぐには使わない生活用品麻薬・向精神薬・医薬品である覚醒剤原料は郵送できません。また送り先の国の輸入規制と関税がかかり、食品・植物由来品は検疫の対象です
現地で買う日用品/文房具/衣類/寝具の補助品到着直後は買い物に行けないことがあるため、最初の数日分だけは持って行く

「送る」に入れられない薬があるという点は、繰り返しになりますが重要です。関東信越厚生局は「郵便によって輸入(輸出)したり、知人等に託して麻薬等を輸入(輸出)することはできません」と明記しています。ここでいう「麻薬等」は、同局が麻薬・向精神薬・医薬品である覚醒剤原料と定義しているものです。該当しない薬まで一律に送れないわけではありませんが、該当する場合は長期留学で「現地で処方を受け直せる状態」を出発前に作っておくことが、荷造りそのものより重要になります。主治医に成分名を記載した英文の紹介状を用意してもらい、受入団体に現地の医療機関へのつなぎ方を確認しておいてください。滞在先での生活の立ち上げについては高校留学のホームステイもあわせてご覧ください。

よくある失敗と、その回避のしかた

POINT

荷造りの失敗は「入れ忘れ」ではなく、「判断が要る物を、判断せずに入れた(あるいは外した)」ことで起きます。

避けたい

持ち物リストを探すところから荷造りを始める

こうすればOK

先に「許可・申告・検疫の判断が要る物」があるかを確認する。薬・現金・食品・電池の4つを点検してから、リストに取りかかる

避けたい

「病院で出された普通の薬だから大丈夫」と考える

こうすればOK

商品名ではなく成分名で確認する。医療用麻薬・医薬品である覚醒剤原料は事前の許可が必要で、該当するかは医師・歯科医師・薬剤師に確認する

避けたい

1年分の薬をまとめて持たせる計画にする

こうすればOK

日本側の携行可能量と渡航先の受け入れ量の両方を確認する。米国CBPは目安として「90日分を超えない」としている。長期留学は現地で処方を受け直す前提で組む

避けたい

薬が該当区分かを調べずに「足りなくなったら日本から送ればいい」と考える

こうすればOK

麻薬・向精神薬・医薬品である覚醒剤原料は、日本から郵送も他人への託送もできない。(米国は90日超の滞在について郵送での補充を認めているが、規制物質に当たる場合はDEAの要件にも従う必要がある)。該当するなら出発前に、現地で処方を受け直す道筋を用意しておく

避けたい

現金を多めに持たせ、スーツケースに入れて預ける

こうすればOK

100万円相当額を超えるなら、航空会社に預ける前に出発ロビー内等の税関事務室で申告する。手荷物にする場合は出国審査場前の税関出国カウンター

避けたい

「食品くらい大丈夫」とお土産のお菓子やレトルトを入れる

こうすればOK

申告する。ニュージーランドでは申告漏れ自体が違反で、うっかりでもNZD$400の即時罰金の対象。申告すれば検査のうえ通ることもある

避けたい

部活で使っていた靴やスパイクをそのまま入れる

こうすればOK

使用済みの屋外用品は申告対象。MPIは機内向けの案内で「used outdoor equipment, including dirty boots and dirty shoes」(泥のついた靴を含む、使用済みの屋外用品)を挙げ、ページ本文でも「屋外や農作業に使った物」を申告対象としている。洗って土を落とし、申告する

避けたい

モバイルバッテリーをスーツケースに入れて預ける

こうすればOK

預入手荷物への収納は禁止(従来から)。160Wh以下・収納棚に入れず手元に保管も従来から。2026年4月24日からは加えて「2個まで」と「機内での充電禁止」

避けたい

荷造りを本人任せにして、中身を保護者が把握していない

こうすればOK

入れた物を一緒に確認し、リストを共有する。MPIは罰金を避ける方法として、自分の荷物と「the baggage of anyone under the age of 18 travelling with you」(同行する18歳未満の人の荷物)の中身を把握しておくことを挙げている

荷物の前に、費用の全体像を確認しておく

持ち物の判断は、渡航先と留学の形が決まってからが本番です。国・期間・学校タイプを入れて費用の概算を確認できるシミュレーターをご用意しています。

逆算スケジュール|持ち物の準備はいつ始めるか

POINT

起点は「薬」です。医師の受診から逆算すると、出発の1か月前には動き出す必要があります。衣類や日用品は直前で構いません。

持ち物の準備で唯一、外側から日程が決まっているのが薬の手続きです。申請の受付期限が出国日の2週間前で、その手前に医師の診断書の取得があります。ここを起点に置くと、全体が自然に並びます。

持ち物まわりの逆算スケジュール(**当サイトによる設計**。2週間前の受付期限を除き、特定の一次情報にもとづく日程ではありません)

時期やること動かせるか
出発の2〜3か月前常用薬の有無を確認し、成分名を控える。該当しそうなら主治医に相談を予約。渡航先の在日大使館・領事館に、薬の持ち込みの可否を照会動かせる(ただし受診の予約が取りにくい場合がある)
出発の1か月前医師の診断書・英文の証明書を取得。未成年の渡航同意書の要否を航空会社・大使館・受入団体に確認動かしにくい
出発の2週間前まで麻薬・医薬品である覚醒剤原料の携帯輸出許可を申請(期限)。書類のコピーとデータ化を済ませる動かしにくい(原典は「原則」。間に合わない場合は要電話相談)
出発の1〜2週間前荷物を「持つ・送る・現地で買う」に割り振る。送る分を発送。モバイルバッテリーの容量表示を確認動かせる
出発の数日前衣類・日用品を詰める。入れた物を保護者と本人で一緒に確認しリストを共有。食品・植物由来品の有無を最終点検動かせる
当日現金が基準を超えるなら預ける前に税関事務室へ。薬の書類は手荷物に。到着後は申告または回収箱で処分動かせない

見ていただくと分かるとおり、急がなければならないのは薬と書類だけです。逆にいえば、この2つを2〜3か月前に着手しておけば、荷造り自体は直前でまったく問題ありません。準備全体の締切(パスポート・ビザ・予防接種・在籍校の許可)は高校留学の準備にまとめています。

まとめ:リストは最後でいい。先に決めるのは判断が要る物

POINT

持ち物で失敗するのは、買い忘れではなく、判断の見落としです。薬・現金・食品・電池の4つを先に確定させれば、残りは現地調達で足ります。

高校留学の持ち物は、「何を入れるか」より「入れる前に何を判断するか」で決まります。医療用麻薬と医薬品である覚醒剤原料は、自分の治療のためであっても事前に地方厚生(支)局長の許可が必要で、申請は出国日の2週間前までです。向精神薬は許可こそ不要ですが、総量が一覧表の量を超えれば医師の書類が要ります。そして、これら「麻薬等」に該当する薬は、日本から郵便で送り出すことができません(該当しない薬まで一律に送れないわけではありません)。

現金は、現金・小切手・約束手形・有価証券の合計が100万円相当額を超えると申告が必要で、機内預けにするなら航空会社に預ける前に済ませなければなりません。食品や植物・動物由来の物は、渡航先の検疫にかかります。ニュージーランドでは申告漏れそのものが違反で、うっかりでもNZD$400の即時罰金の対象ですが、申告さえすれば検査を受けて通ることもあります。モバイルバッテリーは預入禁止で160Wh以下という制限が従来からあり、2026年4月24日からは「機内持込は2個(160Wh以下に限る)まで」と「機内での充電不可」が加わりました。

この4つを確定させたら、あとは代えがきかない物(書類・眼鏡・体に合う日用品)を3系統に分けて持たせ、残りは現地で買う。それで足ります。衣類を一着多く入れるかどうかで悩む時間を、薬と書類に振り向けてください。留学全体の流れは高校留学とは、費用は高校留学の費用で確認できます。

Q.常用している薬があります。まず何から確認すればよいですか。

薬の商品名ではなく、成分名から確認してください。医療用麻薬と医薬品である覚醒剤原料は、自己の疾病の治療のためであっても、携帯して出国するには事前に地方厚生(支)局長の許可が必要です(麻薬及び向精神薬取締法・覚醒剤取締法の例外規定)。向精神薬は事前の許可は不要ですが、総量が定められた一覧表の量を超える場合は医師の「書類」の携帯が必要で、注射剤は量にかかわらず必要です。関東信越厚生局は、一覧表には「お薬の成分の一般名が記されています。いわゆるお薬の名前とは異なる場合があります」としたうえで、該当するかどうかは「医師、歯科医師、薬剤師などに確認してください」と案内しています。当サイトでは個別の薬の該当性は判断しません。まず主治医か薬剤師にご相談ください。

Q.薬の許可の申請には、どのくらい時間と費用がかかりますか。

申請は出国日の2週間前までに提出することとされており、手数料はかかりません。厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部の手引きは、提出期限について「申請書の送付及び許可書の送付に要する期間を考慮し、出国日又は入国日の2週間前までに提出してください」としています。必要書類は麻薬取締部の「申請に必要な書類等」によると、出国のみなら①携帯輸出許可申請書1部②医師の診断書1通(日本語又は英語。患者の住所・氏名、必要とする理由、処方された品名・規格とその一日量の記載)、③携帯する麻薬・覚醒剤原料の品名が確認できる資料(お薬手帳や薬剤情報提供書のコピーなど)、④宛先を明記した返信用封筒1枚(送料は自己負担、簡易書留以上が推奨)の4点です。③を忘れやすいのでご注意ください。費用面では「許可書の発行に手数料はかかりません」と明記されています。ただし診断書の作成には医療機関の受診と文書料が必要ですので、実務上は出発の1か月前には動き出してください。時間的余裕がない場合は、必ず地方厚生(支)局麻薬取締部に電話で相談するよう案内されています。

Q.1年間の留学です。薬は1年分持って行けますか。足りなくなったら送ってもらえますか。

薬の区分によります。まず「麻薬等」に該当するかを確認してください。送付については、関東信越厚生局が「郵便によって輸入(輸出)したり、知人等に託して麻薬等を輸入(輸出)することはできません」と明記しています(本人と一緒に行動する付添人・介護人が代わりに携帯するのは差し支えないとされています)。次に携行量ですが、渡航先の側にも制限があります。たとえば米国のCBPは、米国市民以外の渡航者について「Travel with no more than you need for your personal use during your stay. A rule of thumb: Bring no more than a 90-day supply of medication.(滞在中の個人使用に必要な量を超えないこと。目安として90日分を超える量は持ち込まないこと)」としています。ただしCBPはその直後で「If you're staying longer than 90 days, you may have additional medication sent to you by mail or courier.」(90日を超えて滞在する場合は郵送・宅配便で追加の薬を送ってもらえる)とし、査証と旅券の写し・医師の書面・英語の処方箋の写しを示せるようにしておくべきだとしています。つまり米国側は郵送での補充を想定しています(ただしCBPは、規制物質に当たる場合はDEAの要件にも従う必要があるとしています)。詰まりやすいのは日本側で、麻薬等に該当すれば送れず、該当しなければ送れる可能性があります。いずれにせよ長期留学では、現地で処方を受け直せる状態を出発前に作っておくのが確実です。主治医に成分名で記載した英文の紹介状を用意してもらい、受入団体に現地の医療機関へのつなぎ方を確認してください。

Q.ホームステイ先へのお土産に、日本のお菓子やレトルト食品を持たせても大丈夫ですか。

「持ち込めるか」より先に「申告するか」で考えてください。少なくとも当サイトが原典を確認したニュージーランドでは、持ち込みの可否の前に申告の義務が置かれており、罰せられるのは申告しなかったことです。ニュージーランドを例にとると、MPIはリスク品として「Any food – cooked, uncooked, fresh, preserved, packaged or dried.(調理済み・未調理・生鮮・保存食・包装食品・乾物を問わずあらゆる食品)」を挙げており、包装された市販のお菓子も対象に含まれます。申告しなければ「an offence under section 154N(21) of the Biosecurity Act 1993」にあたり、うっかりでもNZD$400の即時罰金の対象です(MPIは「There is no excuse」と明記)。一方で「Declared risk goods may be inspected」ともあり、申告すれば検査のうえ通ることもあります。渡航先の制度は国ごとに異なるため、渡航先の政府機関の公式サイトで必ず確認してください。なお本記事では、原典を確認できなかった国の罰金額は記載していません。

Q.現金はいくらまで申告なしで持って行けますか。クレジットカードは対象ですか。

税関は「100万円(北朝鮮を仕向地とする輸出にあっては10万円)相当額を超える現金等」を携帯して出国・入国する場合に「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」の提出が必要としています。判定は現金だけでなく、現金(本邦通貨・外国通貨)/小切手(トラベラーズ・チェックを含む)/約束手形/有価証券(株券、国債等)の合計額で行います。別枠として、金の地金(純度90%以上)の重量が1kgを超える場合も申告対象です。クレジットカードはこの列挙には含まれていません。注意が必要なのは申告する場所で、出国時にスーツケースへ入れて預ける場合は「出発ロビー内等の税関事務室」で、しかも「航空会社に預ける前に」申告する必要があります。機内手荷物にする場合は「出国審査場前の税関出国カウンター」です。税関は「現物を確認させていただく場合がございます」として、預ける前の申告を求めています。

Q.モバイルバッテリーやドライヤーは持って行けますか。

モバイルバッテリーは預入手荷物に入れられません。必ず機内に持ち込んでください。国土交通省航空局の資料は「預入(受託)手荷物に入れることは禁止されています」「ワット時定格量が160Whを超えるものは持ち込み禁止」としています。さらに2026年4月24日から、「機内持込みのモバイルバッテリーは2個(160Wh以下に限る)まで」「機内においてモバイルバッテリーへの充電をしないこと」「機内においてモバイルバッテリーから他の電子機器への充電をしないこと」が加わりました。保管場所も「座席上の収納棚に収納せず、座席ポケットなどお手元に保管」とされています。容量はmAh表示から「ワット時定格量 (Wh)=定格容量 (mAh)×定格電圧 (V)÷1,000」で換算できます。ドライヤーなど発熱する機器は、渡航先の電圧に対応しているかを本体の表示で確認してください。電圧・プラグ形状は国により異なるため、本記事では一覧を掲載していません。渡航先の政府観光局や在日大使館の案内でご確認ください。

そもそもどの形の留学が合うかを整理する

持ち物の判断は、渡航先と留学の形(交換留学か私費か、期間はどれくらいか)が決まってからが本番です。ご家庭の状況から留学のタイプを整理する診断をご用意しています。