このページの要点
高校留学のホームステイは「運任せ」ではなく、受入家庭が事前に審査され、滞在中も定期的な確認が入る仕組みの上に成り立っています。
- 選ばれ方:米国の交換留学(J-1)では、同居家族全員との対面面接、地域からの推薦2名、18歳以上の同居者全員の犯罪歴照会が法令で義務づけられています(22 CFR 62.25)。
- 費用:交換留学のホストファミリーは基本的に無償のボランティアで、家庭へ直接払う滞在費はありません。私費留学・語学学校経由は有償で、月8〜15万円程度が各社の公表する目安です。
- 困ったとき:相談先はホストファミリーではなく、まず現地のコーディネーターです。スポンサー団体には毎月の状況確認が義務づけられており、その窓口を使うのが正規のルートです。
高校留学のホームステイは、旅行のホームステイ体験とは別物です。数か月から1年、生活のすべてをその家庭で送るため、保護者にとっては「どんな家庭か」が最大の関心事になります。ただし受入家庭は無審査で決まるわけではなく、少なくとも米国の交換留学制度では、面接・推薦・犯罪歴照会といった手順が法令で定められています。一方で、交換留学か私費留学かによって費用の構造も、家庭の位置づけも大きく変わります。この記事では、家庭が決まるまでの仕組み、費用の内訳、寮との選び分け、そして困ったときの相談ルートを、送り出す側の視点で整理します。
結論:まず押さえる3つの違い
POINT
「ホームステイか寮か」より先に、交換留学か私費留学かを確認してください。どちらを選んだかで、滞在先の決め方も費用も、家庭の位置づけもまったく変わります。
高校留学の滞在先は、大きくホームステイと寮(ボーディングスクール)に分かれます。ただし実際には「どちらを選ぶか」を自由に決められるとは限りません。プログラムの種類によって、滞在先はほぼ自動的に決まるからです。
プログラム別に見た滞在先と費用の位置づけ(2026年時点の一般的な形)
| プログラムの種類 | 主な滞在先 | 家庭への滞在費 | 滞在先の選択 |
|---|---|---|---|
| 交換留学(米国J-1など) | ホームステイ | 原則なし(ボランティア家庭) | 選べない。団体が配置する |
| 私費留学(公立・私立への正規留学) | ホームステイまたは寮 | 有償(週または月ぎめ) | 学校・エージェントの提供範囲で選択 |
| ボーディングスクール | 寮 | 寮費として学費に含むことが多い | 原則ホームステイなし |
| 短期・語学学校のプログラム | ホームステイ | 有償(週ぎめが一般的) | 条件(個室・食事回数等)を指定できる場合がある |
つまり、交換留学を選んだ時点で「ホームステイで、家庭は選べない」がほぼ確定します。逆に私費留学なら、ホームステイと寮を比べて決める余地があります。制度そのものの違いは高校留学の種類と全体像と高校の交換留学とはで詳しく整理しています。
参考までに、文部科学省「高等学校等における国際交流等の状況について」(令和5年度調査・2025年3月公表)によると、3か月以上の留学をした高校生は3,174人。行き先はカナダ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、イギリスの順です。3か月未満の研修旅行(31,711人)と比べると、長期でホームステイを経験する高校生はかなり限られた人数だとわかります。
ホストファミリーはどう選ばれているのか
POINT
保護者が最も不安に感じる「どんな家庭に当たるかわからない」という点は、制度を知ることでかなり具体的に確認できます。米国の交換留学では、受入家庭の審査手順が連邦規則で決まっています。
留学エージェントの説明では「厳正な審査を行っています」という表現で終わることが少なくありません。しかし米国の交換留学(J-1ビザ・secondary school student)については、スポンサー団体が守るべき手順が連邦規則22 CFR 62.25として公開されており、誰でも原文を読めます。主な内容は次のとおりです。
- 同居家族全員との対面インタビューを実施すること(62.25(j)(3))
- 親族以外の地域住民から2名の推薦を取ること(62.25(j)(5))
- 18歳以上の同居者全員の犯罪歴照会を行うこと。司法省の性犯罪者登録(National Sex Offender Public Registry)の検索を含む(62.25(j)(7))
- 生徒が出国する前に受入家庭を確定しておくこと(62.25(l)(1))
- 1家庭に配置できる交換留学生は2名まで(62.25(l)(1)(ii))
- 家庭の収入情報は「1日3食と学校行事への送迎という基本的な生活を提供できるか」の判断にのみ使うこと
さらに、配置後の見守りにも決まりがあります。スポンサー団体は生徒本人と毎月連絡を取り、最初の1回は対面でなければなりません(62.25(d)(11))。ホストファミリーに対しても毎月の連絡が必要で、各学期に1回は対面です(62.25(d)(13))。加えて、その家庭を集めてきた担当者とは別のスタッフが、配置から1〜2か月以内に家庭を訪問することになっています。地域のコーディネーターには、紛争解決や児童の安全、性的不品行が疑われる場合の通報手順などの研修が義務づけられています。
避けたい
「厳正な審査をしています」というエージェントの説明だけで納得してしまう
こうすればOK
「審査は具体的に何をしますか。犯罪歴の照会範囲、面接の方法、推薦人の有無を教えてください」と契約前に文書で聞く。米国J-1なら上記が法令上の最低ラインなので、それを下回る説明が出てきたら要確認
避けたい
配置後は現地任せで、連絡が来なければ順調だと考える
こうすればOK
「誰が」「どのくらいの頻度で」子どもと家庭に連絡するのかを出発前に確認し、その担当者の連絡先を保護者も持っておく
ここで挙げた基準は米国のJ-1交換留学に適用されるものです。カナダ・ニュージーランド・オーストラリアなどは国や州、受入校ごとに基準が異なり、同じ内容が保証されるわけではありません。渡航先が決まったら、その国・その団体の受入基準を必ず個別に確認してください。制度は改定されることがあるため、最新の条文や各国政府・教育省の情報にあたるのが確実です。
費用は「交換留学か私費か」で構造が変わる
POINT
交換留学のホストファミリーは基本的に無償のボランティアです。「安いホームステイ」を探すより、プログラム費用の総額で比べるほうが実態に合っています。
ホームステイ費用を単体で比較しようとすると、話がかみ合わなくなります。交換留学では家庭に直接支払う滞在費が発生せず、費用はプログラム参加費という形で一括して支払うためです。一方、私費留学や語学学校経由のホームステイは、週または月ぎめの滞在費が明確に発生します。
ホームステイに関わる費用の考え方(金額は各社が公表する目安・要確認)
| 区分 | 家庭への滞在費 | 1年間の目安 | 含まれることが多いもの |
|---|---|---|---|
| 交換留学 | 原則なし | プログラム費に包括 | 滞在・食事・現地サポート・保険等 |
| 私費留学のホームステイ | あり(週ぎめが一般的) | 月8〜15万円程度(年100〜180万円) | 個室・朝夕2食など(契約による) |
| 私費留学の寮 | 寮費として発生 | 学費に含むことが多い | 食事は別会計のこともある |
| 短期(半年程度) | あり | 50〜90万円程度 | 同上 |
上の金額は留学エージェント各社が公表している相場であり、公的な統計ではありません。都市部か地方か、個室か相部屋か、食事が何回付くかで大きく動きます。なお高校留学の費用はいくらかかるかでは、滞在費と生活費を合わせて月5〜15万円程度を目安としています。ホームステイ費用はこのうち滞在部分にあたり、ここに昼食代やおこづかいなどの生活費が加わると考えてください。学費・渡航費・保険まで含めた総額はそちらで内訳ごとに整理しています。
避けたい
ホームステイ費用の安さだけで滞在先や国を決める
こうすればOK
滞在費・食事回数・学校までの交通手段・週末の食事の扱いをセットで比べる。「食事2回付き」でも昼食が自己負担なら、その分の生活費が毎日かかる
避けたい
「ホストファミリーは謝礼をもらっているのだから、こちらは客だ」と考える
こうすればOK
交換留学の家庭は無償で受け入れているのが基本。有償の場合も、家庭は宿泊業ではなく生活を共にする相手だと前提を共有しておく
ホームステイと寮、どちらが合うか
POINT
英語に触れる量ではホームステイ、生活の自由度と予測しやすさでは寮に分があります。お子さんの性格と、ご家庭が許容できる不確実性で選ぶのが現実的です。
どちらが優れているという話ではありません。ホームステイは家庭という単位に入るぶん、日常の英語量と文化的な体験が圧倒的に多くなります。その代わり、家庭ごとの差が大きく、事前に読みきれません。寮は生活が制度化されているため予測しやすく、留学生同士の関係もできますが、現地の家庭生活には触れにくくなります。
ホームステイと寮の比較
| 観点 | ホームステイ | 寮(ボーディング) |
|---|---|---|
| 日常の英語量 | 多い。生活のすべてが英語 | 留学生同士だと日本語や母語が混ざることも |
| 生活の自由度 | 家庭のルールに合わせる | 規則はあるが自分のペースを作りやすい |
| 予測しやすさ | 家庭による差が大きい | 制度化されており差が小さい |
| 大人の目 | 家庭が日常的に見てくれる | 寮監・スタッフが担当 |
| 費用 | 私費なら月8〜15万円程度が目安 | 学費に含むことが多く総額は高め |
| 合いやすい子 | 人に頼るのが苦にならない子 | 自分の時間と手順を保ちたい子 |
安全面が気がかりな場合は、滞在形態だけでなく地域や学校の選び方も含めて考える必要があります。女子の高校留学と安全で、確認しておきたい観点をまとめています。
受入家庭で実際に求められること
POINT
ホームステイは「お客さん」ではなく「家族の一員」として扱われます。海外では高校生年代に自分のことは自分でするのが当たり前とされ、そこでつまずくケースが少なくありません。
日本の家庭で保護者が担っている家事を、現地では本人がこなすことを期待されます。洗濯を自分で回す、食器を片付ける、出かけるときは行き先と帰宅時間を伝える、といったことです。これは冷たくされているのではなく、その年齢に対する標準的な扱いです。事前にここを説明しておくと、「歓迎されていない気がする」という誤解をかなり防げます。
- 1生活時間の共有:夕食の時間、シャワーの時間帯、就寝時刻は家庭ごとに決まっている。合わせるのが前提
- 2行き先の連絡:友人宅や外出は事前に伝える。安全管理の一環であり、監視ではない
- 3食事の伝え方:苦手なものやアレルギーは出発前に書面で伝える。現地では「I'm not so good with〜」「I'm allergic to〜」のように、否定でなく事実として伝える
- 4通信環境:Wi-Fiの有無や利用時間のルールは家庭により異なる。契約前に確認しておく
- 5週末の過ごし方:家族の予定に同行することも多い。これがホームステイの中心的な体験になる
うまくいかないときの相談ルート
POINT
困ったときに最初に連絡するのは、ホストファミリー本人でも日本の保護者でもなく、現地のコーディネーターです。相談の順番を出発前に決めておくと、いざというときに動けます。
生活が合わない、食事が厳しい、家庭の対応に不安がある——こうした相談は珍しいことではありません。前述のとおり、米国J-1では団体側に毎月の連絡義務があり、問題が上がってきたら速やかに対処する責任も定められています。つまり、相談は「わがまま」ではなく制度の想定内です。
- 1事実を記録する:いつ、何があったかを日付つきでメモする。「合わない」という感想より、具体的な事実のほうが確実に伝わる
- 2現地のコーディネーターに連絡する:スポンサー団体・学校の留学生担当が窓口。米国J-1ならDS-2019にスポンサー名と電話番号が記載されている
- 3改善要望か家庭変更かを明確にする:まず改善を求めるのか、変更を希望するのかを伝える
- 4保護者は日本から団体の日本側窓口に並行して連絡する:現地と日本で話が食い違わないようにする
- 5健康や安全に関わる場合は迷わず上位に上げる:米国の交換留学では、国務省が専用の連絡先(1-866-283-9090/jvisas@state.gov)を公開しており、健康・安全の問題はいつでも連絡できるとされている
家庭との相性そのものに悩んでいる場合の具体的な進め方はホームステイが合わないと感じたときの対処に、「もう帰りたい」と言われた場合の受け止め方は高校留学で帰りたいと言われたらに分けてまとめています。
どの留学の形が合うか、3分で整理する
交換留学か私費留学か、ホームステイか寮か。お子さんの状況といくつかの質問から、検討の出発点を整理できます。
保護者が日本からできること
POINT
出発後に保護者ができる最大の仕事は、連絡の頻度をあらかじめ決めておくことと、判断を現地の窓口に委ねる線引きを共有しておくことです。
毎日連絡を取ると、かえって現地に馴染むのが遅れることがあります。かといって放置すると、深刻な問題の発見が遅れます。出発前に「週に1回この曜日」といった頻度を決めておき、それ以外は本人のペースに任せるのが現実的です。あわせて、「これは自分でコーディネーターに言うこと」「これは親に連絡すること」の線引きを話しておくと、本人も動きやすくなります。
避けたい
子どもから不満を聞くたびに、日本からホストファミリーへ直接連絡する
こうすればOK
現地のコーディネーターを通す。家庭に直接申し入れると関係が硬直し、その後の生活が本人にとって苦しくなりやすい
避けたい
「せっかく行ったのだから我慢しなさい」で終わらせる
こうすればOK
事実を聞き取り、記録して、窓口に上げる。我慢の一択にしないことが、結果的に留学を続けられる条件になる
なお、高校留学はゴールではなく進路の選択肢のひとつです。ホームステイでの生活経験は、その先の海外大学進学を考えるうえでも判断材料になります。文部科学省の同じ調査では、高校から海外の高等教育機関へ進学した生徒は1,635人と報告されています。
まとめ
高校留学のホームステイは、家庭の当たり外れという運の話に見えて、実際には制度で支えられた部分がかなりあります。米国の交換留学では受入家庭の面接・推薦・犯罪歴照会が法令で義務づけられ、配置後も毎月の確認が入ります。保護者としてやるべきことは、その仕組みを前提に、契約前に審査と連絡体制を具体的に確認しておくこと。そして出発後は、相談ルートを本人と共有し、困りごとを我慢させないことです。費用は交換留学か私費かで構造が変わるため、ホームステイ費だけを切り出さず総額で比べてください。
Q.ホストファミリーは選べますか?
交換留学では選べません。団体が家庭を審査したうえで配置します。私費留学や語学学校経由の場合は、個室希望・食事回数・ペットの有無といった条件を伝えられることがありますが、最終的な家庭の指定はできないのが一般的です。条件の希望がどこまで通るかは、契約前に書面で確認してください。
Q.どんな家庭に行くかは、いつわかりますか?
米国の交換留学(J-1)では、生徒が出国する前に受入家庭を確定させることが規則で定められています(22 CFR 62.25(l)(1))。ただし到着後に一時的な家庭から本配置に移るケースもあります。他の国は制度が異なるため、「いつまでに家庭が決まるか」「決まらない場合はどうなるか」を申込前に確認しておくと安心です。
Q.ホストファミリーは謝礼を受け取っているのですか?
交換留学では、ホストファミリーは基本的に無償のボランティアとして受け入れています。私費留学や語学学校経由のホームステイでは、滞在費として有償になるのが一般的です。どちらの形かによって家庭との関係の前提が変わるため、申込時にどちらなのかを確認しておいてください。
Q.1つの家庭に日本人が複数いることはありますか?
米国の交換留学では、1家庭に配置できる交換留学生は2名までと定められています(22 CFR 62.25(l)(1)(ii))。ただし同じ国籍の生徒と同居になる可能性は残ります。英語環境を重視するなら、同国籍の生徒との同居について希望を出せるかを事前に聞いてみてください。
Q.食物アレルギーがあっても受け入れてもらえますか?
受け入れ自体が不可能になることは多くありませんが、正確に伝わっていることが前提です。申込書に記載するだけでなく、英語で症状と禁忌食材を書いた書面を用意し、配置決定後にコーディネーター経由で家庭へ共有してもらってください。対応可能かどうかは家庭の事情にもよるため、配置前に確認を依頼するのが確実です。
Q.途中でホストファミリーを変更できますか?
変更は制度上あり得ることで、実際に行われています。ただし「合わない」という感想だけでは動きにくいため、いつ何があったかの記録を残し、現地のコーディネーターに事実として伝えるのが近道です。手続きや所要期間は団体によって異なります。具体的な進め方はホームステイが合わないと感じたときの対処にまとめています。
滞在先を含めた費用を試算する
国や期間、滞在形態を選ぶと、1年間にかかる概算費用を内訳つきで確認できます。






